量子時代の要衝を築く

量子のコラボレーション

量子コンピューティングは、従来型コンピューターでは手に負えないビジネス上の難問を解決できる可能性がある。量子コンピューティングの市場は大きく成長している。この変革の最前線に立つためには、量子コンピューティングのエコシステムへの参加を検討すべきである。

実際、量子コンピューティングのエコシステム構築はすでに始まっており、参加団体・企業はそれぞれが目標とする科学・ビジネスの問題解決に重点を置いた取り組みを進めている。今、目的に適った量子エコシステムに参加することは、将来における競争優位性の獲得につながるだろう。

量子の現在地

量子コンピューティングの趨勢が明らかとなってきた。現在、大手テクノロジー企業は大規模な研究開発プログラムを支援し、ベンチャーキャピタル資金が増大し続け、スタートアップ企業が設立されている。 また量子関連の会議や研究論文は増加の一途を辿っており、学生はオンラインで量子コンピューティングを利用し、政府は投資プログラムを発表するようになった。

この潮流に乗るにはどうすべきか。すでに、今まで解決困難とされてきたビジネス上の問題を解決すべく、世界屈指の量子コンピューティング・ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーション開発企業と提携を結んだ企業もある。このような迅速な初動は、サプライチェーン・コストの大幅な削減など、思いがけない財務上のメリットをもたらす可能性もある。また、長期的にはより変換効率のよい太陽電池やより収益性の高い金融取引アルゴリズムの開発など、企業間のゲーム・ルールを変える競争優位性を獲得できる可能性すらある。急成長を遂げる量子コンピューティングのエコシステムに参加することで、幸先の良いスタートを切り得る。

成長の一途をたどる量子エコシステム

量子エコシステムでは、産業・アカデミア・エンジニアリング・物理学（ハードウェア）・プログラミング（ソフトウェア）など量子の全技術領域にまたがる専門家と、ビジネス領域の専門家が総力を結集して、従来型コンピューターでは対処できない科学・ビジネスの問題を解決する量子ソリューションの開発が進められている。事実、IBM Institute for Business Valueの調査対象となった経営層の55%が、「パートナー・エコシステムを通じて獲得したいくつもの新たな能力は、自社の将来を築く上で不可欠なものである」と回答している。このことは、エコシステム全体の発展と参加している個々の企業の発展との間に、密接なつながりがあることを示唆している。

エコシステムは、参加者全員が価値の創出に貢献し、またその価値が共有されることによって成り立っているのである。そして、事業機会の獲得につながる道を切り開くべく、さまざまな組織が量子コンピューティングのエコシステム構築を急ピッチで進めている。

相応しい量子エコシステムを見つける

企業によっては、現在は量子コンピューターにアクセスできない、あるいは量子コンピューティング・ソリューションを独力で検討するための深い専門知識が不足しているなどの事情があるかもしれない。しかし、これらは量子コンピューティングへの取り組みを遅らせてもよい理由にはならない。たとえ企業が自力で量子インフラの構築が可能なスキルと莫大な予算を確保できたとしても、適切な量子エコシステムに参加するほうが有益なことは明らかである。今、量子エコシステムに参加すべき合理的な理由が、次の3点である。

1. 量子技術の進展が速すぎて個別の企業では追従できない。

2. 量子関連のスキルを持った希少な人材をめぐって、獲得競争が激化している。

3. 大半の企業では量子コンピューティング・スタックの全領域にわたる投資ができるほどの潤沢な資金を確保することは難しい。

量子コンピューティング技術が成熟するにつれ、多様な量子エコシステムが形成されていくだろう。しかし、組織にあった量子コンピューティング・エコシステムは、組織の目標やビジネス課題を軸に形成されるものでなければならない。即ち、量子コンピューティング・エコシステムの中心には自組織を位置付けるべきである。

IBMは組織に相応しい量子コンピューティング・エコシステムを特定するための5つの基準を特定した。詳細については、レポート本文を参照ください。