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PowerHA SystemMirror for AIX V7.1.2 新機能/機能拡張の技術的ハイライト

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Abstract

2012年11月に提供されたPowerHA SystemMirror for AIX Standard Edition V7.1.2 (旧称HACMP for AIX, PowerHA for AIX, 以下、PowerHAと表記)の新機能および機能拡張につき、技術的観点から説明します。読者として、PowerHAの基礎的知識をお持ちで、その提案・設計・構築・運用に携わる方を対象にしています。
当テクニカル・フラッシュは、提案・設計にあたっての前提条件や考慮点等をすべて列挙したものではありません。提案・設計にあたっては、必ず製品発表レター、PowerHAマニュアル等をあらかじめ参照してください。
このテクニカルフラッシュは2013年3月1日に公開されたもので、情報はas-isとなっています。

Content

概要
PowerHA SystemMirror Standard Edition / Enterprise Edition V7.1.2 は、PowerHA SystemMirror V7.1 の新しいテクノロジー・レベル (TL2) の製品です。主な新機能/機能拡張や変更点は以下のとおりです。
  • PowerHA SystemMirror V7.1として、Standard Edition(SE)に加え、初のEnterprise Edition(EE)サポート
  • DS8800でのHyperSwapをサポート (EE)
  • リポジトリー・ディスクは共有しながら、2サイト構成に拡張された構成(拡張クラスター) (主にEE Hyperswap, SE クロスサイトLVMミラー用途)
  • 2サイトでそれぞれ独立したリポジトリー・ディスクをもち、サイト間でユニキャスト通信を行う構成(リンク・クラスター) (主にEE GLVM、EE PPRC)
  • IPv6のサポート (SE, EE)
  • IBM Systems Director グラフィック・インターフェースやプラグインの拡張 (主にEE)
前提
  • PowerHA SystemMirror V7.1.2 の前提
    AIX V7.1 TL2 SP01以上
    AIX V6.1 TL8 SP01以上
    PowerHA SystemMirror V7.1.2 SP01以上
※ いずれも安定性の観点で、SP0ではなく、SP01以上を推奨
PowerHA Enterprise Edition V7.1
PowerHA SystemMirror Enterprise Edition V7.1
これまでのPowerHA V7.1、V7.1.1ではEnterprise Editionは提供されていませんでしたが、PowerHA V7.1.2でEnterprise Editionが提供されるようになりました。PowerHA V6.1 Enterprise Editionの多くの機能は、PowerHA V7.1.2 Enterprise Editionでもご利用いただけます。
ストレージ複製管理機能とHyperSwapを使用する場合はPowerHA V7.1.2 Enterprise Edition が必要となります。
制約:
  • PowerHA V7.1.2 Enterprise Editionは、EMC SRDF、Hitachi TrueCopyやUniversal replication、HP Continuous Access Softwareを現時点ではサポートしていません。
  • XD_rs232ネットワークはサポートされなくなりました。XD_data、XD_ipは依然サポートされていますが、ネットワーク調整は無視されます。
拡張クラスター(Stretched Cluster)とリンク・クラスター(Linked Cluster):
AIX V7.1 TL02またはAIX V6.1 TL08以降、CAAがサイトを意識したクラスターを構成できるようになったことに伴い、PowerHA 7.1.0, 7.1.1ではできなかったサイト構成がPowerHA V7.1.2より可能になりました。
PowerHA V7.1.2でサイトを構築するには、PowerHA V6.1までのサイト構成とは異なり、サイト構成として拡張クラスターもしくはリンク・クラスターを選択して構成する必要があります。
サイト構成はEE固有機能ではなくSEでも利用可能であるため、拡張クラスターとリンク・クラスターの構成はPowerHA V7.1.2 SEでも可能です。
拡張クラスターとリンク・クラスターはそれぞれ以下の特徴があります。
  • 拡張クラスター:
    - 同一地域内でのクラスター構成を想定
    - サイト内でリポジトリー・ディスクを共有
    - サイト間のハートビートはマルチキャスト・ベース
    - ストレージ複製管理機能は非サポート
  • リンク・クラスター:
    - 異なる地域間でのクラスター構成を想定
    - 各サイトで個別のリポジトリー・ディスクを使用
    - サイト間のハートビートはユニキャスト・ベース
    - サイト内のハートビートはマルチキャスト・ベース
    - 通常のクラスターや拡張クラスターへの変更はできない
    - クロスサイトLVMミラーリング、HyperSwapを使用する場合はサイト間がSANで接続されていることが必要
分割&マージ・ポリシー(Split & Merge Policy):
PowerHA V7.1.2よりクラスター・パーティションが発生した際に分割またはマージされたクラスター・ノード群の挙動を決めるポリシーを選択できるようになりました。
分割&マージ・ポリシーは、PowerHA V7.1.2 SE、EEにおいて使用可能です。
分割ポリシー:
クラスター・パーティションが発生した際の挙動を決めるポリシーです。
挙動として、Noneまたはタイ・ブレーカーを選択できます。
  • None(デフォルト)
    - PowerHA V6.1までのポリシー
    - クラスター・パーティション発生時には何もしない
    - 分割されたクラスター・ノード群はその他のクラスター・ノードをダウンしていると認識する
  • タイ・ブレーカー
    - クラスター・パーティション発生時にタイ・ブレーカー・ディスクを獲得できなかったノード群は再起動される
    - タイ・ブレーカー・ディスクはSCSI-3永続リザーブをサポートし、全クラスター・ノードからアクセス可能であること
マージ・ポリシー:
クラスター・パーティションから復旧する際の挙動を決めるポリシーです。
挙動として、多数決またはタイ・ブレーカーを選択できます。
  • 多数決(デフォルト)
    - より多くのノードを持つクラスター・ノード群が生き残り、残りのノードは再起動される
    - クラスター・ノード群が持つノード数が同じ場合は最も小さいノードIDを持つノード(i.e.ノード名をアルファベット順にソートして先頭のノード)を含むクラスター・ノード群が生き残る
  • タイ・ブレーカー:
    - マージ時にタイ・ブレーカー・ディスクを獲得できなかったノード群は再起動される
PowerHA Hyperswap
PowerHA Hyperswapは、IBM System Storage DS8800とAIX、PowerHAの緊密な連携により、高度なストレージ筐体冗長化ソリューションを提供します。Metro Mirrorにより2台のDS8800間でデータを同期複製し、プライマリーのDS8800の計画保守の際にはSMITメニューから切り替えコマンドを実行することで、セカンダリーのDS8800へのアクセスに透過的に切り替えることができます。また、万が一、プライマリーのDS8800が利用不可になった場合にも、PowerHA Hyperswapは障害を検知し、自動的にセカンダリーのDS8800へのアクセスへと切り替え、業務継続性を向上させます。データセンター内での高度な可用性構成に加え、Metro Mirrorが可能な距離での災害対策にも利用可能です。
Metro Mirrorでデータを複製しているため、1つのディスク(hdisk)につき実体としては2つのLUNが存在しますが、PowerHA Hyperswapを利用することで、アプリケーションはあたかも1つのディスク(hdisk)であるかのように利用できます。ディスク(hdisk)のデバイス・ドライバー・レベルで冗長化機能を提供しているため、ディスクをraw diskとして利用する場合も、AIX LVMでボリューム・グループ(VG)/論理ボリューム(LV)/ファイル・システムを作成して利用する場合にもご利用いただけます。
前提:
  • PowerHA SystemMirror for AIX Enterprise Edition V7.1.2 SP01
  • IBM System Storage DS8800 (マイクロコード86.30.49.0以上)
    - DS8870、DS8700など、他のDS8000シリーズをご利用予定の場合は、営業ご担当者にサポートをご確認ください
対象データ領域:
PowerHA Hyperswapでは、ミラー・グループという管理単位でHyperswapディスクを管理しています。ミラー・グループには以下の3種類があり、ユーザー・アプリケーション用のデータ領域に加え、rootvgやページング・デバイスといったシステム用の領域、PowerHA(CAA)のためのリポジトリー・ディスクも、PowerHA Hyperswapの対象とすることができます。
  • ユーザー・ミラー・グループ
    - ユーザー・アプリケーション用のディスクを定義するミラー・グループ
    - AIX LVMのVGに使用しているディスクであっても、raw ディスクであってもよい
  • システム・ミラー・グループ
    -rootvg、ページング・デバイス等に使用されるディスクを定義するミラー・グループ
    -このディスクは、他ノードとは共有しない
  • クラスター・リポジトリー・ミラー・グループ
    - PowerHA(CAA)のリポジトリー・ディスクを定義するミラー・グループ
制限事項:
  • Virtual SCSIはサポートされていません (物理FibreChannelアダプターでの接続やVirtual Fibre(NPIV)はサポート)
  • SCSIリザーブはサポートされていません (当該ミラー・グループで、Hyperswapが有効化されている場合)
  • PowerHA Hyperswap側からの自動再同期操作はサポートされていません (障害復旧後は、ストレージ側の操作によりMetro Mirrorの再同期をする必要がある)
  • Live Partition Mobility(LPM)実施時は、影響を受けるすべてのミラー・グループについて、Hyperswapを無効化する必要があります
IPv6サポート
PowerHA V6.1はブート・アドレスを含めてIPv6をフル・サポートしていましたが、PowerHA V7.1.0ではPowerHAの基盤であるCAAがIPv6に未対応であったことから、サービス・アドレスや永続アドレスのみのIPv6対応となっていました。
CAAがIPv6に対応したことにより、PowerHA V7.1.2より再び、ブート・アドレスを含めてIPv6をフル・サポートします。
ネットワーク構成:
ネットワークのファミリーとサービス・アドレスや永続アドレスのファミリーは同じである必要はありません。IPv4ネットワークに対するIPv6サービス・アドレスの割り振り、もしくはその逆の割り振りが可能です。(PowerHA V6.1と同様)
単一のネットワーク・インターフェースによるデュアル・スタック構成の場合、それぞれ毎にネットワークの定義が可能です
両方のファミリーのマルチキャストパケットがハートビートに使用されます
IPv6 マルチキャスト・アドレス:
IPv6ネットワーク・ファミリーでは、IPv6のマルチキャスト・パケットがハートビートに使用されます。マルチキャスト・アドレスの指定はIPv4のみ可能です。IPv6マルチキャスト・アドレスは明示もしくは暗黙裏に指定されたIPv4マルチキャスト・アドレスから自動生成されます。
0xFF05と16進数表記のIPv4 アドレスをOR演算。例えばIPv4マルチキャスト・アドレスが 228.8.16.129 ならば、その16進表記の0xE4081081を用いて、0xFF05::E408:1081となる。
明示もしくは暗黙裏に指定されたIPv4マルチキャスト・アドレスが必要。
ハートビートを停止するには、ネットワークをPrivate属性とします。
なお、同じネットワーク・インターフェースを使用するIPv4, IPv6のデュアル・スタック構成では両方のマルチキャストが抑止されます。
IPv6構成:
デフォルトでは、IPv6 アドレスはリブート時に再構成されないため、再構成させるにはAIX起動時に autoconf6 コマンドを実行させる必要があります。
# smit _stauto6 -> Next System RESTART など
IPv6ブート・アドレス:
IPv6ブート・アドレスとして手動設定グローバル・アドレスを使用する場合、ndpd-host デーモンに起動時にグローバルIPアドレスを削除させない–g オプションをSRCに設定する必要があります。
# chssys -s ndpd-host -a –g
IPv6ブート・アドレスとしてリンク・ローカル・アドレスを使用する場合、各ノードは同一ローカル・ネットワークに接続される必要があります。また、/etc/hostsに対応するIPラベルが必要です。
NFSv3サポート:
IPv6上のNFSv3のサポートが追加されました。(PowerHA V6.1のIPv6サポートではNFSv4のみのサポート)
Smart Assist
Smart Assist によりIPv6のサービス・アドレス構成がサポートされました。
その他新機能
IBM Systems Director plug-in for PowerHA SystemMirrorの機能追加
IBM Systems Director plugin for PowerHA SystemMirrorは、機能強化を継続しています。V7.1.2では、以下の機能追加が行われました。
  • Enterprise Editionのサポート追加(サイト、リンク・クラスター/拡張クラスター、Hyperswap)
  • ストレージ複製(PowerHA SystemMirror for AIX Enterprise EditionV7.1.2)のサポート追加
  • LVMミラー・プールのサポート追加
  • ボリューム・グループ(VG)ウィザードの追加
  • フェデレーテッド・セキュリティ・ウィザードの追加
  • Capacity on Demand (CoD)サポートの追加
  • イベント管理の追加
  • 構成レポート管理の追加
なお、IBM Systems Director plugin for PowerHA SystemMirror V7.1.2は、IBM Systems Director V6.3.1との組み合わせでCertifyされています。IBM Systems Director plugin for PowerHA SystemMirror V7.1.2は、バージョン7.1.2以降のPowerHA SystemMirror server plug-inが導入されているIBM Systems Directorサーバーとのみ通信できます。
SAP Smart Assistの更新
Smart Assist for SAPが、NetWeaver V7.3 (Kernel 7.20)をサポートするようになりました。
Tips
PowerHA 7.1.2におけるリポジトリー・ディスク交換 (リポジトリー・レジリエンス機能)
PowerHA V7.1.2では、リポジトリー・ディスク交換時に交換対象ディスクをPick Listから選択するには、事前に交換対象ディスクを代替ディスクとして登録しておく必要があります。
# smit sysmirror -> Cluster Nodes and Networks (クラスター・ノードおよびネットワーク) -> Manage Repository Disks (リポジトリー・ディスクの管理) -> Add a Repository Disk (リポジトリー・ディスクの追加) (cm_add_repository_disk)
リポジトリー・ディスク交換のsmitメニューは、選択する表示名が若干変更されています。
PowerHA 7.1.1
# smit sysmirror -> Problem Determination Tools (問題判別ツール) -> Select a new Cluster repository disk (新規クラスター・リポジトリー・ディスクの選択) (cl_replace_repos_dialog)
PowerHA 7.1.2
# smit sysmirror -> Problem Determination Tools (問題判別ツール) -> Replace the Primary Repository Disk (1 次リポジトリー・ディスクの置換) (cl_replace_repository_nm)
リポジトリー・ディスクを交換した後にOSリストアを行った場合など、PowerHA定義上のリポジトリー・ディスクがAIXレベルで認識されていない様な状況においては、以下の手順が必要となります。
PowerHA SystemMirror > PowerHA SystemMirror 7.1 > Troubleshooting > Solving common problems > Disk and file system issues > Repository disks
Updating repository disk information

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Document Information

Modified date:
13 February 2023

UID

ibm16852135