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[共創のエキスパートたち vol.3] 久保 結「徹底した顧客志向でユーザーの声を探求し、大企業とイノベーションを共創する」

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「デジタルを活用した新規事業の開拓といっても、まず何から始め、どのように進めたらよいのかわからない」「デザイン思考の考え方も取り入れながらビジネスを再構築したい」「当社もIoTとクラウドを使ってビジネスを大きく変えたい!」「先進ITで何か新しいことやりたいんだけど、ちょっと付き合ってくれない?」──こんな悩みや課題をお持ちのご担当者に向け、イノベーションを推進するためのヒントとなる情報を連載企画にてお届けします。

IBMでは、皆様の“デジタルの壁”を打破し、イノベーションを共創しています。ビジネス変革に向けたアイデア創出から、先進ITソリューションの最適な活用法を探るPoC(Proof of Concept、概念実証)、現場での実証実験までを素早く実施。その際に、すでに多くのお客様が活用されているのがIBM Garageサービスです。

特別企画「IBM Garage:共創のエキスパートたち」では、デジタルストラテジストやデザイナー、サイエンティスト、エンジニアとしてお客様をご支援している各領域のエキスパートにフォーカスし、担当してきた事例なども交えてご紹介していきます。ぜひ、イノベーション創出への第一歩として、お気軽にご指名いただければ幸いです。

 

第3回「デジタルストラテジスト 久保 結 ── 徹底した顧客志向でユーザーの声を探求し、大企業とイノベーションを共創する」

久保 結 Yui Kubo久保 結 Yui Kubo デジタルストラテジスト

▶IBM Garageなどでの主な担当案件
製造業 新規事業構想策定

 

仕事柄、日常生活でもユーザーとしての体験を常に意識しています。Garageで取り組んでいるテーマに限らず、自分がユーザーとして魅力を感じるサービスのビジネスモデルや体験価値の仕組みを考えることがとても面白いです。学生の頃から人々の生活を一変させてしまうようなテクノロジーに関心をもっていましたが、不確実性や複雑性が高まる時代の中で、イノベーションは既存の産業や業態の領域を超えてイノベーションは起きていると実感し、アイデアやビジネスモデルに関して多方面で情報収集をする機会が増えました。そしてイノベーションを生み出す現場にいる今は、日々ワクワクしています。

新たな事業創出へのチャレンジを組織作りの段階から支援

デジタルストラテジストとして私の役割は、お客様のデジタルを活用したユーザー視点によるサービスやビジネスの開発をご支援することです。リーンスタートアップ、Enterprise Design Thinking、アジャイル開発手法の3つを組み合わせて用いながら、ファシリテーターやPMO、そしてチームメンバーの1人として、ユーザーからの学びを元に、新たなサービスやビジネスの企画、ユーザー検証を進め、お客様と一緒に試行錯誤しています。

これまで、ある製造業のお客様のGarageを継続的にご支援してきました。このお客様は新規ビジネスや新たな顧客価値の創出に力を入れていくにあたり、戦略から実行までの活動の基盤としてIBM Garageを活用されています。2つのトライアルフェーズで、実際にプロトタイプやサービス開発を伴ったビジネス性を検証したあと、R&D部門と事業部門が従来の壁を超えて、コ・ロケーション、コラボレーション、コ・クリエーションする新組織の発足まで支援しました。大企業のお客様がスタートアップのように持続的にイノベーションを生み出していく組織になるために、組織体制から文化に至るまでの変革の実現を包括的にお手伝いしています。

現在は実際にいくつかのテーマについてGarageチームを立ち上げ、デジタルストラテジストとしてお客様とコロケーション・コラボレーションしながらご支援しています。

常にユーザー目線で考え、顧客価値を考え抜く

IBM Garageとは、何よりもユーザーを中心に据え、それを基にしながらビジネスモデルを構築あるいは再構築し、新たなサービスやビジネスを生み出す場です。従来型のITプロジェクトでは2、3年かけて新しいサービスを世に出しますが、IBM Garageでは3カ月で構想を練ってユーザーにヒアリングし、その結果を反映しながら日々改良を繰り返します。サービスやビジネスを考えて試し、改善するスピード、すなわちTime to Marketが圧倒的に早く、失敗を恐れずに挑戦して改良を繰り返す点が根本的に違います。

例えば、ワーキングマザーをターゲットにした新サービスの検討をテーマにしたGarageではファシリテーターを務め、アイデアから約3ヶ月で実証実験を伴う顧客価値検証・事業性検証までを実施しました。お客様の既存事業とも連携しながらも、その枠組みにとらわれることなく、顧客視点に立ってゼロからテーマを推進しました。実際の検証では、忙しく働くお母さんたちの抱えている悩みや課題・提供すべきサービスについてチームで仮説を立て、実際にユーザーインタビューを行いました。初期のスプリントでは、実態が仮説と大きくことなっているケースがほとんどであり、インタビューをはじめとするマーケットからの学びや洞察を頼りに仮説を更新していきます。このプロセスを着実に繰り返すことで、ユーザーの中に存在する不確実性の高い課題や価値を捉えていくのです。最終スプリントでは、ユーザーの生活シーンにプロトタイプ(Web版の簡易アプリケーションなど)を持ち込んで、実際の体験をもとに価値を洗練させていきます。

私たちが普段ご支援しているIBM Garageでは、このように早く小さく失敗することで成功に繋げることを前提としたスタートアップに近い考え方で、有力なビジョンと仮説を立案し、検証し、日々更新していきます。時には、チームが信じる仮説が大きく外れることもあります。しかし、失敗よりもそこからの学びを重要視し、ユーザーの価値を着実に捉えていきます。

デジタルストラテジストとして、ファシリテーターやプロジェクトマネジャー、チームメンバーなど、さまざまな役割を務める機会がありますが、私たちはどの役割を担うときでもユーザーの声に耳を傾け、そこから洞察や学びをチームで最大化することを大事にしています。自分たちが立てた仮説に対するユーザーの反応が良くなかった場合も、なぜその仮説がダメなのか、ユーザーはなぜそう感じるのかを探求し、顧客自身も認識していないような悩みや真意に迫ることで、イノベーションを創出することを心掛けています。

IBM Garageで経営層の意識も顧客志向に変化

初めてIBM Garageを経験したお客様からは、「会社の会議室で議論したほとんどのことは実情とはことなり、実際の顧客はもっと複雑で未知だった。Garageによって真実が見えたと思う。」といった感想をいただいています。また、Garage開始当初はサービスの事業性や収益性のことを気にかけていたマネジメント層の方々も持続的なイノベーションに向けて考え方や振る舞いを工夫し、「このサービスが解決したいユーザーの課題は何か?ユーザーは何に価値を感じているのか?」といった質問をチームメンバーに投げかけるなど、顧客志向に意識が変わっていきます。

このように、IBM Garageは「デジタルを活用した新しいサービスやビジネスを創りたい」という組織だけでなく、「そのための手法や考え方を身に付けたい」という組織にとっても大変有効です。デジタルトランスフォーメーションに取り組まれるお客様は、ぜひお気軽にご相談ください。

 


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