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エンベデッド・ファイナンス:時と場所に制約されない金融サービスの創造

エンベデッド・ファイナンスにより、銀行は金融ニーズがあれば時と場所を問わず、顧客にサービスを提供できるようになります。

プラットフォーム経済によって、消費者のデジタル体験は一変し、銀行にも劇的な変化が起きています。消費者や企業は、リアルかデジタルかにかかわらず、自分が銀行に出向くのではなく、銀行側が自らの生活や活動にあわせてほしいと望んでいます。

エンベデッド・ファイナンスを取り入れない銀行は、競争が激化する中で、存在感と顧客ロイヤルティーを失うリスクを負いかねません。ネオバンクやデジタルバンク と呼ばれる銀行が至るところに出現しているほか、フィンテックのスタートアップや銀行以外の事業者が提供するプラットフォームベースの銀行サービスも、エンベデッド・ファイナンスに関して大きな市場シェアを獲得しているからです。
 
大半の銀行は従来型のビジネスモデルに依存しているため、持続的な収益性の回復や時価総額の拡大を図る上での能力が限られてしまっています。エンベデッド・ファイナンスのサービスを活用すれば、短期間での取引量の拡大、新規顧客の獲得、ユーザー体験の改善、新たな収益源の確保を通じた業績向上が期待できます。

エンベデッド・ファイナンスとは何か 
 
このレポートでは、エンベデッド・ファイナンスを「金融業以外の組織のカスタマージャーニーに金融商品・サービスを組み込むことで、無駄を省き、顧客体験を充実させる仕組み」と定義します。

エンベデッド・ファイナンスのカスタマージャーニーへの統合
 
顧客は高度にパーソナライズ(個別に最適化)されたエンド・ツー・エンドの体験に慣れると、金融ソリューション(商品・サービス)の利用に伴う面倒なプロセスを避けたいと考えるようになります。銀行はエコシステムや顧客のデータとAIが生成するインサイト(洞察)を活用することで、金融ニーズがあれば時と場所を問わず、顧客にサービスを提供できるようになります。

従来型の銀行はエンベデッド・ファイナンスによって、安全なAPIでつながった、顧客が使っているデジタルプラットフォームおよびマーケットプレイス上で顧客と関わることができるようになります。その際は、ビジネスモデルの中核にエコシステムを据えることが成功の鍵となります。

銀行CEOは今や、エコシステムの連携を通じてビジネス価値を生み出すことができます。プロダクト中心型のバリュー・チェーンで主導権を握ることだけが方法ではありません。もはや顧客と銀行は互いの取引相手という関係ではなく、言わば共生関係にあるのです。

銀行経営層の70%はエンベデッド・ファイナンスを自行のビジネス戦略の中核または補完的要素と見なしています。

では、こうした新たな機会を銀行が最大限に活かすにはどうすればよいのでしょうか。「IBM Institute for Business Value(IBM IBV)」は、BIAN(バンキング・インダストリー・アーキテクチャー・ネットワーク)およびレッドハット(Red Hat)社と共同で、世界の銀行経営層1,000人を対象として、エンベデッド・ファイナンスが彼らのビジネス戦略において果たす役割を調査しました。また、最新の消費動向を明らかにするため、12カ国・1万2,000人の金融サービスを利用している消費者を対象に調査を行いました。

デジタル金融が一般化:今や、消費者の大半がローンの申請、投資の管理、自動車保険の購入・更新をオンラインで行っています。


消費者に給与の振込先や貯蓄口座としてどこが望ましいと思うかを尋ねると、80%が従来型銀行口座と回答しました。しかし、すでに16%の消費者は支店のない完全にデジタル化された銀行がよいと感じています。一部の国ではそうした消費者の割合が突出して高い状況です。
 
銀行経営層の70%がエンベデッド・ファイナンスは単なる新しい挑戦ではなく、自行のビジネス戦略の中核、または補完的要素だと回答しています。さらに、銀行経営層の4人中3人近くはエンベデッド・ファイナンス戦略を導入しつつあるか、展開中であると回答しました。
 
ですが、エンベデッド・ファイナンスは定着していくのでしょうか。本レポートをダウンロードしてお読みいただければ、以下の4つの重要な質問への答えとなるインサイトを入手できます。

 

  • 消費者はプラットフォーム経済に組み込まれた銀行を受け入れる準備ができているか
  • エンベデッド・ファイナンスは単なる一時の熱狂か
  • 銀行は変革を加速するために何ができるか
  • 銀行の役割をどう高めるか

 

日本語翻訳監修

鍋島四郎
日本アイ・ビー・エム株式会社
銀行証券セクターコンサルティング
コンサルティングサービス統括
パートナー/理事

笠野智代実
日本アイ・ビー・エム株式会社
銀行証券セクターコンサルティング
デジタル・リインベンション・コンサルティング
アソシエイト・パートナー

小出俊行
日本アイ・ビー・エム株式会社
銀行証券セクターコンサルティング
決済ビジネスコンサルティング
アソシエイト・パートナー

井上明
日本アイ・ビー・エム株式会社
銀行証券セクターコンサルティング
デジタル・リインベンション・コンサルティング
マネージング・コンサルタント


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著者について

Shanker Ramamurthy

Connect with author:


, Managing Partner, Global Banking & Financial Markets, IBM Consulting


John J Duigenan

Connect with author:


, General Manager, Financial Services, Banking, Financial Markets, and Insurance Global Industries, IBM Technology


Hans Tesselaar

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, Executive Director, BIAN


Hector Arias

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, Global FSI, Retail Banking Global Lead, Red Hat


Paolo Sironi

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, Global Research Leader, Banking and Financial Markets, IBM Institute for Business Value


鍋島四郎(日本語翻訳監修)

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, 日本アイ・ビー・エム株式会社,銀行証券セクターコンサルティング,コンサルティングサービス統括,パートナー/理事


笠野智代実(日本語翻訳監修)

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, 日本アイ・ビー・エム株式会社,銀行証券セクターコンサルティング,デジタル・リインベンション・コンサルティング,アソシエイト・パートナー


小出俊行(日本語翻訳監修)

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, 日本アイ・ビー・エム株式会社,銀行証券セクターコンサルティング,決済ビジネスコンサルティング,アソシエイト・パートナー


井上明(日本語翻訳監修)

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, 日本アイ・ビー・エム株式会社,銀行証券セクターコンサルティング,デジタル・リインベンション・コンサルティング,マネージング・コンサルタント

発行日 2023年9月1日