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「未来の衝撃」に備えて政府がすべきこと:レジリエントなサプライチェーンの構築に必要なコラボレーション

サプライチェーンのレジリエンスを構築するために、政府は脅威の分析、サプライチェーンの維持、そして影響の最小化を目的とするシェアード・サービスを立ち上げる必要があります。

地政学的な争いや新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)、自然災害といった問題が相次ぎ、世界のサプライチェーン(供給網)を揺さぶり続けています。先を見通して国家や経済の備えを固め、“サプライチェーン・ショック”に対処し、混乱からの回復を図る。そのためには自らの役割が極めて重要だと各国政府は認識しています。将来に潜む課題を予見し、先んじて計画を立て、サプライチェーンの混乱を和らげる。政府のリーダーがこうした課題に対応するためにはどうすべきでしょうか。

行動計画を策定するため、サプライチェーンの専門家がワシントンD.C.(米国)とロッテルダム(オランダ)で会合を開きました

サプライチェーンを強靭化(きょうじんか)する行動計画を政府レベルで策定するため、IBM Center for The Business of GovernmentとIBM Institute for Business Value、National Academy of Public Administration(全米行政アカデミー)、および在オランダのAmerican Chamber of Commerce(AmCham、米国商工会議所)は、「未来の衝撃への備え:サプライチェーンの最新化」というテーマで、ラウンドテーブル会議を共同開催しました。ワシントンD.C.とロッテルダムの会場には、産学官民のリーダーと専門家が数多く集まり、それぞれの知見を共有し、政府に対する実践的で実行可能な提言について話し合いました。

IBMが2022年に行った調査によると、世界のCEOの38%が目下最大の課題として、サプライチェーンの混乱を挙げています。


リソースの統合でサプライチェーンの耐久性を強化します

ラウンドテーブル会議では、サプライチェーンの混乱に対する予防策として、センター・オブ・エクセレンスを各国政府がシェアード・サービスにより共同で設立する必要性について議論が交わされました。仮にサプライチェーン・リスクを集中管理する組織ができれば、各国政府は一元的に脅威を診断して対応策を講じ、サプライチェーンを維持できます。サプライチェーンの耐性が強化されて、混乱を緩和することも可能となります。

政府のシェアード・サービス組織は、主要機関のリソースを統合するために、混乱の影響に関するデータへのアクセスをリアルタイムで可能とします。さらに、市場の情報や、混乱の復旧に有用なインサイト(洞察)を共有するほか、こうした情報の有効利用に詳しい専門家へのアクセスを提供します。

リスク緩和と官民協力を通じてサプライチェーンを維持します

ネットワークを可視化しデータ収集のプロトコルが確立できれば、政府主導によるサプライチェーンのシェアード・サービス戦略は「維持」モードに移行できます。維持モードに入ると、予測モデルの開発や、民間組織とのパートナーシップを通じて、能力の刷新や拡大が可能になります。

予測分析ツールの高度化は近年、顕著に進んでおり、政府はウォーゲーミング*から得た知見を基に、より精度の高い「what if」シナリオや緊急時プランが作成できるようになりました。また、AIやデジタルツインなどのテクノロジーを活用して、ストレス下で脆弱(ぜいじゃく)なサプライチェーンのポイントを特定することも可能になりました。

サプライチェーンのレジリエンスを強化するためには、政府は民間企業との関係を強固なものにする必要があります。こうしたパートナーシップを通じて、民間企業の専門家が政府機関のシェアード・サービス組織に参加する機会も生まれます。政府と企業が情報を共有し、相互に信頼を高めることができれば、災害から逃れられない、予測不可能なこの世界においても、さまざまな状況に適応することができるでしょう。

*ウォーゲーミングとは、架空のシナリオや状況を想定し、関係者が模擬的にプレイすることで、将来のリスクや問題に対処し、リスクを軽減するための手法のこと

Rotterdam

政府機関がどのようにして民間業界とコラボレーションし、サプライチェーンにおける官と民の優先事項を連携させ、サプライチェーンにおける未来の衝撃の次なる波に備えてレジリエンスを構築できるかを、レポートをダウンロードして確認しましょう。


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著者について

Rob Handfield

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, Bank of America University, Distinguished Professor of Operations and Supply Chain Management, NC State University

発行日 2023年6月11日