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ディープ・ラーニングは、人間の脳を模倣しようとするものです。その能力は人間の脳には遠く及びませんが、これにより、システムはデータをクラスター化し、驚くほど正確に予測できるようになります。
黒と青のグラデーションの背景
ディープ・ラーニングとは

ディープ・ラーニング は機械学習のサブセットで、本質的には3層以上で構成されるニューラル・ネットワークです。 これらのニューラル・ネットワークは、人間の脳の働きをシミュレートしようとするもので、その能力には人間の脳には遠く及びませんが、大量のデータから「学習」することができます。 単層ニューラル・ネットワークでもおおよその予測は可能ですが、隠れ層を追加することで最適化し、精度を高めることが可能になります。

ディープ・ラーニング は、自動化機能を向上させる多くの人工知能(AI) アプリケーションやサービスを推進し、人間が介入しなくても、分析や物理的なタスクを実行できます。 ディープ・ラーニング・テクノロジーは、日常的に使用されている製品やサービス(デジタル・アシスタント、音声対応TVリモコン、クレジットカードの不正使用検知など)だけでなく、新たなテクノロジー(自動運転車など)にも活用されています。

ディープ・ラーニングと機械学習

ディープ・ラーニングが機械学習のサブセットであるなら、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。 ディープ・ラーニングは、使用するデータのタイプと学習方法において、従来の機械学習とは異なります。

機械学習アルゴリズムは、構造化されたラベル付きデータを活用して予測を行います。つまり、モデルの入力データから特定の特徴量が定義され、テーブルに編成されます。 これは、必ずしも非構造化データを使用しないということではなく、非構造化データを使用する場合は、一般的に構造化されたフォーマットに整理するための前処理が行われます。

ディープ・ラーニングでは、機械学習で一般的に行われている一部のデータの前処理が不要になります。 これらのアルゴリズムは、テキストや画像などの非構造化データを取り込み、処理することができ、 特徴量の抽出を自動化することで、人間の専門家に頼る部分を取り除きます。 例えば、様々なペットの写真があり、それを「猫」「犬」「ハムスター」などで分類したいとします。 ディープ・ラーニング・アルゴリズムは、それぞれの動物を見分けるためにどの特徴(耳など)が最も重要であるかを判断することができます。 機械学習では、この特徴量の階層は人間の専門家により手動で設定されます。

そして、勾配降下法とバックプロパゲーションのプロセスを通じて、ディープ・ラーニング・アルゴリズムにより、正確さを調整して適合させることで、新しい動物の写真についてより正確に予測できるようになります。  

機械学習モデルとディープ・ラーニング・モデルは、異なるタイプの学習も可能で、通常、教師あり学習、教師なし学習、強化学習に分類されます。 教師あり学習では、ラベル付けされたデータセットを利用して、分類または予測を行います。 これには、入力データに正しくラベル付けするために、何らかの人間の介入が必要です。 一方、教師なし学習では、ラベル付けされたデータ・セットを必要とせず、データの中からパターンを検出し、区別できる特徴によってデータをクラスター化します。 強化学習は、ある環境下である行動を行う際に、報酬が最大になるようにフィードバックに基づいて、モデルがより正確に学習するプロセスです

これらのテクノロジー間の微妙な違いを詳しく知るには、「AI vs. Machine Learning vs. Deep Learning vs. Neural Networks: What's the Difference?」をご覧ください。

教師あり学習と教師なし学習の違いについて詳しく知るには、「Supervised vs. Unsupervised Learning: What's the Difference?」をご覧ください。

ディープ・ラーニングの仕組み

ディープ・ラーニング・ニューラル・ネットワーク(人工ニューラル・ネットワーク)は、データ入力、重み、バイアスの組み合わせにより、人間の脳を模倣しようとするものです。 これらの要素が連携し、データ内のオブジェクトを正確に認識、分類、記述することが可能です。

ディープ・ニューラル・ネットワークは、相互に接続されたノードからなる複数の層で構成されており、それぞれが前の層を基づき、予測や分類を改良し、最適化します。 このように、ネットワークを介して計算が進行することを順方向伝搬といいます。 ディープ・ニューラル・ネットワークの入力層と出力層は 可視 層と呼ばれます。 入力層は、ディープ・ラーニング・モデルがデータを処理するためにデータを取り込む場所で、出力層は最終的な予測や分類を行う場所です。

また、

バックプロパゲーションと呼ばれるプロセス では、 勾配降下法などのアルゴリズムを用いて予測値の誤差を計算し、層をさかのぼって関数の重みや偏りを調整することで、モデルの学習を図ります。 順方向伝搬と逆方向伝搬の組み合わせにより、ニューラル・ネットワークは予測を行い、それに応じてエラーを修正することができます。 時間の経過とともに、アルゴリズムは徐々に正確性を高めていきます。

上記では、最もシンプルなタイプのディープ・ニューラル・ネットワークを簡単に説明しています。 しかし、ディープ・ラーニング・アルゴリズムは驚くほど複雑で、特定の問題やデータセットに対応するためにさまざまな種類のニューラル・ネットワークがあります。 以下に例を挙げます。

  • 畳み込みニューラル・ネットワーク(CNN) は、主にコンピューター・ビジョンや画像分類のアプリケーションで使用されており、画像内の特徴量やパターンを検出し、物体の検出や認識などのタスクを可能にします。 2015年、CNNはオブジェクト認識チャレンジで初めて人間に勝利しました。
  • 再帰型ニューラル・ネットワーク(RNN) は、連続したデータや時系列データを利用するため、自然言語処理や音声認識アプリケーションでよく用いられます。
ディープ・ラーニング・アプリケーション

現実世界のディープ・ラーニング・アプリケーションは、私たちの日常生活の一部となっていますが、ほとんどの場合、製品やサービスにうまく組み込まれているため、ユーザーはバックグラウンドで行われている複雑なデータ処理に気づいていません。 以下にこうした例の一部を挙げます。

法執行機関
 

ディープ・ラーニング・アルゴリズムは、トランザクション・データを分析し学習して、不正または犯罪行為の可能性を示す危険なパターンを特定できます。 音声認識、コンピューター・ビジョンやその他のディープ・ラーニング・アプリケーションは、音声や映像の記録、画像、文書からパターンや証拠を抽出することで、捜査分析の効率と効果を向上させることができ、法執行機関が大量のデータをより迅速かつ正確に分析するのに役立ちます。

金融サービス
 

金融機関は定期的に予測分析を使用して、株式のアルゴリズム取引を推進し、融資承認のビジネス・リスクを評価し、不正行為を検出し、顧客のクレジット・ポートフォリオと投資ポートフォリオを管理しています。

カスタマー・サービス
 

多くの企業が、ディープ・ラーニング・テクノロジーをカスタマー・サービスのプロセスに取り入れています。 チャットボットは、様々なアプリケーションやサービス、カスタマー・サービス・ポータルなどで使用されており、AIの端的な形と言えるでしょう。 従来のチャットボットは、コールセンターのメニューで一般的に見られるような、自然言語と視覚認識さえも使用します。 しかし、より 洗練されたチャットボット・ソリューション になると、曖昧な質問に対して複数の回答があるかどうかを学習によって判断しようとします。 受け取った回答に基づいて、チャットボットは質問に直接答えようとしたり、人間のユーザーに話を振ったりします。

AppleのSiri、Amazon Alexa、Google Assistantなどの仮想アシスタントは、音声認識機能を搭載することで、チャットボットの概念を拡張しています。 これにより、パーソナライズされた方法でユーザーをエンゲージする新しい方法が生まれます。

医療
 

医療業界では、病院の記録や画像がデジタル化されて以来、ディープ・ラーニング機能の恩恵を大きく受けています。 画像認識アプリケーションは、医療画像診断の専門家や放射線技師をサポートし、より多くの画像を短時間で分析・評価するのに役立ちます。

ディープ・ラーニングのハードウェア要件

ディープ・ラーニングは、膨大なコンピューティング能力を必要とします。 大量のメモリを搭載したマルチコアで大量の計算を処理できる高性能な グラフィカル・プロセッシング・ユニット(GPU) が最適です。 ただし、オンプレミスで複数のGPUを管理すると、内部リソースに対する需要が大きくなり、拡張に多大なコストがかかる可能性があります。

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