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Smarter Business

AIを人事業務に活用し、「ダイヤの原石」を見つける

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人事の世界にもAIの波が押し寄せてきています。IBMでも、昨年から人事領域で人工知能であるIBM Watson(以下、Watson)の活用についてご相談いただくお客様が増えています。今までの人事は、ある時点の情報に基づき人間の主観で判断が下されてきました。それが、今まで見えてこなかった情報もAIが人間の代わりに整理することで、より客観的な判断を行える可能性が高まってきています。

川見有彦
GBS事業本部 タレント&エンゲージメント アソシエイト・パートナー

日本IBMに入社後、エンジニア、SE、プロジェクト・マネージャーを経験。日本における初期のe-ラーニング導入に携わったことをきっかけに人事領域での活動を開始。技術的バックグラウンドを強みとし、大手製造業、自動車メーカー、大手製薬業、エネルギー企業等でITを活用したタレント・マネージメントの企画から実現までを多数リード。近年はIBM Watsonによる人材マッチングなど、顧客の課題と最新のテクノロジーを組み合わせた新たな取り組みにおいて実績をあげている。

 

國生恭子
GBS事業本部 タレント&エンゲージメント マネージング・コンサルタント

海外拠点への理念浸透やグローバル・プロジェクトにおけるチェンジ・マネージメントなど、グローバル・コミュニケーションの面から顧客の変革を支援。Jamを使ったVision浸透等、ソーシャルを活用したプロジェクトを多数リード。

 

人事において共通する根源的な課題とは?

企業の事業や状況によって、人事における優先順位や考え方は様々です。長く働いてくれる人材を見極めて採用するのが重要だという企業もあれば、人材と仕事のマッチングが最重要課題だという企業もあります。これらに共通する根源的な課題の一つとして、一人の社員について採用から退社まで実に多くの情報が蓄積されているにも関わらず、一度、ある目的のために収集・利用された後は、そのまま活用されてこなかったことが挙げられます。

例えば、リーダー育成のための360度評価や組織風土調査などは、その良い例でしょう。調査データ同士を結びつけて示唆を得ようにも、膨大なデータをつなぎあわせることは非現実的だと最初から諦められていたのです。

 

Watsonが解放するデータ分析の制約

特に難しかったのが、自然言語で記載されたデータの活用でした。例えば、上司から部下へのフィードバック・コメント、それぞれの社員の強み・弱み、パフォーマンス評価などは、給与のような数値ではなく、言語で記載されていることがほとんどです。これらの情報は、今までは人間が読み、理解して分析されてきました。自然言語を一つのシステムに落としてコンピューターが整理するということは、以前は非常に難しかったのです。

しかし、人工知能の発達により、これを解決できる可能性が出てきました。人工知能が自然言語の理解を代行し、まとめ、エッセンスを簡単に取り出してくれるとしたらどうでしょうか?Watsonはデジタル化された自然言語を人間よりも早く整理することができるので、今まで諦めていたデータ分析の制約から解放されることになります。

 

今まで注目されてこなかった「ダイヤの原石」を突き止める

では、Watsonを使って分析すると何か変わってくるのでしょうか?例えば、新しいビジネスを始める時に、今まで全く注目されなかった人材が、必要なスキルを保有し、ダイヤの原石であることを突き止めることができるかもしれません。また、その場その場での分析にとどまらず、時間をかけ蓄積した様々な情報を総合的に見ることで、より多面的な分析が可能になります。あなたのこれまでの経験、歴代の上司・部下からの評価等から、もっとも効果的な成長のためのプランをWatsonが描いてくれることもありえるのです。

人間に関するデータ分析の壁を取り払ったとき、貴社にとって最重要で、もっとも事業に貢献する課題は何でしょうか。AIの導入を一つのきっかけに、人事の課題を「再定義」してみてはいかがでしょう。

photo:Getty Images