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デジタル・エネルギー企業への転身

石油・ガス会社が未来のデジタル・エネルギー企業になるためには?変革を進めるべき8つの戦略領域について、IBMはSAPと共同で調査を実施しました。
デジタル・エネルギー企業への転身

石油・ガス会社は、再生可能エネルギー源への転換と、よりクリーンな生産・輸送・製造処理を世論や規制当局から強く求められており、温室効果ガスの排出に大きく関わっているこれらの企業は岐路に立っていることを実感しています。未来のデジタル・エネルギー企業への移行を迫られているのです。それは、エネルギー転換を実現し、データとデジタル技術を活用したよりクリーンで、安全、安心で、信頼性に優れた設備資産の運用を行う未来像です。

この変革の道のりはそう簡単ではありません。経営層は、現在のエネルギー需要に応えると同時に、商品ポートフォリオとオペレーションの両面で低炭素の未来を構想し、それに向けて歩まねばなりません。

石油・ガス会社のほとんどは実際にこの方向に向かって前進しています。一方で、ネットゼロ排出目標を設定した企業は40% に過ぎず、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を効果的に実行できていると回答した企業は39%に過ぎません。IBM Institute for Business Value(IBM IBV)とSAPが共同で世界の石油・ガス会社の経営層2,000人を対象にした調査を通してグローバルのエネルギー企業の変革のプロセスを明らかにしました。

「ビジョナリー型」企業は、DXとサステナビリティーのどちらかではなく、両方を追求している。

本レポートでは、この調査分析結果を基に4つの企業区分を定義し、模範となるような先進的な企業グループを「ビジョナリー型」企業と名付けました。この区分の企業はサステナビリティーを変革の機会と捉えており、他の企業よりもサステナビリティー戦略とデジタル戦略を連携させることで、変化に対応し、イノベーションを進めています。また、他の区分の企業と比べて、収益成長率と収益性の点で優れた業績を上げています。

未来のデジタル・エネルギー企業:8つの領域にわたり、戦略を統合運用

 

「ビジョナリー型」企業は、未来のデジタル・エネルギー企業が8つの戦略領域にどのように取り組んでいくかという見本を示しています。 
 

  • 次世代エネルギー:「ビジョナリー型」企業は、クリーンな燃料とクリーン電力(原子力、太陽光、水素、バイオ燃料など)に軸足を移行。また、それらを利用して処理プラントや製油所、輸送手段などにエネルギーを供給している。
     
  • ゼロGHGとゼロ・ウェイスト:化石燃料からの脱却を進めつつ、ネガティブ・エミッション(GHG除去)技術を追求している。
     
  • テクノロジーとデータの信頼性と安全性の確保:オープンなクラウド・コンピューティング・インフラを通じて、石油・ガス業界の豊富なビッグデータを高度な分析とAIに活用することで、リアルタイムの意思決定と深い洞察(インサイト)の獲得を実現している。
     
  • 自動化された安全・安心なオペレーション:自動化ツールを活用し、オペレーション効率を高めている。例えば、デジタルツインで生産工程を最適化し、ロボットで検査や保守をサポート。自動化は、予知保全、設備管理、サイバーセキュリティーなどにも利用できる。
     
  • 次世代モバイル:リモート・オペレーションや最適な生産工程をサポートするため、5G接続とモノのインターネット(IoT)、産業用モノのインターネット(iIoT)、拡張現実/仮想現実(AR/VR)といった先進技術を組み合わせて活用している。
     
  • 人材育成:機械学習、OTセキュリティー、可視化、データサイエンス、気候科学といった、新しい従業員スキルの育成に投資している。
     
  • 新たなビジネスモデル:バリュー・チェーン全体で新しいグリーン・ビジネスモデルを模索し、それを組織でサポートしている。
     
  • エコシステム・パートナーシップ:グリーン・エネルギーのパートナー・エコシステムを構築して、社内だけでなくサプライチェーン全体でサステナビリティー目標の実現に向けて取り組んでいる。

 

本レポートはダウンロードして読んでいただけます。これら各領域についての詳しい内容や具体的なデジタル・ソリューションを取り上げたケース・スタディーもご紹介しています。また、先駆者として道を切り拓き、業界内で差別化を図ってきた「ビジョナリー型」企業から得られる教訓についても知ることができます。加えて、詳細なアクション・ガイドでは、石油・ガス会社が未来のデジタル・エネルギー企業に成長するための3ステップのプランと具体的な手順を経営層向けにご紹介しています。  

日本語版監修者考察

「日本においても、DXとサステナビリティの両方を追求することが重要です。」

日本語版を発刊するにあたり追加した考察は、日本のエネルギー企業のDXとサステナビリティに関する取り組みを共に実践してきたIBMのコンサルタントが示す道筋です。

グローバル調査に基づき、領域を8つに分けて解説しています。そのうち領域2の「ゼロGHGとゼロウェイスト」では旭化成様の取り組みを、領域4の「自動化された安全安心オペレーション」では三井化学様とJERA様の取り組みを、また、領域8の「エコシステム」ではIHI様と北九州市様、IBMの共同の取り組みをご紹介しています。

さらに、少子高齢化が進む日本社会での人材獲得競争の激化への対応や、サイロ化した企業内の部門間の連携について触れました。事業の価値創出に向けて、デジタル部門とサステナビリティ部門が両輪となってプロジェクトを進めることの重要性を唱える内容となっています。

読者の所属する組織のDXとサステナビリティ推進に向けた活動に関するご参考になれば幸いです。


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著者について

Zahid Habib

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, Global Energy and Natural Resources Leader, IBM Consulting


Ash Zaheer, Global Chemicals and Petroleum Digital Customer Experience Leader, IBM Global Markets

Daniela Haldy-Sellmann

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, Global Vice President, Head of Energy and Utilities Industries SAP


Stephane Lauzon

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, Head of Oil, Gas, and Energy, SAP


Spencer Lin

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, Global Research Leader, Chemicals, Petroleum, and Industrial Products, IBM Institute for Business Value


永田 悟 (監訳者), 日本アイ・ビー・エム株式会社,IBM コンサルティング事業本部,Global Industrial Center of Excellence, Energy and Resources アソシエイト・パートナー

馳川 高弘(監訳者), 日本アイ・ビー・エム株式会社,IBM コンサルティング事業本部,Managing Consultant,Chemical & Petroleum, Industrial Products コンサルタント

発行日 2023年10月31日