女性が拓くAIの未来

「ジェンダー平等×生成AI」のシナジーをもたらす鍵とは?

2024年の国際女性デーに改めて問う。生成AIの進化が、いかに女性活躍を促進し得るのか。

今日、未来の女性経営層を担うパイプラインが縮小してます。さらに、生成AIの時代が幕を開け、ジェンダー・ギャップの解消が新たな緊急性を帯びています。


実は、こうした状況はジェンダー平等を進める上で千載一遇のチャンスとなる可能性があります。
女性は、必須となりつつある生成AIに関するスキルセットを身に付け変革の担い手になることで、着実にリーダーの座へと上りつつ、将来のリーダー像を変革することさえ可能となるからです。逆に、遅れをとれば、このまま女性の経営層のパイプライン縮小が止まらなくなる懸念があります。

より詳細な動向を探るため、当社は2023年後半に、米国で活躍している約200人の経営層、経営幹部、および中間管理職(男女同数)を対象として調査を実施しました。 

その結果、一般的に、女性のほうが生成AIの導入に対して懸念を持つ傾向にあることが浮き彫りとなりました。一方で、この新しいテクノロジーは、マーケティングとカスタマー・サービスという、主に女性が主導してきた領域に先んじて導入されつつあります。

 

女性はAIに取って代わられることを男性よりも懸念している

 

女性は生成AIを積極的に活用することを通じてこの複雑な状況を乗り越え、自らの地位向上のチャンスを手に入れることができます。また、生成AIの未来を拓くためにも、早期の女性の参画が欠かせないことも判明しています。 

こうしたジェンダー平等と生成AIのシナジーを生み出すための鍵とは何でしょうか?本レポートでは調査データに基づく具体的なアクションを軸に、10名の女性エグゼクティブによる示唆にあふれる実体験に基づく知見をご紹介します。

 

視点

今日でも指導的役割を担う女性の数は十分とは言えないが、私のキャリアが始まった頃よりも状況は随分進歩している。当時は女性のロール・モデルが少なかったため、自ら道を切り拓かなければならないことが多かった。

もし過去に戻れるとしたら、おじけづいてしまうような状況でももっと自信を持つべきだと、まだ若かった自分を励ましたいと思う。当時も男性のメンターやスポンサーは助けてくれたが、それは私が自ら進んで助けを求めた場合のみに限られた。今そんな必要はなくなった。例えば現在、私の最も協力的なメンターの1人である男性は、自分の方から救いの手を差し伸べてくれる。

このような行動を取るには、自分は何らかの価値を提供できているという確信や自信が必要だ。しかし、女性は軽視され、蔑視されがちであることから、往々にして自分を過小評価してしまう。例えば、私が全社的な変革プロジェクトを率いるよう打診されたとき、最初に思い浮かんだのは「私にできるだろうか?」という考えだった。

自分のキャリアにとって大きなプラスになることは分かってはいた。だが、もし失敗したらどうしよう、という思いが、まず頭に浮かんだのだ。そこで、その役職を引き受けるかどうか迷った末、私は先ほどのメンターにアドバイスを求めた。「そんなふうに考えてはいけない。できないと思うな。成功するために何が必要かだけを考えて、ひたすら求めなさい」。彼はそう助言してくれた。私はそのアドバイスを心に刻み、具体的な要求条件を携えて交渉のテーブルに着いた。そうした要求の結果、自社に大きな勝利をもたらすツールを手に入れることができた。 

生成AIがビジネスの世界を一新させつつある現在、同じような立場に立たされている女性は少なくない。この革新的なテクノロジーは、人事、マーケティング、カスタマー・サービスなどの部門における生産性革命に拍車をかけている。これらの部門は、今まで女性リーダーが活躍してきたため、女性にとって「ホーム」としてのアドバンテージがある。つまり、女性が自らこのテクノロジーの使い方を決定することができるのだ。女性として、私たちは回復力と生来の力に注力すべきだろう。私たちの目の前にある機会を最大限活用することに、より大胆にならなければならない。

私たちが必要としているものを求め、何を提供できるかを信頼していれば、女性は組織やキャリアに対して画期的な結果をもたらすことができる。もし私たちが倒れたり、失敗したりしたとしても、立ち上がって、前に進み続け、その過程で他の女性たちを引き上げなければならない。がビジネスの世界を一新させつつある現在、同じような立場に立たされている女性は少な くない。この革新的なテクノロジーは、人事、マーケティング、カスタマー・サービスなどの部 門における生産性革命に拍車をかけている。これらの部門は、今まで女性リーダーが活躍してき たため、女性にとって「ホーム」としてのアドバンテージがある。つまり、女性が自らこのテク ノロジーの使い方を決定することができるのだ。女性として、私たちは回復力と生来の力に注力 すべきだろう。私たちの目の前にある機会を最大限活用することに、より大胆にならなければな らない。 私たちが必要としているものを求め、何を提供できるかを信頼していれば、女性は組織やキャリ アに対して画期的な結果をもたらすことができる。もし私たちが倒れたり、失敗したりしたとし ても、立ち上がって、前に進み続け、その過程で他の女性たちを引き上げなければならない。

AIの導入速度は企業によって異なるが、今回の調査データによると、おそらくカスタマー・サービスやマーケティングの分野ではすでに本番で使用されている。そしてこれらの部門では、女性のリーダーが比較的多い。

また女性は、領域によってはAIツールの試験導入にも積極的である。コンテンツの生成、編集、要約にAIを使ったことがある女性は男性よりも多く、40%近くがグラフィック・デザインや画像および動画の生成にAIを利用した経験がある。さらに女性回答者の40%が、生成AIの活用によって生産性が10%以上向上したと回答している。

この女性たちの中にはITの専門家もいるかもしれないが、必ずしも専門家である必要はない。自身のチームの独自のニーズや能力をAIでどのように強化できるかを理解して予測できることの方が重要なのである。そうして、IT部門の適切な人材と協働すればよいのだ。実際、当社の今までの調査から、AIを成功に導く上で最も重要な資質は、人間ならではの創造性であるということが分かっている。

例えば、私はOxfordEconomics社で、グローバルなワーキング・グループの一員として、エコノミスト、アナリスト、研究者の生産性を高めるためにどの生成AIツールを使えばよいかを特定する作業を支援している。ツールの用途は、文献レビューやデスク・リサーチの自動化から、大規模なデータ・セットの迅速な照会、定性的なインサイト(洞察)によって導き出されるトレンドの特定に至るまで、多岐に及ぶ。また、当社の経済ブリーフィングや経済予測からクライアントがさらに深いインサイトを得るために生成AIがどう役立つかの検証も行っている。

AIの方程式には2つの側面がある。すなわち、ビジネスの業績を伸ばす攻撃的なプレーと、リスクを減らす守備的なプレーだ。そして、生成AIが定着するにつれて、競争の場に男女間の差が現れつつある。男性は攻撃的なプレー、すなわち成長の促進や効率化を実現する手法に引きつけられる一方で、女性はガバナンスや法務といった守備的な役割に就く傾向が出てきた。

なぜそうなるのだろうか。その理由の1つとして考えられるのは、女性は生来的に社会的なウェルネス(より質の高い心身の健康)に気を配り、テクノロジーが及ぼす害について心配する傾向があるからだ。だからこそ、女性こそが責任あるAIの開発に適しているとも言える。私たちは「積極的な守備プレー」を実践すべきであり、その実践が倫理的で偏見がないことを確認するために、必要なガバナンスのガードレールを主導的に作るべきである。

適切なガイドラインがあれば、女性も安心して攻勢に転じることができる。私自身、日々それを実践しているところだ。私は、業績に測定可能な好影響を与えるソリューションの構築を行っており、この仕事が気に入っている。しかし、そこに到達するためには、まず仕事の進め方を根本から見直す必要がある。しかし誰もがそれを素直に受け入れるとは限らない。したがって、AIソリューションが動き始めてから、実際の業務に適応させることが多い。

AIを推進するリーダーは「変革者」である。彼らがもたらすソリューションや実践は、人々の生活や仕事を必然的に変えてしまう。多くの人は、彼らを脅威と見なし、自分の仕事を奪おうとする存在だと認識している。このような状況を乗り切るためには、強力なリーダーシップ、慎重な変革の遂行、チェンジマネジメント、関係構築、継続的対話が必要である。前もって準備した積極的な防衛策がここで役に立ち、最終段階まで効果を発揮するだろう。

このような状況において事態を好転させるためには、明確な期待値を設定し、AIを活用して関係者がいかに経験を向上させ、また現在のリソースや能力でより多くのことを実現し得るかを、透明性をもって証明することが重要である。それぞれの人の立場に立ち、彼らの日常や苦悩を理解することで、日常業務にポジティブな影響を与える仕組みを構築することも大切である。

しかし人々を魅了し、AIを受け入れてもらうまでには、時間がかかることも忘れてはいけない。変革を推進するのであれば、まずは信頼を獲得し、無理のない速度での進化をサポートしなければならない。適切な取り組みを行えば、狙いは最終的に理解を得ることができるだろう。そして、5年後にそのプロセスを振り返ったとき、人々は感謝の念を抱く可能性さえある。

 

本レポートでは
 

  • 上記の他、女性エグゼクティブの実体験に基づくさまざまな知見:「クリエイティブな創意工夫を育む」、「マインドセットがすべて」、「公平な活躍の場の実現」、「成長曲線を描く」、「リスクとメリットのバランスを取る」、「AIの『我が事化』」
     
  • 男女それぞれのリーダーに期待されるスキルの違いが、生成AIの促進にどのような影響をもたらすのか 
     
  • 男性のアライシップがなぜこれほどまでに重要か 

といった、生成AIとジェンダー平等を巡る実態、および解決策のヒントを解説します。  

 

ぜひレポートをダウンロードして詳細をご確認ください。

 


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著者について

Joanne Wright

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, Senior Vice President, Transformation and Operations, IBM


Yvonne Li (Contributor)

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, Vice President of Enterprise Artificial Intelligence, Data, and Decision Science Advance Auto Parts


Debra D’Agostino (Contributor)

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, Managing Director of Thought Leadership, Oxford Economics


Salima Lin

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, Vice President and Senior Partner, Strategy, Transformation, and Thought Leadership, IBM


川上結子(日本語翻訳監修), 日本アイ・ビー・エム株式会社,執行役員/マネージング・パートナー,IBM コンサルティング事業本部,ビジネス・トランスフォーメーション・サービス事業部長,最高情報セキュリティー責任者

発行日 2024年3月4日

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