レポートの概要:
- サステナビリティーの実現に向けて、国際的にも、各国においても依然として極めて困難な状況があります。
- 企業に対して利害関係者からプレッシャーが強まる中、取り組みの遅れも指摘されています。
- 今一度、現在の危機的状況と、それに対してテクノロジーがどれほど強力な鍵となるかを踏まえた上で、サステナビリティー戦略の再構築が必要です。そのために組織が今すぐ実行できる5つのステップをご紹介します。
- 日本企業におけるより具体的な施策の提言を含むレポート "Be a good corporate citizen”も併せてご覧ください。また5つのステップの先にめざすべき企業の未来像については「バーチャル・エンタープライズ」をご覧ください。
数十年の間、多くのリーダーたちが、地球を住みやすい気温に保つために何が必要かについて議論してきました。科学者たちは、産業革命以前の水準よりも2℃高い気温を目標に掲げています。こうした終わりのない議論の一方、行動は遅々として進まず、気温は上昇の一途をたどっています。2022年10月、国連は、パリ協定参加国の現在のコミットメントを考慮した場合、地球の気温は今世紀末までに2.5度上昇する見込みであると予測しました。
この流れを逆転させるために、組織は大局的な視点から考えていく必要があります。多くの組織が2050年までの排出量ゼロ達成をコミットしていますが、ほとんどの計画は具体性に欠けています。また、単一の組織よりも大きな影響力をもち、有効で効果的な取り組みを遂行できる組織の連合体も極めて少ないのが現状です。
環境保護の課題への取り組みの緊急性が増す中で、利害関係者は、果たしてリーダーにサステナビリティーの目標があるのか、ないのか、固唾をのんで注視しています。
そして、たとえネットゼロの目標が達成できたとしても、その影響は小さすぎて、手遅れになる可能性があります。環境保護への取り組みの緊急性が増す中で、利害関係者は、果たしてリーダーにサステナビリティーの目標があるのか、ないのか、固唾をのんで注視しています。
例えば、IBM Institute for Business Value (IBV) が最近行った消費者調査では、消費者は環境への影響を減らすために習慣を変えつつあることが判明しました。調査対象のほぼ3人に2人(64%)は、直近で購入した商品のうち半分以上が、環境的に持続可能または社会的責任のあるブランド製品で占められていると回答しています。この数字は、インド(75%)と中国(76%)において、さらに高くなっています。
さらに、消費者の約半数(49%)は、持続可能な、または社会的責任のあるブランド商品に平均59%のプレミアムを支払うと回答しており、所得階層を問わず消費者が自らの負担でサステナビリティーを支持する意思を持っていることを示しています。
5倍以上のCEOが、顧客よりも取締役会からサステナビリティーのプレッシャーを受けていると回答しました。
しかし、個人から受けるプレッシャーは、取締役会、投資家、エコシステム・パートナーからの要求に比べれば遥かに小さいものです。IBVの2022年CEO調査では、顧客よりも取締役会からサステナビリティーのプレッシャーを受けていると答えたCEOが、それ以外のCEOよりも5倍も多いことが明らかになりました。その結果、約半数のCEOが、今後2~3年の間にサステナビリティーを高めることが組織の最優先事項の1つであると回答し、2021年の約3分の1から上昇しました。これは、前年比で37%の増加となっています。
このような取り組みが強化されることは望ましいことですが、この先、善意だけで企業の取り組みを進めることは難しいでしょう。IBVが経営幹部を対象に行った別の調査では、86%が自社にサステナビリティー戦略があると答えたものの、その戦略に基づいて行動しているのはわずか35%でした。また、サステナビリティーの目標や指標をビジネス・プロセスに組み込んでいると回答した人は、3人のうち1人のみでした。
86%の経営幹部が自社にサステナビリティー戦略があると答えたものの、その戦略に基づいて行動しているのはわずか35%でした。
手遅れになる前に、持続可能なビジネスの実現に必要なこととは何でしょうか?ここでは、サステナビリティー戦略を再構築し、気候変動という複雑な問題の解決に向けてより大きな前進を遂げるために、組織が今すぐ実行できる5つのステップをご紹介します。詳しくはレポートをお読みください。
著者について
Haynes Cooney, Research Director, Thought Leadership, IBM Institute for Business ValueJacob Dencik, Ph.D, Chief Economist and Global Sustainability Research Leader, IBM Institute for Business Value
Anthony Marshall, Senior Research Director, Thought Leadership, IBM Institute for Business Value
発行日 2022年11月15日