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チャットボットを使用する人々のセンチメント分析の図

センチメント分析(感情分析)は、大量のテキストを分析して、それが肯定的、否定的、または中立的な感情を表現しているかを判断するプロセスです。

企業は、これまで以上に顧客に関するより多くのデータにアクセスできるようになりました。そして、利用可能な膨大な量のテキストデータを分析し、ビジネス上の意思決定を導くための有意義な洞察を抽出するという、機会と課題の両方に直面しています。

Eメールやネット上のつぶやき、オンラインアンケートの回答、カスタマー・サービス担当者とのチャット、レビューに至るまで、顧客の感情を測定するために利用できる情報源は無限にあるように思えます。センチメント分析システムは、企業による顧客のより深い理解や、より強力な顧客エクスペリエンスの提供、ブランド評価の向上に役立ちます。

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センチメント分析が重要な理由

かつてないほど人々がオンラインで感情を表現する方法が増えている今、企業は、自社や自社の製品・サービスについてどのような意見が出ているかをほぼリアルタイムで監視する強力なツールを求めています。テクノロジー・サービス産業協会の最近のレポートによると、企業がセンチメント分析を採用し、より多くの対話やインタラクションの分析に利用し始めると、カスタマージャーニーの各段階で顧客の摩擦ポイントを特定することが容易になるといいます。1

カスタマーレビューからより客観的な結果を得る

最新の人工知能(AI)センチメント分析ツールを使用すると、企業はレビューやネットプロモータースコア(NPS)をフィルタリングして個人的な偏見を排除し、自社のブランド、製品、サービスについてより客観的な意見を得ることができます。たとえば、ある顧客がレビューで肯定的な意見とともに否定的な意見を表明した場合、レビューを評価する人間は、肯定的な言葉にたどり着く前に否定的な意見に分類してしまう可能性があります。AI によって強化されたセンチメント分類は客観的な方法でテキストを並べ替えて分類するため、このようなことが起こらず、両方のセンチメントが反映されます。 

Business Intelligenceプログラムの拡張性を高める

センチメント分析を使用すると、膨大な量の非構造化データを保有する企業が、そのデータを分析し、そこから有意義な洞察を迅速かつ効率的に抽出できるようになります。デジタルチャネル全体で顧客によって生成されるテキストの量が増えると、人間のチームは情報に圧倒されてしまいがちです。AIで強化された強力なクラウドベースの顧客センチメント分析ツールにより、組織は不要なリソースを費やすことなく、顧客データからBusiness Intelligenceを大規模に提供できます。

リアルタイムでブランドの評判をモニタリング

現代の企業は、危機に際して迅速に対応する必要があります。ソーシャルメディアに投稿された意見は、真実かどうかにかかわらず、何年もかけて築き上げたブランドの評判を台無しにする可能性があります。AIを活用した強固なセンチメント分析ツールにより、経営幹部はブランドを取り巻く全体的なセンチメントを監視し、潜在的な問題を発見して迅速に対処することができます。

センチメント分析の仕組み

センチメント分析は 自然言語処理(NLP)機械学習(ML)テクノロジーを使って、人間と同じような方法でテキストを分析・解釈するようコンピューターソフトウェアをトレーニングします。このソフトウェアは、ルールベースまたはMLの2つのアプローチのうちのいずれか、またはハイブリッドとして知られるこの2つの組み合わせを使用します。それぞれのアプローチには長所と短所があります。ルールベースのアプローチはほぼリアルタイムで結果を提供できますが、MLベースのアプローチは適応性が高く、通常、より複雑なシナリオを処理できます。

ルールベースのセンチメント分析

ルールベースのアプローチでは、作成者の意図を説明する単語のグループまたは語彙に基づいて、テキストのブロック内の特定のキーワードを分類するようソフトウェアをトレーニングします。たとえば、肯定的な語彙には「手頃な価格」、「速い」、「よくできている」などの単語がある一方、否定的な語彙として「高価」、「遅い」、「品質が悪い」となどが挙げられます。次に、ソフトウェアは肯定的または否定的な辞書内の単語の分類子をスキャンし、使用された単語の量と各カテゴリのセンチメントスコアに基づいてセンチメントスコアの合計を集計します。

機械学習のセンチメント分析

機械学習(ML)アプローチでは、テキストに現れる単語とその順序を使用して、テキストブロックのセンチメントを測定するソフトウェアをトレーニングするためにアルゴリズムが使用されます。開発者はセンチメント分析アルゴリズムを使って、人間が行うのと同じようにテキスト中の感情を識別する方法をソフトウェアに教えます。MLのモデルは、与えられたデータから「学習」し続けるため、「機械学習」と呼ばれています。ここでは、最も一般的に使用されている分類アルゴリズムをいくつか紹介します。

  • 線形回帰:一連の特徴(X)に基づいて値(Y)を記述する統計アルゴリズム。

  • ナイーブ・ベイズ: ベイズの定理を使用してテキストのブロック内の単語を分類するアルゴリズム。

  • サポート・ベクター・マシン:2グループ分類問題を解決するために使用される、高速かつ効率的な分類アルゴリズム。

  • ディープラーニング(DL):人工ニューラル・ネットワークとしても知られるディープラーニングは、複数のアルゴリズムをリンクして人間の脳機能を模倣する高度な機械学習技術です。

ハイブリッドアプローチ

テキスト分析へのハイブリッドアプローチでは、MLとルールベースの機能の両方を組み合わせて、精度と速度を最適化します。精度は高いものの、時間や技術力など、他の2つの方法よりも多くのリソースを必要とします。

センチメント分析の種類

センチメント分析ツールの構築に使用されるさまざまなアプローチに加えて、組織がニーズに応じて利用するさまざまな種類のセンチメント分析もあります。最も一般的な3つのタイプである感情ベース、詳細分析、アスペクトベースの感情分析(ABSA)はすべて、極性と呼ばれるもの、つまりテキストによって伝えられる全体的な感情を測定する基礎となるソフトウェアの能力に依存しています。

一般的に、テキストの極性はポジティブ、ネガティブ、ニュートラルのいずれかであると言えますが、例えば「極めてポジティブ」「極めてネガティブ」といったサブグループにさらに分類することで、より微妙で複雑な感情を識別できるセンチメント分析モデルもあります。テキストの極性は、テキストの感情を測定するための最も一般的に使用される指標であり、ソフトウェアによって1から100までの数値評価として表現されます。0は中立的な感情を、100は最も極端な感情を表します。

ここでは、最も広く使用されている3種類のセンチメント分析を紹介します。

きめ細かい(段階的)

きめ細かい、または段階的なセンチメント分析は、テキストを異なる感情と表現されている感情のレベルにグループ化するセンチメント分析の一種です。感情は0から100の範囲で評価されますが、これは消費者のWebサイトが顧客満足度を測定するために星評価を展開する方法に似ています。

アスペクトベース(ABSA)

アスペクト・ベースのセンチメント分析(ABSA)は、テキスト本文の調査対象を、企業が分析したい製品、サービス、顧客体験の単一の側面に絞り込みます。たとえば格安旅行アプリの場合、新しいユーザーインターフェイスがどれほど直観的であるか把握したり、顧客サービスチャットボットの有効性を評価したりするためにABSAを使用する可能性があります。ABSAのおかげで、組織は自社の製品がどのように成功しているか、または顧客の期待を下回っているかを、より理解することができます。

感情の検出

感情検出センチメント分析は、テキストを書いたときの心境や意図など、テキストの背後にある個人の心理状態を理解しようとするものです。これは、きめ細かいセンチメント分析またはABSAよりも複雑で、通常、人の動機や感情状態をより深く理解するために使用されます。感情検出では、ポジティブ、ネガティブ、ニュートラルなどの極性を使用するのではなく、イライラ、無関心、落ち着きのなさ、ショックなど、テキスト本文内の特定の感情を識別できます。

センチメント分析のユースケース

組織がセンチメント分析を行う理由はさまざまです。ここでは、最も一般的なユースケースをいくつか紹介します。 

カスタマー・サポートの向上

サポートチームはセンチメント分析を使用して、対話の雰囲気を正確に反映しつつ、よりパーソナライズされた応答を顧客に提供します。センチメント分析を使用するAIベースのチャットボットは、迅速にエスカレーションが必要な問題を発見し、緊急の対応が必要な顧客に優先順位をつけることができます。カスタマー・サポート・フォーラムに導入されたMLアルゴリズムは、緊急度によるトピックのランク付けをサポートし、特定の製品や機能に対する不満を示す顧客のフィードバックを特定することもできます。これらの機能は、カスタマー・サポートチームがリクエストをより迅速かつ効率的に処理し、顧客体験を向上させるのに役立ちます。

ブランドプレゼンスの強化

センチメント分析を使ってソーシャルメディア・モニタリングを行うことで、ブランドはオンライン上で自社がどのように言われているのか、そしてその理由をより深く理解することができます。たとえば、新製品の発売は順調に進んでいますか?売上のモニタリングは状況を把握する手段の1つですが、関係者は全体像の一部しか把握できません。カスタマーレビューサイトやソーシャルメディアでセンチメント分析を使用して製品について表現されている感情を特定すると、その製品が顧客にどのように浸透するかをより深く理解できるようになります。

市場調査の実施

自社の製品だけでなく市場全般にセンチメント分析ツールを導入することで、組織は傾向を把握し、新たな成長の機会を特定することができます。競合他社の新しいキャンペーンが思ったように視聴者にささっていないのかもしれませんし、著名人がソーシャルメディアへの投稿である製品を使用したことで需要が高まっているのかもしれません。センチメント分析ツールは、ニュース記事、オンラインレビュー、ソーシャルメディアプラットフォームの傾向を特定し、意思決定者が行動を取れるようリアルタイムでお知らせします。

センチメント分析の課題

感情分析とそれを支えるテクノロジーは急速に成長していますが、まだ比較的新しい分野です。Liu Bing(2020)の著書「Sentiment Analysis(センチメント分析)」によると、この用語が広く使われるようになったのは2003年以降です。2まだ学ぶべきことや改善すべきことがたくさんありますが、センチメント分析における最も一般的な欠点と課題をいくつか紹介します。

コンテキストの欠如

コンテキストは、テキストブロックでどのような感情が表現されているかを理解するための重要な要素であり、センチメント分析ツールが頻繁に間違いを引き起こす原因となります。たとえば、顧客アンケートで、顧客は「当社のアプリのどこが気に入りましたか?」という質問に2つの回答をするとします。最初の答えは「機能性」で、2番目の答えは「UX」かもしれません。もし、「私たちのアプリのどこが気に入らなかったのですか?」というように、尋ねる質問が変われば、言葉そのものを変えなくても、顧客の回答の意味が変わってしまいます。この問題を修正するには、顧客が回答していた質問の元のコンテキストをアルゴリズムに与える必要があります。これは前処理または後処理として知られている時間のかかる戦術です。

皮肉や嫌味の使用

トレーニングのレベルや程度に関係なく、ソフトウェアが文章中の皮肉や嫌味を正しく識別するのは難しいことです。なぜなら、皮肉や嫌味を言う場合は声のトーンや表情で伝わることが多く、使用している言葉の中に識別できる違いがまったくないからです。たとえば、「素晴らしい、また1000ドルの駐車違反切符。ちょうど必要だったんだよね」というフレーズを分析する場合、センチメント分析ツールは「素晴らしい」という言葉を使用しているため、表現されている感情の性質を間違え、この文章を「肯定的」だと判断する可能性があります。

否定

否定とは、文内の意味の逆転を伝えるために否定的な単語が使用されることです。たとえば、「その靴が安いとは言えません」という文を考えてみましょう。ここで表現されているのは、その靴はおそらく高価か、少なくとも中程度の価格だったということですが、センチメント分析ツールではこの微妙な点を見逃してしまう可能性があります。

慣用句

たとえば、「Let’s not beat around the bush(単刀直入に言ってください)」や「Break a leg(幸運を祈る)など、一般的な英語のフレーズを使用した慣用句は、センチメント分析ツールやそのツールが構築されているMLアルゴリズムを混乱させることがよくあります。上記のような普段の会話で使われるフレーズがソーシャルメディアチャンネルや製品レビューで使用されると、センチメント分析ツールはそれを誤って認識するか、あるいは完全に見逃してしまいます。例えば「break a leg(幸運を祈る)」の例では、痛みを伴うもの、あるいは悲しいものとして誤って認識する可能性があります。

オープンソースとサービスとしてのソフトウェア(SaaS)感情分析ツールの比較

顧客をよりよく理解するためにセンチメント分析を導入したいと考えた組織には、既存のツールを購入するか、独自に構築するかの2つの選択肢があります。

独自のツールを構築することを選択した企業は通常、PythonやJavaなどの一般的なコーディング言語のオープンソースライブラリを使用します。これらのライブラリが有用なのは、そのコミュニティがデータサイエンスに精通しているからです。それでも、このアプローチを採用しようとしている組織は、エンジニアとデータサイエンティストのチームを雇用するためにかなりの投資を行う必要があります。

既存のSaaS(Software as a Service)センチメント分析ツールを利用することで、初期投資が少なくて済み、ゼロからモデルを作成するのではなく、事前にトレーニングされた機械学習モデルを導入することができます。SaaS型センチメント分析ツールは、いくつかの簡単な手順で稼働させることができるため、自社ツールを構築するための投資を行う準備ができていない企業にとって良い選択肢と言えますす。

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脚注

1 "「The Current and Future State of Sentiment Analysis(センチメント分析の現状と将来)」(ibm.com外)、 Ragsdale、John and Bose、Ashimendu、テクノロジー・サービス産業協会(2022年10月4日)

2 「Sentiment Analysis(センチメント分析)(第二版)」(ibm.com外部リンク)、Liu、Bing、Cambridge University Press(2022年9月23日)