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ハイブリッド・マルチクラウドにデータ・ファブリックを織り込む

ー AI、機械学習、IoT(モノのインターネット)、エッジ・コンピューティングに力を入れる企業が、データからより多くの価値を創造するには

テクノロジー駆動のビジネス・トランスフォーメーションに携わる全ての人は、「データ・ファブリック」の概念を理解する必要があります。データ・ファブリックは、大企業が絶え間ない競争圧力や昨今のパンデミックのような不測の事態に対応して進化し続ける中で、組織の将来に向けて「遺伝子を引き継ぐ」ためのカギとなります。 
企業によるハイブリッド・マルチクラウド・アーキテクチャーへの投資と同様に、拡張データおよびデータ分析機能への投資も引き続き活発です。「ソフトウェアが世界を飲み込む(Software eats the world)」、つまりあらゆる産業やサービスがソフトウェアによって代替されていっているという状況は、ソフトウェアがインテリジェント・データとハイブリッドクラウドという“高タンパクな食事を摂取する”ことで支えられています。

IBM Institute for Business Value researchの調査により、データからより多くの価値を得ることが、健全なデジタル戦略を推進することがわかっています。高業績企業は、データ・センター・オブ・エクセレンス(CoE)、データサイエンティスト、データ分析ツールなどに大規模な投資を行っています。今日、ほとんどの大企業は、顧客体験を向上させ、カスタマー・ジャーニーをサポートし、新しいサービスを可能にする顧客向けアプリケーション(デジタル製品)を導入する戦略を取っています。これはB2BやB2Cのビジネスモデルでも機能しますし、新規のプラットフォーム・ビジネス・モデルでも、戦略の核となって機能するでしょう。

アプリケーション、データ、クラウド、そしてそれらの設計・開発に携わる人々を隔てる境界を管理する新たな手法が、データ・ファブリックなのです

技術+規模+人=複雑さになります。私たちは、物事に“境界線”を引くことで複雑さを管理し、複雑なシステムの一部分だけに集中できるようにする傾向があります。これはある面では有効に機能しますが、自分が引いた境界線と境界線の間のホワイト・スペースの管理を忘れがちになります。データ・ファブリックは、アプリケーション、データ、クラウド、そしてそれらを設計・開発する人々を隔てる境界を管理する新たな手法であり、これを理解することが重要です。
成功を左右するのは、境界の管理なのです。

本レポートでは、以下の3つの境界について取り上げます。
 

  1. データ・プラットフォーム間の境界
  2. クラウドとクラウド・プロバイダーとの境界
  3. 企業のトランザクション分析のデータ運用とコミュニティーの間にある境界

 

データ・プラットフォーム間の境界

データ実務者の間では、「2つ目のデータベースを追加すると、統合の問題が発生する」という言葉がよく聞かれます。ビッグデータがITの代表的なバズワードとなって以来、データの有効活用によるメリットを享受する機会は増えていますが、それに伴い大規模なデータから適切なデータを適切なアプリケーションで利用しなければらないという課題も発生しています。
クラウド以前から、企業はデータ・プラットフォームを構築していました。これは、異なるデータベース上にあるデータを統合するテクノロジー・ソリューションです。ここでデータ・プラットフォームは、サービスとして機能するように設計されています。“ガードレール”(予期しない結果やエラーを回避しつつ、ある程度利用者の裁量でサービスを利用するためのガイドライン)の内側であれば、データを必要とする人がデータを入手したり、ユーザーやアプリケーション、その他のテクノロジーに対してデータを配信することが可能です。

各データ・プラットフォームの境界は、通常、格納されているデータの種類や、データの使用方法によって定義されます。大企業であれば、人事データ・プラットフォーム、サプライチェーン・データ・プラットフォーム、特定のビジネス・ユニット用の顧客データ・プラットフォームなどが必要になるかもしれません。

エンド・ツー・エンドで顧客のバリュー・チェーンを構築・運用するためのデータが、単一のデータ・プラットフォーム上にのみ配置されることはないでしょう。

利用可能なデータからより多くの付加価値を得るためには、この境界線は有意義であり、都合の良い方法でした。しかし、近年の状況の変化により、その優位性は揺らいできています。
第一に、企業が新しいビジネス・モデルを展開し、ロイヤルティーの高い顧客とのインタラクションを一元的に把握するのであれば、ビジネス部門で顧客データを縦割りで管理していくことは難しくなります。
第二に、サプライチェーンのデジタル化が進む中で、エンド・ツー・エンドで顧客のバリュー・チェーンを構築・運用するためのデータが、単一のデータ・プラットフォーム上にのみ配置されることはないでしょう。
第三に、データ分析の精度が向上するにつれ、データ・プラットフォームの設計者が思いもつかなかったようなつながりや洞察がデータ・プラットフォーム間で得られるようになる可能性があります。

データ・プラットフォーム間の境界を管理するには、統合、接続、コントロールの3つのアプローチがあります。いずれの方法もデータ・ファブリックの一部ではありますが、分散型のハイブリッドクラウド環境に最も適しているのは、3番目の”コントロール"の手法です。しかし、どの方法においても大切なのは、プラットフォーム内のデータと、それを必要とするアプリケーションを疎結合することです。この疎結合の概念は、データ・ファブリック・アーキテクチャー全体を通して重要な考え方になります。

境界戦略: データ・プラットフォームの境界を管理するための3つのアプローチ

残りの2つの境界については、ぜひ本レポートをダウンロードしてお読みください。また、組織がデータベースの先にあるものについて認識し、データを適切な場所、タイミング、そしてアプリケーションで利用できる環境を構築するためのインサイトも併せてご確認ください。


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著者について

Varun Bijlani

Connect with author:


, Global Managing Partner, Hybrid Cloud Transformation, IBM Consulting


Dr. Sandipan Sarkar

Connect with author:


, IBM Distinguished Engineer, Global CTO Data, Hybrid Cloud Transformation Service Line, IBM Consulting


Richard Warrick

Connect with author:


, Global Research Leader, Cloud, IBM Institute for Business Value

発行日 2021年4月16日

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