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成長する葉、線グラフ、スライダーを示すイラスト

公開日:2023年12月10日
寄稿者:Alice Gomstyn, Alexandra Jonker

スマート農業とは何か

スマート農業とは、スマート・アグリカルチャーとも呼ばれる、農業生産における持続可能性を最適化および向上させるために、先進技術を導入し、データに基づいて農場を運営することです。スマート農業に使われる技術には、人工知能(AI)、自動化モノのインターネット (IoT)などがあります。

新しい技術や道具は長い間、農場の管理と食料の生産に不可欠なものでしたが、今日のスマート農業向けの技術の開発と導入は、差し迫った問題によって推進されています。その中で最も重要なのは食料の安全保障問題です。国際通貨基金によると、世界の人口増加に対応するためには、2050年までに食料の生産量を70%増やす必要があります。1

食料の安全保障問題を悪化させているのが気候変動です。作物の収量が悪影響を受け、灌漑用水などに利用可能な天然資源の不足が深刻になっています。これらの問題に加えて、農業セクターは、肥料などの投入資材のコスト上昇、コモディティーの価格変動、規制による要件の増大により、収益性の課題にも直面しています。

「スマート農業を通じて、気候変動がもたらす不確実性に柔軟に適応し、環境への影響を軽減し、農業生産の回復力を促進することができます。」

―国際標準化機構(ISO)2

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初期の農業では、人力、動物、単純な道具の使用を中心としていました。農業技術における特筆すべき進歩としては、1701年に種まきをより効率的に行うための条播機が発明されたこと、1800年代に蒸気機関を用いたトラクション・エンジンが脱穀に導入されたこと、1900年代初頭にガス動力トラクターが導入されたことなどが挙げられます。

農機の出現により、農業生産に必要な手作業が大幅に減少した一方で、データの収集と分析が可能になったことで、農家が作物や家畜の生産を最適化できるようになりました。「精密農業」と呼ばれる農場経営の歴史は、少なくとも1980年代初頭の「精密農業の父」として知られるピエール・ロバート博士の研究に遡ります。ロバート博士は、土壌のばらつきを研究し、作物の収量を最適化するために必要な栄養素のレベルは、圃場内の場所により異なるという考えに至りました。同氏の研究は、1つの圃場を異なるレベルで管理する農法の開発への道を開くことになりました。3

1990年代には、デジタル作物収量モニターの発明や、衛星を利用した全地球測位システム(GPS)の利用拡大により、農業ビジネスで使用される技術がさらに飛躍的に進歩した。収量モニターのデータとGPSマッピングを組み合わせることで、収量マッピングが可能になり、収穫時に作物の特性と品質に関する重要な情報がリアルタイムで提供されるようになりました。GPSはその後、農業技術におけるもう1つの大きな進歩である自動化の促進に役立ちました。自律走行する自動運転トラクターは、2000年代初頭に農機具メーカーJohn Deere社とNASAとのコラボレーションにより誕生しました。

 

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情報通信技術(ICT)

ICTは、米国立標準技術研究所によって定義に従って、データと情報の取得、保存、検索、処理、表示、表現、提示、組織化、管理、セキュリティー、転送、および交換を包みます。土壌の詳細から気象条件に至るまであらゆるデータの収集がスマート農業の重要な側面となっており、ICTは農家がそのデータを整理、転送するのに役立っています。

モノのインターネット(IoT)

モノのインターネット(IoT)とは、センサー、ソフトウェア、ネットワーク接続を備え、データの収集が可能な、物理的なデバイス、車両、アプライアンス、その他の物理的なオブジェクトからなるネットワークを指します。スマート農業の場合、接続されたIoTデバイスには、作物の監視、家畜の追跡、農機具の状態の観察などのための、「スマート・センサー」とも呼ばれるさまざまな種類のIoTセンサーが含まれます。LiDARを搭載した無人航空機(UAV)やドローンもまた、リモート・センシングによって農業データを収集します。

人工知能(AI)と機械学習

人工知能と機械学習は、農家がIoTイニシアチブに由来する「ビッグデータ」(大規模で複雑なデータ・セット)からインサイト(洞察)を抽出するのに役立ちます。意思決定およびスマート農業において、クラウドベースのAIソリューションや機械学習ソリューションによるデータ分析とモデリングによる情報を使用できます。例えば、機械学習を活用した予測分析、気象データ・セット、農業予測モデルは、農業業界が作物の生産、土地の利用、サプライチェーンの計画などの農業生産プロセスを管理するのに役立ちます。

自動化とロボティクス

自動化とロボティクスは、最新のスマート農業において非常に重要な役割を果たしています。農家は自律走行トラクターに加えて、種まき、収穫、剪定などの作業にロボットを活用しています。また、UAVは一般的にデータ収集に使用されますが、従来よりも効率的で正確な方法で肥料、殺虫剤、その他の農業資材を散布する目的で導入することもできます。特に、肥料をより正確かつ限定的に施用すると、環境に与える影響を減らすことになります。肥料は温室効果ガスの発生源として無視できないためです。

スマート農業の実践

農業セクターとテクノロジー・プロバイダーは、スマート農業技術とイノベーションによって農業のより良い未来の創造に貢献できます。ここでは、スマート農業の実践により農場の生産性が最適化された世界各地の例をご紹介します。

テキサス州では、スマートフォンのアプリと連動したセンサーが、水分量など土壌の状態をリアルタイムで収集しています。このアプリは、この情報を天気予報などの他のデータと組み合わせて、AIを活用した分析を行い、散水に関する推奨事項を導き出します。推奨事項は農家のモバイル・デバイスに送信され、干ばつや気候変動の影響を受ける地域で作物の生育を改善するために水資源を効率的に利用するのに役立っています。

効率的な水利用も大きな関心事であるカリフォルニア州では、あるワイナリーがクラウドベースのソリューションを導入し、天気予報や衛星からの画像、さらにブドウの木が曝されているストレスを測定するセンサーから情報を取り入れています。データを分析することで、個々のブドウの木のニーズに合わせた散水の推奨事項が得られます。このソリューションを導入して以来、収量は26%増加し、水の使用量は16%削減されました。

カザフスタンのアルマトイ地域では、5ヘクタールの「スマート温室」にIoTテクノロジーとAIが導入されています。これらの技術を利用して温室内の状態を監視し、必要に応じて温度、光、湿度、灌漑レベルを自動的に調整して、作物の生育に最適な環境を作り出しています。4

英国では、研究者らが酪農場の牛にセンサーを取り付け、歩数やエサを食べる時間、横になった時間などの牛の活動を追跡しました。一般的に、活動的な牛ほどポジティブな行動を示すことから、このような情報は酪農家の介入、つまり牛の環境を変えることが必要かどうかを判断する役に立ちます。環境を変えると牛の満足度が高まり、乳量が向上する傾向があるためです。5

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脚注

¹“Helping Feed the World’s Fast-Growing Population.”(ibm.com外部へのリンク)IMF Blog, Jan. 31, 2017.

²“Smart farming: the transformative potential of data-driven agriculture.“(ibm.comへの外部リンク)ISO.

³”The Evolution of Precision Agriculture and Policy Implications.”(ibm.com外部へのリンク)American Farm Bureau Federation, Aug. 23, 2023.

⁴”How a “smart” greenhouse helps Kazakh farmer grow vegetables all year round.”(ibm.com外部へのリンク)Food and Agriculture Organization of the United Nations, Aug. 2, 2023.

Robocow: Sensors attached to cattle giving farmers a head start on keeping them happy.”(ibm.com外部へのリンク)Yahoo News. Aug. 14, 2023.