人類の課題に立ち向かうスーパーコンピューター「Summit」

米国オークリッジ国立研究所のスーパーコンピューター「Summit(サミット)」は、200ペタフロップスの計算能力を達成。宇宙の起源をさぐるための超新星への理解、癌研究の進展、新材料の開発といった研究に貢献します。

新型コロナウイルスに立ち向かうスパコン「Summit」

2020年2月、米国エネルギー省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いに、強力な味方として新たにIBM製のスパコン「Summit」を投入することを発表しました。

AIが支えるHPCの変革

ムーアの法則が限界を迎えつつあるなか、ハイパフォーマンス・コンピューティングには新たな成長要因が必要です。その筆頭候補に挙げられるのが「AI」です。IBMは、膨大なデータを効率良く処理し、研究者がデータからの洞察を最大限に創り出せるようなHPC分野の研究開発を続けています。

 

数字で見る「Summit」

 
 

200

ペタフロップス

1ペタフロップスは、1秒間に1,000兆回の浮動小数点演算を実行する能力のことであり、「Summit」は1秒間に20京回の計算を実行

 
 

250

PB(ペタバイト)

IBMが提供するSoftware Defined Storageソリューションの1つであるIBM Spectrum Scale(旧称 : GPFS)によって、250PBのストレージ容量を実現

 
 

9,216

IBM POWER9 CPUの合計数量

「Summit」の計算ノードは、2基のPOWER9プロセッサーを搭載する4,608台のIBM Power System AC922で構築

 

25

GB/秒

ノード間のデータ転送速度は、1秒あたり25GB(ギガバイト)

 
 

27,648

NVIDIA Tesla GPUの合計数量

「Summit」の計算ノードは4,608台のIBM Power System AC922で構築されており、それぞれのIBM Power System AC922は、6基のNVIDIA Tesla V100 GPUを搭載

 

ハイパフォーマンス・コンピューティング

ハイパフォーマンス・コンピューティングはAIを進化させます。そして、ビジネス、医学、科学、エンジニアリングにおける複雑な課題を解決に導く、強力なコンピューティング能力を提供します。

ビジネスでの活用が進むハイパフォーマンス・コンピューティング(英語)

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岩田 可奈子(いわた かなこ)
デジタル・セールス事業
Power Systems製品担当営業

データと AI のために設計された、新型スーパーコンピューター

2014 年 3 月、IBM は米国のエネルギー省 (DOE) から 2 台のスーパーコンピューターの構築に関する契約を獲得しました。

目標は、2012年にTOP500で首位を獲得したスーパーコンピューターであるTitan よりも 5 ~ 10 倍速いマシンを開発することでした。DOEと IBMは、4年以上をかけて数多くのテクノロジーの障壁を打ち破り、200 PFLOPS (ペタフロップス) 、つまり毎秒 20 京回の浮動小数点演算を実行する能力と、AI やディープ・ラーニングのための能力を併せ持つシステムであるSummit を、米国オークリッジ国立研究所で構築してきました。200PFLOPS という性能は、Summit が最速のノートパソコンの100 万倍以上のパワーを持つことを意味します。無数の変数を選別し、モデル作成やシミュレーション行うことで、研究者が取り組む世界で最も複雑な課題の解答の発見に寄与します。

Summit (そして姉妹マシンである米国ローレンス・リヴァモア国立研究所の Sierra) は、IBM がシステムの構築方法を大きく転換した象徴でもあります。IBM は NVIDIAとともに、POWER9 CPU とTesla V100 GPU を高速かつ広帯域で結合する新たなアーキテクチャーを開発しました。

Summit が採用している新しいアーキテクチャーは、システム内のデータが存在するあらゆる場所に処理能力を組み込み、データの移動を最小化することで驚異的なスピードを実現して、AI に特化したシステムを生み出しています。「SummitとSierraのようなスーパーコンピューターを構築することは、IBM が世界をリードする AI マシンを構築しているということなのです。」と IBM フェローであるHillery Hunterは述べています。

もう 1 つの本質的な変化があります。それは、Summit が、一般的な企業が利用できる商用サーバーであるIBM Power System AC922で構築されている、ということです。IBM Power System AC922は IBM のサーバー製品ラインの一つであり、あらゆるビジネスの促進に貢献するパワーを発揮します。

世界最大の課題に取り組むために構築

Summitはコンピューティング能力と人知の限界領域をを広げるでしょう。

— Ginni Rometty, Chairman、IBM 会長/社長/CEO

200 PFLOPSの計算能力 はどのように活用されるでしょうか? 以下に3つの活用例を挙げます。

がんとの闘い

Summit の誕生は、がんと闘う研究者にとって力強い味方となります。例えば、臨床試験の患者を対象とする詳細さのレベルの機械学習のアルゴリズムが、Summitによって高度化されることで医療研究者への米国のがん患者全体に関する包括的な視点の提供に役立つでしょう。

次世代の素材を特定

Summit でディープ・ラーニングを行うことによって、より優れた電池、より弾力性のある建築資材、より効率的な半導体など、科学者が素材を見極める際に役立ちます。素材の特性を予測するアルゴリズムをトレーニングさせることで、研究者は素材の性質に関する長年の疑問を原子レベルで解決できるかもしれません。

疾患に関する理解を促進

複数の AI 技術を組み合わせて使用することで、研究者はヒトタンパク質や細胞系の機能、連携や進化についてパターンを特定することができるようになるでしょう。これらのパターンが、どのようにして臨床表現型 (例えば、アルツハイマー病、心臓疾患や中毒などで観察可能な特徴) を引き起こすのかについて理解を深めることで、創薬に必要な情報が獲得できます。

Supercomputing at IBM: A brief history

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