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「E2E経済」の舵取りは、デジタル改革から始まる

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デジタルテクノロジーの飛躍的な発展は、人々の生活に劇的な変化をもたらしました。モバイルやウェアラブルデバイスの普及、IoT技術の進化によりユビキタス社会が実現し、あらゆる人とモノがネットワークで繋がろうとしています。また、アナリティクス、コグニティブ・コンピューティング、機械学習、ロボティクスといった最新の技術により、ほんの数十年前にはSF映画の中でしか体験できなかったような世界が、目の前に次々に形となって現れているのです。

 

「Everyone-to-Everyone経済」の時代がやってくる

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そして、こうしたデジタルテクノロジーの革新が、個人と企業との関わり方をも大きく変化させようとしています。

24時間365日のネットアクセスが非常に身近なものとなり、いつでもどこでもネットワークに接続できる環境を得て、企業に対する個人の影響力はかつてないほど高まりました。また、現代の消費者はソーシャル・メディアの爆発的な拡大によって緊密に繋がりあい、ビジネスシーンにおける強大な「パワー」と発言力を手に入れつつあります。

かつて、経済活動を主導していたのはビジネスのドライバーである企業でしたが、今や経済活動の主体は企業から消費者へと移動し、世界は着実に個人中心の経済へとシフトしはじめているのです。

この変革はまだ始まったばかりですが、今後、個人と組織の繋がりはより緊密かつ高度なものへと発展し、個人中心の経済はあらゆる人と組織がつながり合う「Everyone-to-Everyone(E2E)経済」へと姿を変えていくと予測されています。

そして、こうした一連の変化は、遠からずあらゆるビジネスシーンに破壊的な変化をもたらすことになるでしょう。実際、既に様々な領域において新たな競争が生じ、これまでには予想もできなかったような脅威が生まれつつあります。そして同時に、新たな市場参加者には、業界構造を根底から覆すことを可能とするような絶好のチャンスが訪れているのです。

 

イノベーションの旗手たち

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デジタルテクノロジーを駆使して業界に破壊的なイノベーションを起こした代表的な企業の一つに、Airbnbがあります。

Airbnbは、デジタルによりサプライヤと消費者を直接つなぐプラットフォームを構築し、Webサービスを通じて個人や企業の所有する空き部屋を旅行者にシェアするという、まったく新しいビジネスを展開しています。デジタルテクノロジーの力を借りて「貸したい人」と「借りたい人」を繋ぐ「場(プラットフォーム)」を作り出したことで、それまでになかった新たな市場の創出に成功した好例といえるでしょう。

世界58カ国で自動車配車サービスを展開するUberも、Airbnbと同様にデジタルテクノロジーを活用したプラットフォーム型のビジネスモデルにより大きな成功を収めています。

今後、個人中心の経済からE2E経済へと変革する激動の時代を企業が生き抜いていくために求められるのは、こうした大胆かつ斬新なアイデアに基づく破壊的なイノベーションです。企業は市場、戦略、および価値観を徹底的に改革し、自社と消費者、および市場との繋がりを見直して、魅力的な顧客体験を定義しなくてはなりません。デジタル革新を前提として自社の戦略を再構築し、来るべきE2E時代に備えておく必要があるのです。

 

デジタル改革に向けた4つのステップ

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デジタルテクノロジーの進化は留まるところを知らず、これが業界に前例のない規模の破壊を引き起こしています。にもかかわらず、大半の企業がこうした状況が将来引き起こすであろう影響をまだ明確に理解していません。

2013年にIBMが行った調査によれば、日本企業の77%の経営層が3~5年後における顧客接点のデジタル化を熱望している一方で、51%の経営層が未だに「事業戦略と融合したデジタル戦略を策定していない」と答えています。

先にも述べたとおり、個人と企業はより繋がりを強めてゆき、「個人中心の経済」は「E2E経済」へと進化していくと予測されています。今後、企業が新たな時代に適応して生き抜いていくためには、意識的にデジタル改革を起こしていかなくてはなりません。

では、一般企業はどのような手段でデジタル化を進めていけば良いのでしょう?ここでは、安全かつスムーズにデジタル改革を進めて行くための、典型的な4つのステップをご紹介します。

 

ステップ1:デジタル改革の青写真を描く

はじめに、これから巻き起こそうとするデジタル改革の青写真を明確に描きます。新しいアイデアのブレインストーミングを行い、これまで思いもよらなかった顧客体験のシナリオを創り上げましょう。

デザインシンキングのような技法を取り入れたり、関係外のアドバイザーを巻き込むことで、既存の概念の枠を超えたアイデアが生まれることもあります。

 

ステップ2:パイロット・プロジェクトを実施する

デジタル改革の目指すところを明確にしたら、アジャイル開発の技法を用いてパイロットやプロトタイプを開発します。

製品やサービスを迅速に形にし、テストを行ってフィードバックを求めましょう。安全にベータテストを行うため小さなコミュニティで展開するのも良いアイデアです。

 

ステップ3:パイロットの精度を高める

パイロットを繰り返すことで、プロジェクトの限界、現実的な阻害要因などが徐々に明らかになってきます。そこで、目指すデジタル改革のオペレーションモデルやエコシステム戦略(ビジネス価値の創出と配分を目的としたネットワークを形成すること)に沿って、戦略的にパイロットの精度を高めていきましょう。

 

ステップ4:エコシステムを統合する

パイロットを十分に行ったら、その結果を踏まえてデジタル改革の全体像を改めて描き出します。これまでパラパラと個別に実施してきたパイロットを統合し、適切なパートナーと連携して、顧客の期待にこたえるために必要なエコシステムを構築するのです。

良い製品や良いサービス、そしてそれらを取り巻く様々な人や物が織りなすエコシステムが完成すれば、そこからこれまでにない感動的な体験が生み出され始めるでしょう。

 

デジタル改革が未来を切り開く

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20世紀までは、新しい技術の誕生からそれが社会に影響を与えるまで、長い年月がかかるのが普通でした。しかし、昨今のデジタルテクノロジーの変革はかつてとは比べ物にならないような速度で日々進みつつあります。

社会システムやビジネスシーンに破壊的な革新をもたらし、社会と経済に新たなパラダイムを示そうとしているデジタルテクノロジー。

この変化の激流の中で競合他社に対する競争優位性を獲得し、新たな経済のエコシステムに柔軟に適応していくために、一刻も早く徹底したデジタル改革を起こすための最初の一歩を踏み出しませんか?

photo:Getty Images