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「学習済みWatson」が拓くコグニティブ・ビジネスへの近道

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Watson Summit 2017でも「コグニティブとクラウド」の会社になると宣言した日本IBM。そのビジネスの鍵はIBM Watsonだ。Watsonは、専門的な知識を集めた知識データベースの「知識ベース」、WatsonのAPIで構成される「プラットフォーム」、Watsonを利用する企業やパートナーと作り出す「ソリューション」の三層で成り立っている。この中でも「知識」、つまり膨大なデータを「学習させる」ことはWatsonを活用するための大前提となる。今回は日本IBMがWatson Summitで発表した新しい「学習」の取り組みである「学習済みWatson」を紹介する。

 

日本IBMが発表した新しい試み「学習済みWatson」とは?

通常であればWatsonを使うためにまず、データをWatsonに与えて学習させることが必要だ。しかし、専門知識のデータを揃えて効果的にWatsonに学習をさせるには使い手にもスキルや知識が求められる。そこで、それぞれの業種に特化した専門知識をあらかじめ備えるWatsonがあれば、スムーズにWatsonを活用できる。この用途別Watsonが、「学習済みWatson」なのだ。

今後IBMは、幅広い業界・業種の利用者やパートナー企業と協力し、業界に特化した「学習済みWatson」のラインアップを80種類にまで拡充していく予定だ。例えば、金融や医療、コールセンターや製造、メディアサービスといった業種での活用を促進するという。

日本IBMはニュースリリースで次のように述べている。

例えば、照会応答業務の支援サービスでは、既存の問い合わせ記録やコールログ、応答時に照会される基本情報などをシステムに学習させ、正しい回答を導くための膨大な知識のデータベースである「知識ベース」を構築します。 日本IBMは今回、すでにIBM Watsonを活用した実績がある、もしくは専門性の高いデータを大量に保持する先進的なお客様やパートナー企業と協業し、幅広い業界・業種向けに利用可能な知識ベースの構築を推進します。 (日本IBMのニュースリリースより引用)

 

プロジェクト・マネジメントを支える「学習済みWatson」

「学習済みWatson」には大きく分けて「照会応答型知識ベース」と「知識活用型知識ベース」の二種類がある。前者はいわゆるチャットボットの基盤になる「学習済みWatson」だ。その1つに、プロジェクト・マネジメントに特化した「Cognitive PMO(Project Management Office)」がある。これは、IBMの主力であるサービス事業やコンサルティング事業におけるプロジェクト・マネジメントを、Watsonを使うことで円滑にし、プロジェクトの品質を高めるために開発されたチャットボット・システムだ。「Cognitive PMO」を活用することで、担当者はプロジェクト・マネジメントに必要となる知識や情報をチャットボットに自然言語で問いかけて、すぐに取得することができるため、プロジェクトをさらに効率良く、高い品質で進めることができるようになる。

具体例を挙げてみよう。プロジェクトメンバーから「プロジェクトの品質計画を作成する際にどのような内容を含めればよいか」と聞かれたとする。従来であれば担当者はインターネットや社内のデータを検索したり、有識者に聞くといった形でわからないことを解決してきた。「Cognitive PMO」があれば担当者が「品質計画に含める内容にはどんなものがありますか?」と自然言語で質問をすれば適切な参照先を瞬時に答えてくれる。「このプロジェクトの品質計画のテンプレートがほしい」といえばそのプロジェクトにおける参照情報を、「品質計画のサンプルがみたい」と依頼すれば、適切なサンプルの参照情報を提供してくれる。このように、必要な情報を効率的に集めることができるため、作業を効率よく進められる。それだけではなく、画面定義書テンプレートや議事録テンプレートなど、プロジェクトの開発標準や管理標準に沿った情報を提供できるため組織やプロジェクト内の標準化を推進することにもつながる。

さらに「レポートの自動生成」「議事録ドラフトの自動生成」「品質 / リスクの予測」など、新機能を順次提供する計画である。IBMの試算によると「Cognitive PMO」を導入するとプロジェクト管理コストを約30%効率化できるという。「Cognitive PMO」を含む、IBM Watsonを活用した次世代超高速開発ソリューションについて詳しくはこちらのウェブサイトで詳しく解説されているのでご覧いただきたい。

日本IBM社内で利用されている「Cognitive PMO」のイメージ画像

日本IBM社内で利用されている「Cognitive PMO」のイメージ画像

その他に、金融業界に特化した「QA Cartridge for FS」というチャットボット・システムがある。「QA Cartridge」とは「Cognitive PMO」 にも使われているWatsonを使った照会応答(Q&A)システムを構築する基盤で、ユーザーインターフェースなど周辺機能や学習をサポートする管理機能を備えている。

 

パートナー企業と作る「学習済みWatson」

Watson Summit 2017の会場で開局した日本IBMの動画配信メディア「THINK tv」。その番組の一つでは「学習済みWatson」に取り組むさまざまな会社が登壇し、各社が提供するサービスを説明した。登壇したのは、株式会社QUICK、日本電通株式会社、株式会社アイ・ラーニング、JBCC株式会社、そして株式会社フォーラムエンジニアリングの5社だ。 本記事で紹介した「学習済みWatson」以外の様々な取り組みについてはぜひ動画でご覧いただきたい。
photo:Getty Images