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競争優位性獲得につながる量子コンピューティング・アプリケーションの峻別

Quantum Readyに向けたフレームワークとロードマップの施策

加速する量子コンピューティングへの投資

今、量子テクノロジーへの投資が隆盛を極めつつある。そうそうたるテクノロジー企業が、量子コンピューター関連の研究開発に乗り出している。各国の政府も同様で、中国、米国、カナダ、英国、EU、イスラエル、オーストラリア、ロシアなどの国や連合地域では、数千万~数十億米ドルもの多額の投資が行われている。

ユニバーサル量子コンピューティングは、特定のアプリケーションに関しては、今後数年のうちに一部の企業に多大な競争優位性をもたらすものと考えられている。Gartnerによると、全体の90%、つまりほとんどすべての企業は、2023年までに、何らかの量子コンピューティング・プロジェクトに参加し、サービスとしての量子コンピューティングを利用するものと予測されている。その結果、量子コンピューティングの全体市場規模は2025年までに2億4,000万米ドルに達し、年平均成長率(CAGR)は48%に上ると見込まれている。

初期のものを含む多くの量子アプリケーションは、さまざまな業界や企業に極めて破壊的な影響をもたらすとみられている。したがって、今日のビジネス・リーダーたちは、市場での生き残りに向けて、量子コンピューティングがもたらす優位性について十分な検討・調査を進めておいた方がよいだろう。量子テクノロジーの商用化が近づくにつれ、化学モデリング、シナリオ・シミュレーション、最適化、人工知能や機械学習などの分野で個別のアプリケーションが生まれ始めている。例えば、一部の量子アルゴリズムは、従来のソリューションと比べ、理論上、大幅な高速化を実現する。これは、線形システムの解決、非構造化データの検索、モンテカルロ・シミュレーションの実施、組み合わせ突合、因数分解など、特に厄介な数学的問題に対して有効である。これらのアルゴリズムによってどのようなビジネス優位性が実現可能となるのかを特定するため、現在、評価が行われている。

量子コンピューティング時代に向けた準備

量子コンピューターの商用化が現実味を帯びてくるにつれ、企業各社は、自社の競争環境に適した有望なアプリケーションを検討し、評価する必要に迫られるだろう。そして一部の量子アプリケーションは、その計算能力と速度によってビジネスモデルや業界のバリュー・チェーンに大きな影響を及ぼす、量子コンピューティングの優位性を活用できる状況、つまり「Quantum Advantage」を、早期かつ独自に実現できる可能性がある。量子は全く新しいタイプのコンピューティングであることから、テクノロジーの普及が可能になった際、迅速に導入できるようにするため、早期に習熟度を上げ、試験・評価しうる能力を獲得することが不可欠である。


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著者について

Lynn Kesterson-Townes

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, Global Cloud & Quantum Leader, IBM Institute for Business Value, IBM Consulting


Dr. Elena Yndurain

Connect with author:


, IBM Q Consultant - Financial Services, IBM Consulting

発行日 2020年10月1日

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