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2030年のトラック業界: デジタル改革の長い道のり

未来を見すえ、デジタル革命に取り組むトラック業界のリーダーたち

ボブ・ディランは、歌の中で「時代は変わりつつあるのさ」という強いメッセージを残している。今のトラック業界には、まさにこのメッセージが当てはまるだろう。

トラックメーカーの印象は、大きく変化している。以前は、荷物の積み込みと配達という、肉体労働の印象だったが、今ではさまざまな技術が登場し、トラック輸送の仕事は大きく様変わりしている。キャパシティー提供サービス、クラウドソーシングによる配達、自動運転を活用した隊列走行、最適化された予知保全に加えて、ドライバーやトラック、道路に合わせて最適化された経路指定や、スマート・カーゴと呼ばれる運転システムの自動化、また自動運転支援など、多様なロジスティック・プロセスが導入されている。さらに、車両の電動化によって、パワートレインや排気ガスについての改善も進められている。

クラウド、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、アドバンスド・アナリティクス、および機械学習などのデジタル技術によって、トラックの新たな機能やモビリティー・サービスがすでに利用可能になっており、まだ実用化されていないものについても、2030年までに容易に利用できるようになると予想されている。

トラックメーカーの経営層の64%が、自社の今後の成功はデジタル・リインベンション(デジタル改革)にかかっていると考えている。

今後10年間は、技術の進歩と顧客の期待が、トラック業界に最も大きな影響を与えるだろう。世界中から、適切なタイミングで、適切なスキルを調達する能力も重要になってくる。

サステナビリティー、すなわち持続可能な社会に向けて、環境に優しいパワートレインの必要性が高まっている。また、オンライン・ショッピングが増加する中、環境に優しい物資輸送への関心が高まり、トラック業界にも影響を与えている。さらに、新しい市場参入者が持ち込んだ、新たな物資輸送のコンセプトも、現在および将来の収益に影響を与える可能性が高い。

これからのトラックメーカー

未来がどれだけ早く実現するかにかかわらず、確かなことが1つある。それは、データを駆使するデジタル技術が、顧客とのシームレスな接点をまったく新しい方法で生み出し、フリート管理者やドライバーに新しいモビリティー・サービスを提供し、トラックメーカーがこれまで想像もできなかった機会を生み出しているということである。

これからのトラックメーカーは、今までとはまったく違うものになる。そこで、経営層は重要な問いに答えなければならない。デジタルとデータがビジネスの中心であるハイテク企業のように、自社のビジネスを再構築するにはどうすればよいのか。物流において、荷物の運搬という従来の役割を越えて、どのような役割を果たせるのか。ビジョンを実現するために、どうやって従業員を惹きつけ、離職を防ぎ、継続的な教育を行えばよいのか。

継続的な社員教育に費やす費用は、2030年までで1,180億米ドルに及ぶだろう。

IBM Institute for Business Value(IBV)では、これらの問いに答えるために、トラックメーカーおよび部分品・付属品(車体、トレーラー、エンジン、ユーティリティーなど)メーカーの経営層を対象に、Truck 2030 Executive Survey を実施した。この調査には、1,188社の1,320名の経営層が参加した。

デジタル・リインベンションを重視するビジョナリー(先見性のある企業)

この経営層の中で、ある特徴を持つ経営層のグループを特定した。これを「ビジョナリー」(先見性のある企業)と呼ぶ。自社のビジネスとデジタル戦略を十分に理解している経営層のグループである。ビジョナリー企業は、収益成長率および収益性において、2017 ~ 2019年の3年間で同業他社よりも良い業績を上げている。また、残りの調査対象者(以降「その他」と呼ぶ)と比較して、組織のデジタル・リインベンションの必要性をより高いレベルで認識している。

2030年までにトラック業界の年間収益のうち4,650億米ドル(51兆1,500億円)が販売からサービスへシフトする。

全調査回答者の64% が、「現在および将来にわたって成功するにはデジタル・リインベンションが必要である」と答えている。「ビジョナリー」は「その他」企業と同様に、まだデジタル・リインベンションへの道をたどり始めたばかりである。そのため、どちらのグループも、現在の達成度は36%程度であると回答している。しかし「ビジョナリー」企業は、緊急性と準備態勢において際立っていた。「高い緊急性を感じている」と回答した「ビジョナリー」は、「その他」を53%上回っており、「自社のデジタル・リインベンション対して準備ができている」と回答した「ビジョナリー」は、「その他」を112%上回っていた。

「ビジョナリー」にとっては、今こそがチャンスなのだ。「その他」の企業は早く追いつかなくてはならない。イノベーションを取り入れたトラック業界が、次の10年でどのように変わっていくのかについては、レポート全文を参照ください。


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著者について

Ben Stanley

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, Automotive Research Leader, IBM Institute for Business Value


Daniel Knoedler

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, Director of Global Sales, Automotive, Aerospace, and Defense Industries, IBM

発行日 2021年8月1日

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