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顧客サービスにおけるオムニチャネル業務のメリットと課題、およびお客様のアプローチを確実に成功させるための戦略についてご説明します。
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オムニチャネル顧客サービスとは

オムニチャネル顧客サービスとは、お客様をデバイスとタッチポイントのシームレスで統合されたネットワーク全体にわたって支援およびアドバイスをすることです。 堅牢なオムニチャネル顧客サービスを使用した企業は、通信チャネルに関わらず、顧客に対して一貫して優れたエクスペリエンスを維持できます。

デジタル・チャネルと新規の通信テクノロジーが成長したことにより、企業はオムニチャネル・アプローチを顧客サポートに導入できるようになりました。 それにより企業は、コール・センター、Webチャット、SMS、メッセージング、Eメールおよびメディアなど、複数のチャネル全体にわたるやり取りを管理できます。 たとえば、顧客サポートの会話はTwitterで始まり、その後テキスト・メッセージで続けられ、最後は電話で話して終了する場合もあります。それらすべてが、シームレスにつながるエクスペリエンスになります。 顧客は、相談している問題について、それぞれのチャネルでやり取りをする度に中断して説明する必要はありません。

テクノロジーの進歩に伴い、顧客の期待も変化しています。 Forrester社が実施した最近の調査では、2022年までにデジタル・タッチポイントは、米国の小売売上額の57%以上に影響を及ぼすことになっています。 今日のお客様は、店舗内の効率的なやり取りと、チャネルを問わずシームレスなエクスペリエンス、および注文と受け取りに関する迅速な通知を期待しています。

さらに新型コロナウイルス感染症は、さまざまな業界にわたってデジタルへのシフトを加速させました。 ビジネスの似ているB2BとB2Cは、流動性の高い顧客サポートと顧客エクスペリエンスを提供するために、サイロ化した販売アプローチおよび複雑な購入動態の更新を余儀なくされてきました1

オムニチャネル・顧客エクスペリエンスを成功させるメリット

優れた顧客エクスペリエンスは、高品質な顧客サービスの中核にあります。 お客様がお好みのチャネルにアクセスできること、および一貫性のある購入エクスペリエンスを受られることは、オムニチャネル顧客サポートの核心です。

結果として得られるメリットとは:

  • お客様のロイヤルティーの向上:オムニチャネル顧客エクスペリエンスは、スピード、利便性、透明性、および信頼性を生み出します。 シームレスにやり取りを行うことで、組織はお客様に対して、組織が顧客第一であること、および時代遅れの販売手法からより円滑な包括的プロセスに移行済みであることを示すことができます。

  • お好みの購入オプションの提供:オムニチャネル・アプローチは、お客様にセルフ・サービスの購入オプションを提供することで、増大するニーズに対応できるより多くの機会を創出します1。 これにより、販売担当者およびお客様とやり取りをする専門家は、時間が空くことになるため、今度はコンサルティングのパートナーとして、お客様がより深く検討して購入するために、さらに適切なサービスを提供できるようになります。

  • 収益拡大の加速化:オムニチャネル顧客エクスペリエンスは、購入者の必要に応じて、購入者が従来の販売手段を取らずに購入手続きにアクセスできるようにします。 購入の障壁を取り除き、透明でアクセスに途切れのないエクスペリエンスを提供することで、利益は拡大し、顧客満足は向上します1

  • 新規チャネルをより迅速に革新および活性化:現在オムニチャネル・エクスペリエンスを確立している企業は、新規チャネルの設計および活性化において競争上の優位性を持つことになります。 確立されたオムニチャネルは、新規チャネルを導入するためのフレームワークのように機能することができます。 顧客エクスペリエンスおよびやり取りがすでにシームレスである場合は、ゼロから始めるよりも、追加のチャネルを採用する方が簡単になります。

顧客サービスに関して言えば、お客様は、すべてのタッチポイントを通じて単一ブランドのエクスペリエンスを期待しています。 オムニチャネル・アプローチによって企業は、お客様サービスに次のようなメリットを追加することができます。

  • お客様データとデジタル・ツールを使用して顧客サービスを合理化:最近のForrester社のレポートによると、米国および英国の成人のオンライン購入者の38%が、質の良い顧客サービスを提供している場合は、かつて購入したことのある小売業者から購入したいと考えていました2。 データを使用する顧客サービス・ツールの例として、インテリジェント経路指定が挙げられます。 このサービスは、顧客のデータを収集し、そのデータを顧客を最も適切なサポートができるコール・センターのエージェントにつなげるために使用します。 そのデータおよびこれらの種類のデジタル・ツールを使用することによってエージェントは、顧客のジャーニーをより適切に理解することができるため、エージェントの生産性を向上させ、パーソナライズされたエクスペリエンスとソリューションを提供することができるようになります。

  • カスタマイズされたエクスペリエンス:機械学習などの、パーソナライゼーション・テクノロジーに投資することで、顧客の好みに関する洞察を活用する小売店と卸売業者が増加しています。 たとえば、機械学習は、位置情報や購入履歴などの顧客データに基づき、固有のWebページのレイアウトを作成できます。 この種のカスタマイズは、収益の増加につながることが証明されています2

  • 顧客データに製品情報をつなげることによる、新たな価値の創出:顧客サービスは、購入ジャーニーにいるお客様のニーズに応えるだけにとどまりません。 それには、お客様のニーズを予測することも含まれています。 デバイスと購入者のデータをつなげることにより、企業は、顧客のニーズに応えるためにサービスを開発できるようになります。 お客様を理解し、彼らのニーズを満たすことで、顧客維持率も向上します。
オムニチャネル・サービスの成熟度に対する評価

オムニチャネル顧客サービスを成功させることは、購入者の満足度と購入者の維持率のためには不可欠となります。 デジタルおよび対面のタッチポイント全体にわたり、継続性が保証されていない企業は、それを保証する競合他社に顧客を取られてしまうリスクを負うことになります2

Forrester社の「The Omnichannel Maturity Assessment」によると、オムニチャネル・システムの成功度を測る指標として、3つの点が挙げられています。

  1. デジタル顧客エクスペリエンス(DCX):お客様のやり取りは店舗および複数のデバイスを介してデジタル上で発生するため、企業は時間をかけてあらゆる取引にわたる顧客エクスペリエンスを評価する必要があります。 特に、ディジタル上の顧客エクスペリエンスは、ますます重要になっています。 最近の調査によると、米国の成人の3分の1では、店舗の在庫をオンラインで参照できない場合に店舗に行く可能性が低くなっています。 さらに、48%が、オフラインで購入する前に、製品の入手可能性に関する調べると答えています3。 利便性とショッピング・エクスペリエンスは、消費者の原動力になります。 在庫管理は課題になりますが、一方で企業は、購入が発生する前に、顧客をデジタル上で魅了できるようなテクノロジーとツールについて調べる必要があります。

  2. デジタル業務エクスペリエンス(DOX):顧客の需要と新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響を受け、小売業者の69%がBOPIS(オンラインで購入して店舗にて受け取り)を実施していたことが報告されました3。 BOPISの物流管理が適切に組織化されていなければ、質の低い顧客サービスおよび顧客を損失する結果につながることもあります。 DOXを評価する場合は、スタッフのトレーニングも含めて、人材とプロセスを管理および最適化することに焦点を当ることで、オムニチャネル・プログラムを適切に実行する必要があります。

  3. オムニチャネル顧客エンゲージメント:Forrester社が実施した調査によると、米国の成人のオンライン購入者の内、52%が店舗で買い物をしている間に、製品情報を自身のデバイスを使用して調べることを好むことが分かりました3。 したがって企業は、動的なチャネル環境に顧客をどのように引き込み、コンテキストとパーソナライゼーションを提供するテクノロジーやアプリを、直接のショッピング・エクスペリエンスにつなげるために、どのように提供するのかについて評価する必要があります。
オムニチャネル顧客サービスの戦略

お客様のオムニチャネル・システムの評価は、機能している内容および改善が求められる箇所を確立するために必要となります。 戦略を立てることによって企業は、オムニチャネル顧客サービスの次のステップについて計画を練ることができます。

戦略を考える際には、顧客の期待と行動を理解することが重要になります。 顧客が必要としているのは効率性や利便性のみではなく、エンゲージメント全体を管理できることも求められています。 さらに、顧客行動はテクノロジーとともに変化しています。 多くの顧客が、複数のチャネルとデバイスを通じたデジタルのショッピング・エクスペリエンスを始めています。

ビジネスは、顧客の要求を満たすために必要な変化に、取り組まなければなりません。 これらの変化には、在庫管理、従業員のトレーニング、および顧客対応型から顧客主導型に変革を行うことが含まれます。

オムニチャネル顧客サービスの改善に向けた戦略には、次の戦術を含めることができます。

  • 顧客ジャーニー全体の活用:オムニチャネル業務が完全に機能する期間は、顧客のライフサイクル全体にわたります。その範囲は、フルフィルメント、取得とエンゲージメント、在庫と注文管理、および顧客サービスの枠を超えて広がります。 企業は、顧客ジャーニー全体を活用する場合、コストの節約、業務の効率化、および顧客との関係向上を実現することができます。

  • シームレスなオムニチャネル・エクスペリエンスの提供:Gartner社の調査によると、2021年末までにB2B営業は、デジタル・ファーストになる可能性が高くなっています4。4。 デジタル・ファーストになることは、デジタル以外のチャネルを無視することではありません。 たとえば、サポート担当者、営業チーム、およびその他の業務を行う支店は、互いに分断されて存在するべきではありません。 その代わり戦略では、Webサイト、直販、およびコンタクト・センターが連携することで一貫性のある顧客サービス・エクスペリエンスを作り出すような、チャネル数を少なくしたエクスペリエンスを実行する必要があります。 これらの連携により、顧客サービス担当者に継続的な知識ベースおよび実施可能な測定基準が形成されるため、より良いサービスを提供できるようになります。

  • 新しいテクノロジーの活用:顧客は、より良いエクスペリエンスのためには、個人情報を進んで提供します。 そのデータは、顧客サービスを提供し、オムニチャネルのエクスペリエンスを向上させるために、貴重な情報となります。 企業は、エクスペリエンスとサービスをカスタマイズして作り出すために、顧客データを活用する必要があります。 さらに既存のテクノロジーは、オートメーション、AI、およびチャットボットを使用することにより、顧客サービスを強化します。 たとえば顧客は、夜間に顧客サービス担当の従業員が対応できない場合に、ヘルプをオンラインでボット経由で受けることができます。
オムニチャネルのユースケースと使用例

さまざまな業界においてB2BとB2Cの各企業が、オムニチャネル顧客サービスを使用しています。 もしBOPIS経由でアイテムを最近購入した場合は、その組織のオムニチャネル業務に関わったことになります。 Target、Amazon、Home Depotなどのおなじみの小売業者は、スマートフォンのアプリケーションを含む、強力なオムニチャネル・システムを採用しています。

その他にオムニチャネル戦略を使用している業界には、以下が含まれます。

  • 銀行やその他の金融サービス。そこでは複数チャネルへのアクセスが必要な顧客に対して、オムニチャネルのアプローチを取るとともに、従業員のワークフローを効率的かつ効果的に維持します。

  • 複数のチャネル全体にわたるe-コマースの顧客に対して24時間体制のサポートを提供する必要のある各企業は、オムニチャネル顧客サービスを使用しています。
オムニチャネルとマルチチャネルの比較

マルチチャネルとは、顧客サービスおよび顧客エクスペリエンス向けのシステムで、複数のコミュニケーション・チャネルで構成されています。 マルチチャネルとオムニチャネルを区別する2つの要因:

  1. 同期:マルチチャネルシステムには、Webサイト、ソーシャル・メディア、携帯電話アプリが含まれる場合がありますが、これらのチャネルは独立して稼働し、同期されません。 オムニチャネル・アプローチには、複数の同じチャネルやそれ以外のチャネルが含まれる場合がありますが、それらはすべてつながっており、さらに連携することによって、顧客に単一のシームレスなエクスペリエンスを提供します。

  2. プラットフォームとデバイス:通常、マルチチャネル業務は、チャネルで定義されたデバイスまたはプラットフォームに限定されます。 一方で、オムニチャネル業務は、異なるチャネル、デバイス、プラットフォーム全体にわたってつながっています5

マルチチャネルが、さまざまなチャネルを使用して、企業を購買ジャーニー中の顧客につなげようとしていることが本質的に不適切なのではありません。 しかし、実施された調査では、顧客は今後も(オムニチャネル業務が提供できる)一貫性のあるエクスペリエンスを求め続けるということが示されています。

 

オムニチャネル顧客サービスの課題

オムニチャネル業務を、非常に複雑化した製品を扱う小売店が使用した場合には、営業から顧客サービスまでのあらゆる手段が一層困難となり、課題が生じる場合があります。 複雑化した製品については通常、十分な訓練を受けた、知識が豊富な売上担当者が顧客をサポートする必要があります。 ただし、ビデオ、3Dアニメーション、および拡張現実のようなリッチ・メディアを使用する場合には、企業は、顧客によるセルフサービスを可能にする形で、顧客のエンゲージメントを向上させることができます1

従来の小売営業や顧客サービスの手法もまた、オムニチャネル業務というデジタル・プロセスに変換する際に課題となります。 B2Bの世界からディジタル・システムへの移行は本質的に、価格を透明化することになるため、顧客は店舗でショッピングをしながら、最適な価格や製品をオンラインで確認できるようになります。 情報を継続的にメンテナンスしない場合は、企業は顧客を失うリスクを負うことになります。

また、在庫管理と従業員のトレーニングに関連した組織的な課題もあり、それは顧客サービスにも影響を及ぼします。 オムニチャネル・サービスを試みながらも、在庫を店舗とオンラインでサイロ化したままにしている組織は、サプライ問題に陥ることになります。 組織はその代わりに、在庫と注文管理に対して全社的なアプローチを取る必要があります。

さらに企業は、オムニチャネル戦略を実行する際に、顧客に接する従業員のトレーニングに苦労しています。 オムニチャネル顧客サービスにメリットがある一方で、企業の中には、顧客ジャーニーにおいて顧客を中心に捉えている従業員の価値を、軽視している企業もあります。 オムニチャネルでは、顧客はより多くのセルフサービスを利用できるため、営業担当者および従業員には、一層の注意が必要とされる顧客や購入に対して、より良い顧客エクスペリエンスを提供する機会があります。 こうした従業員のトレーニングは、見過ごされがちなオムニチャネル顧客サービスの重要な側面です。

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出典
  1. Cicman, J.、Bonde, A.、Wilson, K.、Bakalar, M.(2021年)。 B2Bコマースでオムニチャネルを実現 Forrester社 (IBM外部へのリンク)
  2. Beeson, M.、Swerdlow, F.、Witcher, B.、Lawrie, G.、Murgia, N.(2020年)Retailers Are Starting To Reap The Rewards Of Omnichannel Commerce(小売業者はオムニチャネル・コマースの恩恵を受け始めています)。 Forrester社。
  3. Witcher, B.、Swerdlow, F.、Murgia, N.(2020年)。 オムニチャネル成熟度評価。 Forrester社。
  4. Lewis, M.(2021年)。 デジタル・ファーストのオムニチャネルB2Bセラーになることで、利益を増やし、バイヤーを喜ばせます. Forrester社。
  5. Clint Fontanella社。 「オムニチャネルとは。 上位20以内のオムニチャネル・エクスペリエンスの例。」 HubSpotブログ、2021年9月2日(IBM外部へのリンク)