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ディスラプション・バイ・デザイン :生成AI時代に進化する顧客体験

生成AIによる顧客体験のデザインによって、よりパーソナライゼーションと自動化をすることが可能になり、コンテンツ・クリエイターはコンテンツ・キュレーターへと変化する。

かつてないスピードで、生成AIはメディアのバズワードから経営層レベルの重要事項へと重要性が高まっています。 3分の1以上の企業が、実験的な試みを終え、マーケティング、セールス、コマース、製品やサービスのデザインなど、顧客体験の創造を担当する部門全体で生成AIの試験導入を進めています。

クリエイティブ・リーダーやプロフェッショナルの57%が、生成AIが今後の顧客体験デザインに影響を与える最も破壊的な力であると考えている。


企業は、顧客満足度を高め、生産性を向上させる生成AIには大きな可能性があると考えています。そのため、多くのデザイナーがこの画期的なテクノロジーがもたらす課題と格闘しているにも関わらず、急速に生成AIの活用を推進しています。 10人中8人の経営層が、生成AIのアウトプットに関連するリスクは、今まで以上にデザイナーの関与を強めて対処する必要があると予想しています。 しかし同時に、70%の経営幹部は生成AIによって、より少ないデザイナーでより多くのことができるようになると期待しています。

生成AIを採用することに対する強い圧力に対して、このAI技術が提供する説得力ある利点を認識するためには、経営層とデザインチームが協力して推進する必要があります。 つまり、生成AIツールが最も価値を発揮する領域に焦点を当て、データ・プライバシーとブランドを保護するガードレールを構築し、顧客の信頼を獲得するということです。

生成AIと顧客体験:プロジェクト加速などの価値を生みだすビジネス・ケース

優れた顧客体験デザインは、ビジネスを成功へと導きます。 優れた製品やサービスの設計が評価された調査回答者は、他の企業よりも42%高い収益成長率を報告しています。 経営層が顧客体験の向上を今後2年間の最優先事項としていることは驚くことではありません。

こうした願望は目新しいものではありませんが、生成AIが最近の他のどのテクノロジーよりも、ハイパー・パーソナライゼーションと生産ワークフローの加速という企業の最終的な目標の達成に大きく貢献できる可能性を示しています。 顧客体験デザイン担当の経営層は、生成AIがもたらす変革の恩恵によって、今日の顧客体験デザインのあり方に最も影響を与えているプレッシャーが和らぐと述べています。

生成AIの流行がとん挫しかねない落とし穴とは

多くのビジネス・リーダーが生成AIを熱狂的に受け入れている一方で、実務担当者はこの先、導入の壁にぶつかるかもしれません。 ブランドの安全性、知的財産、専有データへの脅威が懸念事項の上位を占めます。 回答者はまた、言語モデルにおけるデータの不正確さ、偏り、不確かな来歴についても心配しています。

そして企業の生成AI活用に歯止めをかけてしまうような懸念事項もあります。それは、倫理、偏見、信頼、ガバナンスの欠如などです。 IBVが最近実施したCEOを対象とした調査では、72%が、生成AIが倫理的な代償を伴う可能性があると考えた場合、AIへの取り組みから手を引くと回答しています。 このCEOの視点は、回答者が来年最も求められると予想するデザインの強みのリストの最下位に倫理と共感がランクされているという事実と組み合わせて考えると興味深いかもしれません。

一方、ほぼ5人に1人(18%)は、従業員に指示なしに自由にAIを使わせることを望んでいます。 このアプローチは、AIの採用を加速させ、次のレベルのイノベーションを促進する可能性がありますが、誤操作がブランドにダメージを与える場合には大きなリスクを伴います。

半数の企業が、生成AIの利用を管理・監視するガバナンスのための企業全体のアプローチを確立していると回答しているが、このアプローチを実践しているのはわずか5%に過ぎない

顧客体験デザインのワーク・フローを変革する

リスクがあるにもかかわらず、カスタマー・ジャーニー全体の顧客体験デザインを担当する多くの企業機能が、生成AIをワークフローに組み込み始めています。

従来のAIや自然言語処理(NLP)を導入し、個々の顧客と関わり、顧客との関係を構築してきた長い実績を持つカスタマーサポートは、最も早くから積極的に生成AIを導入しています。 48%の企業が、対話の生成や人間のエージェント(ヘルプデスクなどの顧客一次窓口担当。以下「エージェント」)が顧客の質問に答えるために、すでに生成AIを使用していると回答しています。

顧客と向き合い、テキストベースのチャットボットを作成するエージェントの採用はさらに加速しています。 チャットボットは36%で、今日最も身近で人気のある生成AIのユースケースの一つです。 この数字は、今から1年も経たないうちに81%に跳ね上がります。

ハイブリッドAIモデルを使ってパーソナライゼーションの約束を実現する

どの業界においても、どの顧客においても、古くからある課題は、ターゲットを絞った特別な体験を、より速く、よりコスト効率よく提供すること、つまり大規模化したパーソナライゼーションです。 生成AIシステムは、最終的にこうした進歩を実現できる可能性があり、多くの企業(63%)が投資を望む最大の理由となっています。

現在、生成AIアプリケーションを使用する企業の半数は、ChatGPTやDALLE-Eのような一般に利用可能な基礎モデルにアクセスしています。 しかし、公開されているモデルに欠けているのは、企業が従業員や顧客とのやりとりのすべてから得る、苦労して得たきめ細かなデータです。 機械学習を超え、スピード、規模、特異性を備えた、企業に合わせたハイパー・パーソナライズされた顧客体験の開発を可能にする独自のデータです。

現在、独自のモデルを構築している企業は24%に過ぎないが、72%は年内に独自モデルを使用すると回答している。

生成AIがデザイン人材に与える影響

生成AIへの容易なアクセスによって、多くのデザイン・アクティビティーは一般化かつ、合理化されると予想されますが、優秀な人材の必要性は依然として高止まりの状態が続くでしょう。 実際、経営層の82%が、AIソリューションがもたらすリスクによって、デザイナーがプロジェクトへの関わりが増えることに同意しています。 そして、80%程度のほとんどのデザイナーは生成AI基盤モデルの作成において中心的な役割を果たす必要があります。

優秀なデザイナーの需要は非常に高いように見えますが、70%もの経営層は、このAI主導のテクノロジーによって可能になる生産性の向上によって、より少ないデザイナーでより多くのことができるようになるとも期待しています。 クリエイティブ・マネジャーとデザイナーは同意する傾向が弱く、57%がそう考えています。

生成AIは人に取って代わることはないが、それを使う人は使わない人に取って代わるだろう。

DesignOps(デザイン・オペレーション)の進展と変化の管理

「デザイン・オペレーション可能企業」は品質管理手順作成や差別化とブランドの安全性のために、AIアウトプットのためのデザイン・システムとガイドラインを最適化することができます。また、デザイナーが正確に自動化イニシアチブを含む生成AIをワーク・フローに取り入れる訓練を適切に受けることを支援するのに役立ちます。そして、カスタマー・ジャーニーや従業員体験に生成AIを大規模に取り入れるための明瞭で包括的な戦略を定義することもできます。これは、3分の1の企業しか本格的に実践できていません。
 

ストレスの軽減 

生成AIが顧客体験デザインのプレッシャーを対処する

このレポート(英語)をダウンロードし、今日企業がどのように顧客体験デザインにおいて生成AIを導入しているか、また導入リスクを避けながら、AIでパーソナライゼーションを実現するための取り組みがどのように変化しているのかご確認ください。そして、経営層、クリエイティブ・マネージャー、コンテンツ・クリエイターが協働して、顧客体験を生成AIトランスフォーメーションのカタリストへと転換させるためのアクション・ガイドの理解を深めてください。


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著者について

Billy Seabrook

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, Global Chief Design Officer, IBM iX


Carolyn Heller Baird

Connect with author:


, Global Research Leader, Customer Experience and Design, IBM Institute for Business Value

発行日 2024年6月14日

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