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ウィンブルドンでも活躍!「Watson Discovery」活用法

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「IBM Watson」に、また新たな機能が追加された。その名も「Discovery(ディスカバリー)」。機能自体は以前から存在していたが、2017年秋に一部日本語対応となり、現在、国内での関心が高まりつつある。

Discoveryとは、簡単に説明すれば大量の非構造化データを読み込んで解析し、その中から必要に応じて知見を引き出すためのサービスだ。以前は英語のみに対応していたが、2017年10月に日本語に対応し(※1)、日本語の文書を扱うことが可能になった。

主な機能は、大きく分けて以下の3つ。

 

1. 文書取込機能(クローラ)

クローラは指定された文書を読み込み、解析に備えて保存する機能。IBM Cloudの管理UIからドラッグ&ドロップ形式で手軽に取り込むことも、専用のAPIを使って取り込むことも可能。取り込める文書の形式は現在のところPDF、Word、HTML、JSONの4種類だ。

 

2. エンリッチ機能

エンリッチ機能では、それがどんな文書なのかを簡潔に表す「タグ」が付加できる。付加できる情報には、文書に登場する人名や場所、企業名、その文書にとって重要なキーワード、コンセプト、分類などがあり、付加された情報を文書検索に利用することで高度な検索処理が可能になる。

仕組みとしては、クローラで取り込んだ分書をDiscovery上に登録する際、内部でNatural Language Understandingという自然言語解析を行うAPIを呼び出して、文書の内容を解析し、概要などをメタ情報として元の文書に付加している。

 

3. クエリ―

クエリ―機能は、Discovery上に登録された文書に対して、さまざまなクエリ―(検索文)を発行する機能だ。クエリ―機能で検索を行うことでデータから知見を引き出す。

通常のキーワード検索や自然な話し言葉による検索のほか、前述のエンリッチ機能で付加されたメタ情報を利用して、検索結果のフィルターや集計を行うことできる。また、質問と回答候補の関連性を学習させ、特定の目的に特化したモデルに育てることも可能。

これらの機能により、たとえば大量のニュース記事を読み込んで傾向を分析したり、経営データをもとに企業分析を行ったり、顧客サポートチームに有益な知見を迅速に提供したりすることができるようになった。

Discovery の機能を図解

※1:Discoveryのサービスは英語、アラビア語、中国語、日本語など全11の言語に対応しているが、言語によってサポートされる機能が異なる。サポート範囲にはBasicとFullの二種類があり、日本語はBasicのグループに含まれる。詳細は下記のサポートページで確認いただきたい。

 

ウィンブルドン2017でも大活躍! Discoveryはどう使われた?

Discoveryは研究開発やビジネスシーンのみならず、さまざまシーンで活用されている。たとえば、2017年に開催されたテニスのウィンブルドン選手権でも、大会を盛り上げるための重要な役割を果たした。

IBMは28年前からウィンブルドン選手権のオフィシャル・テクノロジー・サプライヤーとして、同大会をサポートしてきた。具体的には、大会の公式Webサイトを制作したり、モバイル・アプリケーションを開発し、テニスファンに向けてさまざまなコンテンツをリアルタイムに提供する基盤を整えたりしている。一方で、2015年には「IBM InfoSphere Stream」とWatsonとを組み合わせ、サイト運営スタッフの作業を支援する仕組みを構築するなど、内外から同大会を支えている。

2017年の大会では、出場選手を「パッション(情熱)」「プレッシャー下におけるパフォーマンス」「サーブの有効性」「スタミナ」といったいくつかの指標で評価する試みが行われたが、これらの指標は22年間で蓄積された非構造化データを、Discoveryで念入りに解析して選び出されたものだった。分析結果はTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを通じてほぼリアルタイムに解説者やメディア、世界中のテニスファンに公開され、ウィンブルドン選手権の魅力を伝える役割を担った。

また、2017年に初登場したチャットボット「Ask Fred」にも、Discoveryの技術が活用されている。往年の名プレイヤー、フレッド・ペリーにちなんで名づけられたこのボットは、Watsonのコグニティブ技術の粋を集めて開発されたもので、ストロベリー・クリーム(※2)や記念品を売っている最寄りの売店を案内するなど、会場内の有能なアシスタントとして観客をサポートした。

※2:イチゴにクリームをかけたイギリスのスイーツ。ウィンブルドン名物の一つ。

 

さらに広がるDiscoveryの活用シーン

大量の非構造化データを効率よく読み込み、柔軟な検索によってさまざまな知見を引き出すことのできるDiscovery。IBM Cloud上からすぐに利用できる手軽さも手伝って、今後もますます活用シーンは広がっていくと予想される。Discoveryの魅力をまだ体験していない方は、ぜひ下記のページからデモを試してほしい。

photo:Getty Images