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ヘルスケア分野での量子コンピューティングのユースケースの探究

診断の迅速化、医療の個別化、費用の最適化

ヘルスケア・データ(臨床試験、疾病登録、電子カルテ(EHR)、医療機器などからの情報)は、年平均成長率(CAGR)36%で増大している。このデータを利用して、健康の向上、医療費の削減、患者体験の向上、医療従事者の就労環境の改善という、ヘルスケアの「4つの目的」に関する課題の解決が進んでいる。その一方で、医療消費者(患者やその家族)はより多くの判断をしており、ますます複雑になるシステムを利用しなければならない。

医療の現場では適切なデータと強力な洞察を提供するために、多大な投資が行われている。業界の既存企業と新規参入企業のいずれも、健康的で予防的な行動を促進するデジタル体験を作り出そうとしている。それにもかかわらず、この新しいデータの多様性によって、可能性が指数関数的に増大しており、古典的なコンピューティング・システムの機能限界に達している。

ここで量子コンピューティングが登場する。

量子力学の誕生から1世紀を経て、量子コンピューティングは古典的なアプローチに対して優位性を持つ可能性があることが実証された。量子コンピューティングは処理速度を漸増させるだけではない。古典コンピューターと比較して、ある種のタスクの処理速度を指数関数的に向上できる可能性が把握されている唯一のテクノロジーであり、計算時間を年単位から分単位にまで短縮できる可能性を持つ。

量子コンピューティングにおいては、これまでと異なる考え方、新たに需要の高まるスキル・セット、他と全く異なるITアーキテクチャ、新たな企業戦略が求められる。また、このテクノロジーはセキュリティーにも差し迫った影響を与えうる。ヘルスケア業界では、そのデータ・プライバシーに関する責任と課題の大きさから、セキュリティーが特に重要である。

他の業界と同様に、ヘルスケア業界でも、量子コンピューターを古典コンピューターと組み合わせて使用することで、古典的コンピューティングのみでは実現できなかった多大なメリットを享受できる可能性が高い。その結果、現在、量子の応用分野で競争が起きている。ヘルスケア業界で現在行われている変革の中心となっている3つの主要な量子ユースケースは以下のとおりである。

1. 診断支援: 患者の診断を早期に、正確かつ効率的に行う

2. 個別化医療: 個別化された介入と治療によって、人々の健康を維持する

3. 費用最適化: 保険料と診療費を最適化する。


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著者について

Dr. Frederik Flöther

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, Global Life Sciences Leader, IBM Q Consulting


John Murtha

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, Health Plan Industry Segment Leader, IBM Industry Platforms


Dr. Daby Sow

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, Principal Research Staff Member Center for Computational Health, IBM Research


Judy Murphy, RN, FACMI, FAAN

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, Chief Nursing Officer, IBM Global Healthcare

発行日 2020年10月1日

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