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エレクトロニクス産業における量子コンピューティングの可能性

量子コンピュ―ティングは新材料の発見、設計、製造の分野で、新たな道を切り拓く

エレクトロニクス業界は数多くの課題に直面しています。

例えば、最先端の半導体製造設備には、250 億ドルもの費用がかかります。電子製品の設計がより複雑化する一方で、スマートフォンのような従来型の巨大な製品市場の成長は停滞しています。過去50 年間にわたり、設計と製造の難易度は高まる一方であり、業界のパフォーマンスは伸び悩んでいるのです。

つまり、この業界が歩む道は、より困難で、リスクが高く、高価なものになりつつあるのです。しかし、その影響はエレクトロニクス業界にとどまりません。電子技術は、さまざまなことを可能にする実現技術であり、その製品は事実上あらゆる業界で使われているためです。エレクトロニクス業界が直面する課題にどう対応するかによって、世界経済のほぼすべてのセクターに影響が及ぶ可能性があります。

エレクトロニクス業界に成長をもたらす可能性

量子コンピューティングは、根本的に新しいコンピューティング・パラダイムです。古典物理学には存在しない現象を活用することで、これまで不可能だった計算を実現します。

量子コンピューティングはエレクトロニクス業界が抱える問題のいくつかを解決する強力なツールとなる可能性を秘めています。

IBM は、何十年もの間、チップ技術の革新に努めてきたのと同様、量子コンピューティング技術の最前線にも立ち続けてきました。1981 年、IBM は量子コンピューティングに関する最初の会議を共同開催しました。2016 年には、世界で初めて量子コンピューターを一般に公開しました。このように量子コンピューターへのアクセスを提供することで、IBMは世界中の研究者や開発者が新しい量子アルゴリズムを開発できるよう支援し、量子コンピューターの進歩に貢献してきたのです。

私たちは今、「量子の10 年」に突入しています。量子コンピューティングについて理解せず、それが自社の業務にどのような影響を与え得るかを把握していないリーダーは、これからは後れを取ってしまうかもしれません。

量子コンピューティングは急速な進化を遂げようとしており、その初期の知的財産の多くは独占/ 寡占化する可能性があります。量子コンピューティングは、2017年から2021年にかけて特許出願が最も急速に増えたトップ5の分野の1つになっています。 量子コンピューティングの進化のスピードに、確実についていける者はごく少数かもしれません。

エレクトロニクス分野における量子コンピューティングの3つのユースケース

量子コンピューティングには、エレクトロニクス業界が抱えるさまざまな課題を解決する方法としての大きな可能性があります。本レポートでは、エレクトロニクス業界の3 つの主要な応用分野(化学シミュレーション、最適化と探索、AI と機械学習)において、量子コンピューティングの可能性を具現化する3 つのユースケースを紹介します。

1. 材料開発:量子シミュレーションの力を発見と実用化に活かす

2. 製品設計:量子探索で開発と検証を加速させる

3. スマート・マニュファクチャリング:量子機械学習で歩留まりを高め、コストを削減し、品質を向上させる
 

エレクトロニクス分野における量子コンピューティングのユースケース

量子コンピューターは、今日のエレクトロニクス業界に破壊的変化をもたらす可能性を秘めています。しかしはっきり言えることは、量子コンピューティングは直感で扱えるような簡単なものではないということです。このテクノロジーを理解し、活用するためには、多くの時間とリソースを費やす必要があります。

さらに、古典コンピューターか量子コンピューターかといった二者択一の問題ではないことを理解しておく必要があります。  競争優位性を確立するためには、2 つのコンピューティング・テクノロジーの強みを補完的に組み合わせる方が、はるかに戦略的です。しかし、そのためには、量子コンピューティングだけでなく、古典コンピューティングと量子コンピューティングの複雑な相互作用についても熟知する必要があります。

組織が量子コンピューティングを検討し始めてから、実際に導入する準備が整うまでに、数年、あるいはそれ以上かかることもあるでしょう。しかしビジネスの世界において、これは生きるか死ぬかを左右しかねないほどの時間です。様子を見ている間に、破壊される者になるか、破壊する方に回るのかの分かれ道を通り過ぎてしまう可能性さえあるのです。

レポートをダウンロードして、エレクトロニクス業界の急速な進化と共に、量子コンピューティングがいかなる競争優位性をもたらすかをご確認ください。


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著者について

Charles Chung

Connect with author:


, Quantum Industry Consultant, Electronics, IBM


Dr. Imed Othmani

Connect with author:


, Industry Partner, Quantum Industry & Technical Services Systems, IBM Quantum

発行日 2022年5月4日

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