デジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム(DXP)の機能を最適化せよ
レポート概要:
- 企業として顧客体験のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を正式に優先するのは勝利へのアプローチです。
- エクスペリエンス・リーダーにとってデジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム(DXP)は自社の成長戦略の一部です。
- 企業のDXPに関する最大の課題は、ビジネス・ユニットの異なる要求を統合することです。
レポート詳細:
新型コロナウイルス感染症により、ロックダウン、隔離、ソーシャル・ディスタンスを強いられたことで、企業は、自社が人材を再編する、収益の損失を軽減するための戦略を立てる、顧客ベースを維持し成長させるのに最適な方法を読み解くなど、いくつかの側面での転換が急務であることに気がついています。しかしこの前例のない激動の時代から上昇気流に乗って抜け出しているのは、顧客体験(CX)の価値を優先させ、テクノロジーを活用してCX機能を向上させた機転の利く経験豊富な経営者たちです。
IBM Institute for Business Value(IBV)が実施した2021年のCEOスタディによると、調査対象となった高業績企業を率いるCEOの60%が、「より優れた顧客体験を提供すること」を今後2~3年間の最優先事項の1つとして挙げています。このような最高責任者は顧客からのフィードバックに細心の注意を払い、体験とエンゲージメントを強化するビジネス上の意思決定と技術的な戦略の推進に貢献しています。データ主導の実用的な洞察により、企業は結果論ではなく先見性のあるCXの意思決定を行うことができ、顧客関係の大幅な向上を実現できる可能性を秘めています。
企業のDXPに関する最大の課題は、ビジネス・ユニットの異なる要求を統合することです。
企業がパンデミックの闇から抜け出すには、市場占有率と顧客からの信用の強化が不可欠です。この緊急事態を受け、主にデジタル・エンゲージメントを通じて顧客にポジティブな体験と効率性を提供するために、企業は注力する分野と投資を再考する必要性が高まっています。将来を見越した企業は、競争力のある対応を実施し、顧客の需要を高めるために必要となるコンテキスト化したパーソナライゼーション、生産性、規模、そしてスピードによって自社のデジタル・ソリューションを変革しています。
どのようなDXのアプローチが最大の効果をもたらすのかについて理解を深めるため、IBVは、複数の業界にわたり、米国を拠点として自社のデジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム、つまりDXPを担当する400人の経営層と基幹業務リーダーを対象に調査を実施しました。この調査の目的のために、回答者は全員Adobeの顧客体験機能を使用しました。
CXを優先することの効果
本データは、顧客体験のDXを事業の優先事項として掲げている企業と卓越した業績との間には強力な相互関係があることを示しています。本稿ではこのグループを「エクスペリエンス・リーダー」と呼びます。過去2年の会計年度で、デジタル体験に投資している企業の増収率(3.6%)はその他の企業(1.2%)の3倍だということが明らかになりました。エクスペリエンス・リーダーの多くは、イノベーションや顧客満足度においても同業者を上回っています。
企業が新たな試みを正式なビジネスの優先事項に掲げる際は、通常、所有者、予算、リソース、KPI、目標を割り当て、結果の説明責任を持つプログラム・リーダーも任命します。
エクスペリエンス・リーダーは、顧客体験の強化をさほど重視していない企業に対し、過去2年間の売上で3倍の差をつけています。
これは他との重要な違いです。エクスペリエンス・リーダーにとって、デジタルを活用した顧客体験の向上は、うわべだけの約束ではありません。彼らは資金、人財、時間を自社の変革のために投入する一方で、本データは因果関係ではなく、相関関係を示していますが、エクスペリエンス・リーダーのパフォーマンスは、調査対象の企業のうち、この取り組みを優先事項としていないその他の組織(以下「非リーダー企業」)を上回っています。非リーダー企業の70%が、顧客体験のDXは「自社のビジネスにとって重要」だが正式にビジネスの優先事項として掲げるほどではない、と述べています。さらには、非リーダー企業の30%は、顧客体験の強化のためのDXは「やや重要」な程度で、「可能なときに向上させる」ものだと述べています。
DXPといった重要なテクノロジーやツールに必要とされる投資を継続的に行う意欲の有無は、顧客中心主義改善に対する企業のコミットメントを見極める1つの方法です。もちろん、DXPは新しいものではありません。大抵の企業は、以前からAdobe社を含む1社以上のベンダーが提供する複数のDXPを導入しています。しかしながら多くの企業がDXPの可能性のすべてをまだ活用できておらず、このことが必要な顧客体験を強化する能力の妨げになっています。
DXP成熟度の5つのレベル:
エクスペリエンス・リーダーの多くがすでに成熟段階に達している
本レポートでは、どのアプローチがエクスペリエンス・リーダーを際立たせているかを特定することに加え、企業がDXPを拡張しようとする際に直面する課題と、価値の増大を推進することができる真の差異化機能や顧客体験を創出する手順をご紹介します。
著者について
Justin Ablett, iX Global Lead for Adobe, IBMEd Forman, iX Adobe Practice Leader for the Americas, IBM
Scott Wellwood, Global Alliance Director, Adobe
Anthony Marshall, Senior Research Director, Thought Leadership, IBM Institute for Business Value
発行日 2021年7月15日