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コグニティブが拓く自動車の未来

膨大なデータを活用して格別な体験を提供する

データを活用して成長を促進

自動車メーカーは、日々の取引や製品・サービス、顧客とのやり取りから生成されるデータ、また外部の情報源という宝の山に囲まれている。データを活用することで、業界や社内の業務効率の大幅な改善はもちろんのこと、消費者の車内体験をパーソナライズし、さらには新たなモビリティー体験を作るに至るまで、無限の可能性がある。

しかし、いくら宝の山(データ)があっても、そこから宝を掘り起こす(洞察を導き出す)ための道具(ツール)がない、あるいは、たとえあったとしても、十分に使いこなせていないケースがある。コグニティブ・コンピューティングは、価値ある洞察を導く非常に有効な手段であり、自動車業界の経営層もコグニティブ・コンピューティングに熱い視線を注いでいる。

今回、コグニティブ・コンピューティングが自動車業界に及ぼす潜在的な影響を理解するため、2016年にIBM Institute for Business Valueが実施したコグニティブ・コンピューティングに関する調査をもとに、そこに参加した全世界の自動車業界の経営層500人の回答を、改めて分析した(本レポート末尾の「調査方法」を参照)。

調査においては、自動車業界の経営層に対し、テクノロジーや業界および自社組織がコグニティブの採用に向けてどれだけ準備ができているか、現在自社ではコグニティブ・コンピューティングに関して何をしているか、また今後数年間に何をする計画があるかについて意見を伺った。また、コグニティブ・コンピューティングの活用で先行している業界の特定グループには何か特筆すべき特徴があるのか、またデジタル・ビジネス(デジタルな手法を用いて行われるビジネス)とデジタル・インテリジェンス(デジタル・テクノロジーを利用することで得られる洞察)の融合により、どのように優れた事業やモビリティー体験を作ろうとしているかを探った。

なぜコグニティブなのか、なぜ今なのか

毎日90億ギガバイトの個人データが生成され、100万人のアクティブ・モバイル・ユーザーが新たにソーシャル・ネットワークとつながる。1 自動車メーカーはこのデータを活用して、すばらしい顧客体験やパーソナライズされたマーケティング・キャンペーンを展開できる可能性がある。

The Weather Company社は現在、30億にものぼる気象予報基準ポイントを管理している。2 自動車メーカーはこの基準ポイントのデータを参照して、クルマが自身でドライブ・ルートを設定できるようにできるし、企業は供給や販売ルートの悪天候によるトラブルを未然に回避することができる。

クルマにまつわるデータの量は増加の一途をたどっている。2025年までに100万台の自動運転車が、毎日4,000ギガバイトのデータを生成・消費すると言われている。これらのデータは顧客の車内体験をパーソナライズするのに役立つ。3 ちなみに、この自動運転車から得られる予想データ量は、現在世界中の人々が一日に生成しているデータ量の約40%に匹敵する。

しかし、こうしたデータの多くは構造化されておらず、複雑で安定していないため、従来の分析ではごく一部しか利用できなかった。そこで、すべてのデータにアクセスし、そのデータから今後のイノベーション推進に役立つ洞察を導き出すために、新たな技術が必要とされている。それがコグニティブ・コンピューティングである。

コグニティブ・システムは、人間と同じように物事を理解し、推論し、学び、対話をする(P.3 コラム「コグニティブ・コンピューティングとは」を参照)。コグニティブ・システムは、想像力や抽象化といった人間の強みを、自然言語での対話やパターン識別などのコグニティブの強みで増強させ、人間とテクノロジーの新たな協力関係を作る。人工知能や自然言語処理、ディープ・ラーニング、予測分析といった、他の先端技術の力も借りて。


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著者について

Ben Stanley

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, Automotive Research Leader, IBM Institute for Business Value


Binoy Damodaran

発行日 2018年6月1日