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ソフトウェア配信モデルとしてのSaaSが、Webブラウザー経由でクラウド・コンピューティングのメリットをもたらす仕組みを示す図
SaaSとは

SaaS(Software-as-a-Service)とは、クラウド上でホストされ、インターネット接続を介してWebブラウザー、モバイル・アプリ、またはシン・クライアントの形式で使用されるアプリケーション・ソフトウェアです。

SaaSプロバイダーは、ソフトウェアおよびそれが実行されるインフラストラクチャーの運用、管理、保守を担います。顧客はただ、アカウントを作成し、料金を支払うだけで、業務を開始できます。

業界の歴史に詳しい専門家の一部は、SaaSの起源を、メインフレーム上で実行されるアプリケーションがリモート端末に配信された1950年代までさかのぼります。しかし、今日知られているSaaSが生まれたのは、Salesforce社が、Webブラウザーに配信されるクラウド・ホスト型ソフトウェアとして顧客関係管理(CRM)システムをリリースした1999年です。

現在、SaaSは最も一般的なパブリッククラウド・コンピューティング・サービスであり、ソフトウェアの主要な配信形態となっています。Slack(メッセージ送信)やDropbox(ファイルの保存と共有)などの日常的なツールから、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)や人事またはワークフォース最適化プラットフォームなどのコア・ビジネス・アプリケーションまで、従業員が使用するソフトウェアの多くは、SaaSモデルを介して提供されます。

オンプレミスでインストールされる従来のソフトウェアと比較して、SaaSは、スタートアップ企業から巨大なグローバル組織まで、あらゆる規模の企業に、価値実現までの時間の短縮、管理コストの低さ、コストの予測可能性というメリットをもたらします。

SaaSへの支持は高まるいっぽうです。業界アナリストのGartner社は、2022年末までに全世界のSaaSソフトウェア売上が1,450億米ドルを超えると予測しました(リンク先はibm.com外)。また、別のアナリストであるInternational Data Corporation(IDC)社は、2025年までに全世界のSaaS市場が3,021億米ドルに成長すると予測しています(リンク先はibm.com外)。

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SaaSの仕組み

SaaSは、クラウド・コンピューティング・インフラストラクチャーを活用し、規模の経済を働かせることで、顧客にとってのソフトウェアの導入、使用、支払い方法をさらに合理化します。あらゆるSaaSアプリケーションには、次の共通の特徴があります。

SaaSアプリケーションは、クラウド上でホストされるように構築されています。SaaSソフトウェア・ベンダーは、独自のクラウド・インフラストラクチャー上でアプリケーションをホストすることも、クラウド・サービス・プロバイダー(Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、IBM Cloud、Microsoft Azureなど)を利用してアプリケーションをホストすることもできます。 定評のあるクラウド・サービス・プロバイダーでホスティングすることで、SaaSプロバイダーは、拡張性とグローバルなアクセス性という一部の顧客のニーズに応えられるようになります。

SaaSアプリケーションには、インターネット接続とインターネットに接続されたユーザー・デバイス(コンピューター、携帯電話、タブレットなど)がある限り、どのような顧客でもアクセスできます。SaaSアプリケーションは通常、任意のWebブラウザーで実行されます。モバイル端末では、モバイル・アプリやタブレット・アプリを使用することで、SaaSアプリケーションをより効果的に実行できます(それらのアプリが必須である場合もあります)。 Adobe Acrobatなどの一部のSaaSアプリケーションでは、ユーザーがダウンロードしてコンピューターにインストールする専用のシン・クライアントが用意されています(必須である場合もあります)。

SaaSアプリケーションはマルチテナント・アーキテクチャーを使用しており、すべての顧客がアプリケーションの単一のインスタンスを共有します。セキュリティーとデータ・プライバシーの観点から、各顧客のアプリケーション・データ、ユーザー・データ、システム・データ、カスタム構成は他の顧客のものから分離されています。

最も重要なのは、SaaSアプリケーションは、顧客による管理やメンテナンスをほとんど必要としないということです。SaaSベンダーの担当範囲は次のとおりです。

  • アプリケーションの実行に必要なすべてのサーバー、ネットワーク機器、ストレージ・ハードウェア、オペレーティング・ソフトウェアのプロビジョニング、管理、および保守。
  • 必要に応じた機能修正やセキュリティ・パッチの適用。
  • 負荷分散、冗長インフラストラクチャー、データのバックアップ、クラウド・セキュリティー、災害復旧サービスを提供して、機能停止を防ぎ、サービス・レベル・アグリーメント(SLA)に明記されたパフォーマンス、可用性、およびデータ保護の基準を満たすこと。

多くのSaaSベンダーは、自社のSaaSアプリケーションを顧客が他のSaaSまたは従来のソフトウェア・アプリケーションと統合できる、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)も提供しています。

SaaS 価格設定

SaaSアプリケーションは、多種多様なサブスクリプション料金体系で提供されており、いずれの体系も、単一または数種類の固定価格で一定期間ソフトウェアおよび関連サービスにアクセスできるようになる従来のソフトウェア・ライセンシングとは異なります。

無料または「フリーミアム」の料金体系

ほとんどのSaaSベンダーは、顧客が短期間(通常は1週間または1カ月)試用できる無料版ソフトウェアを用意しています。通常、こうした無料トライアルではソフトウェアのすべての機能にアクセスできますが、それらの機能を使用できる回数や範囲が制限されており、クレジットカードを必要としないものもあります

一部のSaaS企業は、自社アプリケーションの「フリーミアム」バージョンを提供しています。このバージョンは常に無料で、すべての製品機能のうち便利な機能だけに使用が限定されている、または機能面での制限はないが、表示された広告をユーザーがクリックしなければ作業を続けられないというものです。SaaSプロバイダーの狙いは、フリーミアム版のユーザーがゆくゆくは有料版のソフトウェアに移行することです。

月額または年額の段階的なサブスクリプション料金体系

中小企業向けのSaaS製品では通常、機能セットまたは使用レベルに基づいて定められる、段階的な料金体系が採用されています。例えば、Eメールのマーケティング・ソリューションを提供するSaaSの場合、最大5,000件の連絡先に対応する「標準」版が月額250ドル、最大20,000件の連絡先に対応する「プロ」版が月額500ドル、100,000件の連絡先に対応し、さらにランディング・ページのデザインとホスティングを行う「ビジネス」版が月額600ドル、といった料金体系が考えられます。

大企業向けには、SaaSベンダーは、より詳細な機能選択、優先サポート、特別なSLA条件に加え、料金体系の交渉が可能となる「エンタープライズ」版を用意しています。

段階的な料金体系により、顧客は必要な機能と予算に応じて最適なプランを選択でき、次の段階に移行することも、拡張性の実現も簡単です。ほとんどの段階型サブスクリプション料金体系では、年払いの顧客には割引が提供され、サブスクリプションの途中で異なる段階に移行する顧客には、日割りで料金の調整がなされます。

SaaSのメリット

SaaSのメリットや有利な点は、従来のソフトウェア(オンプレミスのインフラストラクチャー上でインストールおよび管理されるソフトウェア)と比較することで最もよく理解できます。

  • SaaSは、より速く、即座にでも導入することができ、利益を得るまでの時間を短縮する。顧客は、最小限の初期費用(基本的には初月のサブスクリプション費用)で、SaaSアプリケーションを購入してすぐに、場合によっては数分で使用を開始できます。従来のソフトウェアでは、サーバーの購入とプロビジョニング、すべてのユーザー・デバイスへのソフトウェアのインストール、すべてのユーザー分のフル・ライセンスの予算編成および購入が必要になる場合があります。
  • SaaSでは、新しい機能やバージョンにリリース後すぐにアクセスできる。SaaSプロバイダーは多くの場合、週に数回ほど、顧客が気付きもしないうちに、機能のアップグレードや追加を行っています。加えて、顧客の作業を中断することなく、インターフェースやユーザー・エクスペリエンスをアップグレードすることもできます。従来のオンプレミスのソフトウェアでは、定期的なアップグレードには多額の費用がかかることが多く、さらに、新しいバージョンの機能がリリースされるまで時には何ヶ月も待たねばならないほど、顧客の業務に影響を与えていました(一部のアップグレードを任意で完全にスキップする場合を除く)。
  • SaaSは、費用対効果の高いオンデマンドの拡張性を実現する。顧客は、料金体系内でのアップグレードやダウングレード、または容量の追加購入のみで、必要に応じてSaaSアプリケーションを拡張または縮小できます。従来のソフトウェアでは、使用量の急増を見越して容量を多めに購入する必要がありましたが、余分な容量は必要になる時まで活用されず、無駄になっていました。
  • SaaSのコストは予測可能であり、諸経費が劇的に削減される。SaaSでは、ソフトウェアを実行するインフラストラクチャー、定期的なソフトウェアのアップグレードとそれらに必要なインフラストラクチャーの予算が不要となります。さらに、最も重要なところですが、社内のITスタッフでソフトウェアのインストール、アップグレード、保守を行うための予算を立てる必要はありません。支払う金額のほぼすべては、ソフトウェアを使用するための直接的な経費となります。

潜在的な課題

SaaSには利点がありますが、顧客、特に企業顧客が認識しておくべき潜在的なリスクや課題もあります。

簡単に使用を開始できるため、ITスタッフが関知しないうちに、組織内でその数が急増する可能性があります。「シャドーIT」と呼ばれるこの現象は、セキュリティー上のリスクをもたらす可能性があります。まずもって、ITスタッフは、ユーザーがどのソフトウェアを使用しているかを知らなければ、そのソフトウェアの安全性を保証できません。

その結果、同じパスワードをさらに多くのアプリケーションで使用するなど、既存のセキュリティ上の悪習慣がシャドーITによって悪化し、攻撃者に対する組織全体の脆弱性を高めることにもなりかねません。

もうひとつの潜在的なリスクは、ベンダー・ロックイン、つまり現在のベンダーのアプリケーションがパフォーマンス、機能、またはビジネスに関する顧客の要件を満たさなくなった場合に、別のSaaSベンダーに移行することが困難になることです。例えば、SaaSアプリケーションが独自のビジネス・ロジックや独自のテクノロジー・スタックに依存している場合、多くのものと引き換えにしなければ、そのSaaSアプリケーションから別のSaaSアプリケーションに移行することが困難または不可能となりかねません。

SaaS、PaaS、IaaSの比較

SaaS、PaaS、IaaSは、クラウド・サービス・プロバイダーが提供する3つの主要な「as-a-Service」型のコンピューティング・モデルです。各モデルは異なる種類のクラウド・コンピューテングの顧客に訴求力を持ち、クラウド・サービス・プロバイダーに任せるIT管理の程度も異なります。

上記で詳しく説明したように、SaaSは、既成のクラウド・ホスト型ソフトウェア・アプリケーションを購入し、インターネット接続経由で使用したい顧客に向けたものです。SaaSでは、ソフトウェア開発とインフラストラクチャー管理のすべてをクラウド・サービス・プロバイダーに委託します。

PaaS(Platform-as-a-Service)は、独自のアプリケーションを開発する顧客向けに、インターネット接続経由で、フルマネージドの完全なクラウド・ホスト型プラットフォーム(ハードウェア、ソフトウェア、開発ツール、インフラストラクチャー)を提供するものです。PaaSを使用すると、ソフトウェア開発チームは、独自のプラットフォームをオンプレミスで構築して管理する場合と比べて、迅速かつ低コストでアプリケーションを構築、テスト、展開、実行、更新、拡張できます。

IaaS(Infrastructure-as-a-Service)は、クラウド・ホスト型のコンピューティング、ネットワーク、ストレージのリソースへのオンデマンド・アクセスを従量課金制で提供します。IaaSは、アプリケーションとプラットフォームを社内でコントロールしつつも、必要に応じてインフラストラクチャー・リソースを拡張・縮小するお客様に向けたものです。変動の激しいワークロードや「スパイク」の多いワークロードに対応できるオンプレミス・データセンターの構築と管理に高額な費用を支払う必要はありません。

IaaS、PaaS、SaaSの違いについて詳細はこちら
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参考情報 IaaS、PaaS、SaaSの比較

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