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リスキリング・ジャパン - 日本が迫られるスキルの再興

日本におけるスキル問題を乗り越えるための3つのステップ

将来の人材を今から育成する

数十年にわたる賃金や経済成長の停滞、継続的なデフレの脅威を経て、日本の給与と物価は徐々に上昇に転じ始めているように見える。2018年の初めには、失業率は25年ぶりの低水準となり、人口が減少傾向にある中で、労働者のスキル開発に大きく投資する新たな機運も高まりつつある。同時に、コグニティブ・コンピューティングや人工知能(AI)を含む先進技術によって、労働者に求められるスキルそのものが見直されつつある。日本も他国同様、教育のカリキュラムやトレーニング・プログラムを更新するには、それなりに時間を要する。果たして、新しいテクノロジーは日本経済に活力を呼び戻せるのか、それとも脅威にさらすのか。本レポートでは、400名以上の日本の経営層から得られた洞察に基づき、日本におけるスキルの問題を略筆するとともに、新たな機会を考察し、将来にわたって経済成長を継続するための提言を行う。

日本は、他の主要先進国の命運をも左右しかねない、社会的・経済的要因の先行指標と見なされている。今や日本政府は、従来の成長・拡大路線とは真逆の、人口減少やそれに伴う経済成長のさらなる減速リスクに直面している。

経済面での課題は変化したが、日本国民の生活水準をできるだけ高いレベルで維持するという政策自体の最終目標は、以前と何ら変わらない。最近の世界銀行のデータでは、2050年の日本の人口は、現在の1億2,500万人から1億人にまで減少することが示唆されている。同時に、人口構成も変化する。今日、15~64歳までの生産年齢人口は、日本の総人口の60%を占めており、この数字は米国では65%、インドでは66%となっている。しかし、2050年になると、日本の生産年齢人口は総人口のわずか51%にまで減少し、米国の61%、インドの68%と比べて、その減少率が著しい。

これほど劇的な人口動態の変化は、もれなく経済にも多大な影響を及ぼす。例えば、2016年には84歳であった平均寿命は、2050年には88歳にまで延伸することが見込まれている。この平均寿命の伸長と納税人口の減少を組み合わせると、どのようなシナリオが考えられるのだろうか。ある推計によると、今日の日本では、生産年齢人口の労働者1人当たりの税収で国民1.7人を支えているが、これが2050年になると、労働者1人で国民2人を支えなければならなくなる。つまり、退職した高齢者の生活ニーズが、労働者の大きな負担となる可能性があるのだ。また、従来は保育や教育、職業訓練などのプログラムに配賦されてきた資金を、今後は高齢者向けの社会保障や医療に振り向けざるを得ないかもしれない。教育の質や機会へのマイナス影響、また子供を持つことの困難さの増大は、問題をさらに悪化させ、将来世代の負担をさらに重くする可能性さえある。


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著者について

Dave Zaharchuk

Connect with author:


, Research Director, IBM Institute for Business Value


Kazuaki Ikeda

Connect with author:


, Vice President, IBM Strategy and Analytics practice leader, Japan

発行日 2019年9月1日

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