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ITシステム構築に関わるプロジェクト・マネジャーにとって大切なこと

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プロジェクト・マネージャー(以下、PM)にとって最も大切なことは?そんな疑問に、私は「お客様の経営目標の達成に貢献すること」だという考えを持っています。それは、これまで金融系を中心にシステム開発のPMとして、ニ十年以上にわたって数多くのシステム開発プロジェクトを担当してきた経験から導き出した答えでもあります。今回はそんな経験から、クライアントと契約を締結し、ITシステムを構築するシステム・インテグレーター(以下、SIer)におけるPMの役割についてご紹介します。

プロジェクトには、社内で完結するプロジェクトもあれば、企業と契約を締結して決められた成果物を納入するプロジェクトもあります。成果物も建築物であったり、ITシステムであったりとさまざま。そんな中、SIerのPMとして達成するべきことは、「契約に則って期日通りに成果物を納入すること」だけではなく、冒頭で述べた「お客様の経営目標の達成に貢献する」ことです。

木村 博
グローバル・ビジネス・サービス 理事-プロジェクト・エグゼクティブ

1990年にIBMに入社。4年目より金融系を中心にシステム開発のプロジェクト・リーダーおよびプロジェクト・マネージャーを務め、以降ニ十年以上にわたり、数多くのシステム開発プロジェクトを担当。

 

多種多様なプロジェクトで変わらぬ拠り所

ITシステム構築のプロジェクトは、千差万別。先進的なテクノロジーを用いるプロジェクトもあれば、十数年間稼働している基幹系システムを更改していくプロジェクトもあります。

私自身、1990年代にVideo On Demandの実験プロジェクト、Internetでの電子決済プロジェクトなど、当時の先進テクノロジーを用いたプロジェクトを担当しました。どちらも現在においては当たり前となっていますが、当時は先進性があり、海外の製品を用いて海外企業と協業してプロジェクトを遂行しました。製品バグを修正してもらうため、米国のシリコンバレーに赴いたこともありました。

また、2000年代半ばから現在までは、大・中規模の基幹系システム構築のプロジェクトを担当しています。プロジェクトを進めていく過程では、さまざまな課題・問題が発生し、その都度、解決策を検討して重要な判断を下していくことが求められます。正解も一つとは限らないことが多く、判断に悩むこともありますが、その際に拠り所となるのが、「お客様の経営目標・プロジェクト目標達成のために何が最善か」という判断基準です。

 

目標を達成することで得られる財産

近年、ITシステムの利用範囲が多様化し、かつ企業が業界内の優位性を確保するために、ITシステム開発の期間短縮化が求められています。そのため、Agile等の開発手法や、Rationalに代表される開発ツール等が利用されていますが、どんなに優れたツールでも使いこなせなければ意味がありません。

さらに、使うための技術が備わっていても、プロジェクトを成功させるためには「成功させるという情熱&モチベーション」が必要不可欠です。よって、プロジェクト全体のヘルスチェックを継続して行い、プロジェクト・メンバーの情熱やモチベーションを維持・向上させることも、PMの重要な役割の一つとなってきます。

解決すべき課題・問題が時には苦労を伴うこともありますが、PMが首尾一貫した目標とゴールを示し続けることで、プロジェクト・チームの一体感も醸成できます。また、乗り越える壁が高ければ高いほど、会社の枠を超えて関係者間の一体感が強くなり、達成感も格別なものとなります。今までいくつものプロジェクトを担当してきましたが、苦楽を共にした方々とは、今でも会社を超えたお付き合いをさせていただいており、人生の大きな財産となっています。

また、小さな財産ではありますが、IBMでは表彰制度が世界レベルで定義されており、受賞内容によっては本社主催の海外リゾートでのパーティーに参加することもあります。以上、IBMでの25年間の経験をもとに寄稿させていただきましたが、本稿がITシステム構築に携わる方の財産構築の一助になれば幸いです。

photo:Getty Images