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Smarter Business

金融機関に求められる次世代情報系システムの姿とは

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山田 晶夫

山田 晶夫
日本アイ・ビー・エム株式会社
金融ビジネスソリューションズ
 
 

 

矢葺 洋平

矢葺 洋平
日本アイ・ビー・エム株式会社
金融ビジネスソリューションズ
 
 

 

和泉 弥栄子

和泉 弥栄子
日本アイ・ビー・エム株式会社
金融インダストリーコンサルティング
 
 

 

櫻田 剛也

櫻田 剛也
日本アイ・ビー・エム株式会社
カスタマー・トランスフォーメーション
 
 

 

小久保 昌範

小久保 昌範
日本アイ・ビー・エム株式会社
金融コンサルティング
 
 

 

佐々木 優

佐々木 優
日本アイ・ビー・エム株式会社
カスタマー・トランスフォーメーション
 
 

次世代情報系システムの必要性と導入の意義

現代ビジネスでは、迅速かつ正確な意思決定がますます重要になっています。本記事では、次世代情報系システムの必要性、そのビジョン、技術動向、そして具体的な提案について解説します。

1. なぜ次世代情報系が必要か
従来の情報系システムは、主に月次や週次といった断面的な業績把握に重点を置いていました。しかし、現在ではリアルタイムでのビジネス傾向の把握とタイムリーな意思決定が求められています。従来のシステムは膨大なデータを集積するものの、それらをビジネスに活かすという観点では課題を抱えています。データの取得や集計は可能でも、データ分析や意思決定に必要な形でのデータ活用が組織全体を通して行われているかというと、一部に留まるケースが多いのが現状です。

さらに、従来の情報系システムは業務システムと分断されていることが多く、この分断が迅速な意思決定の妨げとなっています。情報系システムで得られた洞察や分析結果が現場の業務改善に結びつくまでには距離があり、分析結果が必ずしも組織としての業務高度化に繋げられていないことが問題です。

昨今のAIの技術進展により蓄積したデータをもとにした示唆を導出することが容易になっており、そうした技術を活用することも求められています。

2. 次世代情報系システムのビジョン
次世代情報系システムは、経営層から担当者までの幅広いデータ利用ニーズに対応し、これまでの課題を解決することを目指しています。具体的には、以下のような多種多様なデータを統合的に利用可能にします。

  • 行内データ(顧客、交渉記録、取引、与信、リスク、計数管理)
  • 外部データ(Web行動、サード・パーティー情報)

これにより、単なるデータ集積に留まらず、データのリアルタイムな分析とその結果の迅速な活用を可能にします。

特に重要なのは、AIによる示唆を業務システムに直接組み込む(AIビルトイン)ことです。次世代情報系システムは、このAIビルトインのアプローチによって、情報系システムと業務システムの分断を解消し、迅速な意思決定と業務改善を実現します。

3. 技術動向と次世代情報系への適用可能性
次世代情報系システムの実現には、クラウド型データベースやAIガバナンスなどの新興テクノロジーが不可欠です。これらの技術は、データの一元管理とスケーラビリティーの両立を可能にし、AIの本格活用を視野に入れた統合的なデータ・ガバナンスを実現します。

次世代情報系システムでは、AIによる分析結果や示唆を直接業務システムに組み込むことが重要です。これにより、AIが提供する洞察を日々の業務フローにシームレスに統合し、業務効率を劇的に向上させることができます。

例えば、顧客の購買傾向をAIが分析し、その結果を元にした営業戦略/NBA(Next Best Action)をリアルタイムでCRM(Customer Relationship Management)システム上に提示することで、営業担当者はより効果的なアプローチを迅速に実行することが可能となります。このAIビルトインのアプローチにより、従来のシステムで見られた情報系システムと業務システムとの分断の問題を解決し、情報と業務の一体化を図ることができます。

4. データ分析基盤の変遷
データ分析基盤も進化しており、従来の構造化データを扱うデータウェアハウスから非構造化データも扱いより大容量データを格納するデータレイク、さらに両者の良いところ取りをしたデータレイクハウスへと進化しています。これにより、多様なデータの管理と分析が可能となり、より柔軟でスケーラブルなソリューションが提供されます。

データレイクハウスは、データの一元管理とオープン・データ・フォーマットの採用によって、コスト効率とパフォーマンスのバランスを取ったデータ管理を実現します。これにより、従来のデータウェアハウスの制約を超え、より高度なデータ分析が可能となります。

具体的な提案

クラウド型データベースの導入
データを一元管理しつつ、用途別に分散処理を行う新しいアーキテクチャーを採用。これにより、データのスケーラビリティーと柔軟性を確保し、リアルタイムなデータ分析を可能にします。

統合的なデータ/AIガバナンス
散在するAI環境を統合し、管理を容易にする仕組みを導入。これにより、AIによるデータ分析とその結果の迅速な活用を支援し、業務効率を向上させます。

データレイクハウスの活用
オープンなフォーマットを採用し、コスト効率とパフォーマンスのバランスをとったデータ管理を実現。これにより、多様なデータ・ソースからのデータ統合と分析が容易になります。

共通AI実行基盤の構築
AI活用に共通的に必要な機能を統合し、効率的なAI分析と活用を促進。これにより、AIによる示唆を業務システムに直接組み込むことが可能となり、業務フローの最適化が実現します。

次世代情報系システムは、データの「使いこなし」に焦点を当て、AIによる洞察を業務の中に組み込むことで、従来の情報システムが抱えていた課題を解決し、より高度で効率的なビジネス運営を支援します。このシステムの導入により、企業はより迅速かつ的確な意思決定を行い、市場での競争優位を確立することが可能となります。

このAIビルトインの次世代情報系システムの導入により、従来の情報系システムと業務システムの分断を解消し、情報をリアルタイムで業務に反映させることができます。これにより、経営層から担当者まで、誰もが必要な情報を簡易かつ迅速に利用できる環境が整い、ビジネスの競争力を大幅に向上させることが期待されます。