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次世代の製造オペレーションを支えるクラウド技術

製造オペレーション・IT両部門の経営層が、テクノロジーを活用する優先課題を推進しやすい企業には、どのような特徴があるのでしょうか。IBVはAWSと協力し、5つの特徴を明らかにしました。

「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の取り組みが進むにつれ、製造用クラウド・コンピューティングの導入が着実に進んでいます。2022年までに大半の企業で大幅な進捗(しんちょく)が見られました。しかし、IBM Institute for Business Value(IBM IBV)とアマゾン ウェブ サービス(AWS)のインサイト(洞察)によると、クラウドをデジタル・トランスフォーメーション(DX)の基盤として位置付けていない製造企業が多いようです。製造業を対象とするIBVのグローバル調査で、クラウドのメリットを活用できていると回答したIT担当経営層は、全体の半数にすぎません。

いったい何が障害となっているのでしょうか。次の3つの理由が明らかになりました。 
 

  • クラウド移行が済んだ製造工程のワークロードは驚くほど少ない。このため、クラウドが重要な実現手段となる先進的なオペレーションの取り組み(自動化など)が難しい。
  • 一部の製造企業はクラウド・コンピューティングや人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、アプリケーション最新化を含めたテクノロジー総合戦略を策定していない。
  • 回答者の一部は、クラウド・ソリューションを利用したコスト削減には特に力を入れているものの、ビジネス・プロセスの効率向上や製造業務の価値向上など、成果をさらに積み上げる取り組みが十分ではない。

製造企業が学ぶべき教訓は何でしょうか。ワークロードのリフト・アンド・シフト(システム構成をそのままクラウド環境へ移行する手法)や、単独のユースケースの対応のためにクラウドを導入するだけでは不十分だ、ということです。クラウドを活用した製造の実現に向け、成果志向のアプローチを取れば、より多くの成果を得られるでしょう。具体的には、生産性や品質、機械の稼働率、サステナビリティー、エンジニアリングがスピードアップすることです。

製造業のDXを実現するには、クラウド・サービスに対しこれまで以上に戦略的で生み出す価値を重視するアプローチを採用することが求められます。

新たなアプローチを採用しなければ、製造企業は今後、テクノロジーを活用した複雑なイニシアチブへの取り組みで困難に直面するでしょう。例えば、サプライチェーンの最適化や、品質の分析・問題解決、原材料・生産の最適化、資産の予測モニタリングなどに苦労することになります。

経営層は実際、自社の優先課題をサポートする上で現在のクラウド・アーキテクチャーが不十分であると認めています。クラウド技術の基盤が脆弱だと、リアルタイム・データやセキュリティー、最新テクノロジーを統合して意思決定の改善やイノベーションの促進を図ることが難しくなります。

製造部門の経営層は、重要なテクノロジー施策の中には、自社のクラウド・アーキテクチャーでサポートできていないものがあると認めています。

クラウドの導入と、それに伴って実現される先進技術を利用して自社の目標を推し進めるためには、製造企業はどうすればよいのでしょうか。その答えを見つけるため、当社は世界の製造企業1,100社以上の製造・IT両部門の経営層を対象とした調査を行いました。対象業種は自動車や電機、石油・ガス(「川下」の精製・販売部門)、化学、金属、および産業用機械です。

調査では、先進的な企業のグループ(「変革かつ最適化」型)を特定しました。このグループは、以下の5つの特徴を体現することにより、主要な成果指標で他グループを上回っています。

最新のクラウド・プラットフォームを活用している: パブリッククラウド・ソリューションとプライベートクラウド・ソリューションの両方を活用したハイブリッドクラウドのITインフラストラクチャーにより、製造企業にとって最も合理的な場所でのデータ処理が可能になります。

堅牢なデータ基盤を持つ: ビッグデータを「民主化」することで、組織はより詳細なインサイトを取得し、業務効率を高め、サイバー・レジリエンス(強じん性)を強化できます。

デジタル技術を包括的に活用している: クラウド・プラットフォームは、機械学習やAI、IoT、自動化、インテリジェント・ワークフロー、ロボティクス、およびデジタルツインなど、重要なイネーブリング・テクノロジー(実現技術)を統合できます。

新しい仕事の進め方を導入している: 先進的な企業は従業員に投資しており、最新の製造ソリューションをサポートするデジタル・スキルとテクノロジー・スキルを育成しています。

ビジネス成果を見据えてクラウドを活用している: 先進的な製造企業は、社内の財務チームを関与させることで、クラウドを活用した製造のイニシアチブを定量的な価値に結び付けています。

レポートをダウンロードして、これらの特徴の詳細をご確認ください。それぞれの特徴についてケース・スタディーがあり、実際の現場での成果を紹介しています。アクション・ガイドでは、クラウドの取り組みを進めて最新テクノロジーを変革のツールとして利用するための、3つのステップを示しています。

 

執筆・日本語翻訳監修


鈴木のり子
IBM Institute for Business Value、 グローバル・リサーチ・リーダー、 自動車・エレクトロニクス・エネルギー・ 公益事業担当

 


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発行日 2023年11月27日

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