データ・ファブリックとは、インテリジェントな自動システムを使用して、さまざまなデータ・パイプラインやクラウド環境のエンドツーエンドの統合を促進するアーキテクチャーです。 過去10年間で、ハイブリッドクラウド、人工知能、モノのインターネット(IoT)、およびエッジコンピューティングにおけるさまざまな発展により、ビッグデータが指数関数的に成長し、企業によるデータ管理がますます複雑化してきています。 その結果、このようなビッグデータの成長により、データ・サイロ、セキュリティー・リスク、意思決定を妨げるさまざまなボトルネックなどの大きな課題が出現してきたため、データ環境の統合とガバナンスは、ますます優先度が高くなっています。 データ管理チームはデータ・ファブリック・ソリューションを使用してこれらの課題に正面から取り組んでいます。 データ・ファブリック・ソリューションを活用して、異種のデータ・システムを統合し、ガバナンスを組み込み、セキュリティとプライバシーの対策を強化し、働く人、特にビジネス・ユーザーがより容易にデータにアクセスできるようにしています。
データ・ファブリックを介したこうしたデータ統合の取り組みによって、より包括的なデータ中心の意思決定が可能になります。 歴史的に見て、企業では、個々の業務に合わせて異なるデータ・プラットフォームが使用されてきた可能性があります。 例えば、人事データ用のプラットフォーム、サプライチェーン・データ用のプラットフォーム、顧客データ用のプラットフォームが1つの企業内に存在し、これらのプラットフォームでは、異なる、別個の環境にデータが保存され、重複するデータが複数の環境で保存されてきた可能性もあります。 しかし、データ・ファブリックの導入により、以前には存在しなかったデータ間のつながりを明らかにして、データをよりまとまりのある状態で表示し、意思決定者が顧客のライフサイクルをより深く把握できるようにできます。 顧客、製品、プロセスの理解におけるこのような溝を埋めることにより、データ・ファブリックは、ビジネス全体でデジタル・トランスフォーメーションと自動化のイニシアチブを加速します。
データ・サービスとAPIを活用することで、データ・ファブリックは、レガシー・システム、データレイク、データウェアハウス、SQLデータベース、アプリケーションのデータをまとめて、業績の総合的なビューを提供します。 個々のデータ・ストレージ・システムとは異なり、データ・ファブリックでは、複数のデータ環境間でデータの流動性を高めて、データ重力の問題、つまりデータのサイズが大きくなるにつれて、そのデータを移動するのが困難になるという考え方に対処することを目指しています。 データ・ファブリックは、データの移動、変換、統合にかかわる技術的な複雑さを取り除き、すべてのデータを企業全体で使用できるようにします。
データ・ファブリック・アーキテクチャーは、複数のプラットフォーム上のデータをそのデータを必要とするアプリケーションと緩く結合します。 マルチクラウド環境内のデータ・ファブリック・アーキテクチャーの例を以下に示します。ここでは、AWSのような1つのクラウドでデータの取り込みが管理され、Azureのような別のプラットフォームでデータの変換と消費を監視します。 次に、分析サービスを提供するIBM Cloud Pak®のような第3のベンダーが使用される場合があります。 データ・ファブリック・アーキテクチャーは、これらの環境をつなぎ合わせて、データの統合ビューを作り出します。
とはいえ、これはほんの一例です。 それぞれの企業には、異なるニーズがあるため、単一のデータ・ファブリックのデータ・アーキテクチャーによってすべての企業のニーズを満たすことはできません。 多くのクラウド・プロバイダーと多彩なデータ・インフラストラクチャー実装が存在するため、企業には十分な選択肢が提供されます。 ただし、このタイプのデータ・フレームワークを使用する企業のアーキテクチャーには、データ・ファブリック特有の特徴が見られます。 さら具体的に述べると、これらは6つの基本的なコンポーネントで構成されています。これについては、Forrester社 (ibm.com外部へのリンク)のレポート「エンタープライズ・データ・ファブリックがDataOpsを可能にする」で説明されています。 これらの6つの層には以下が含まれています。
Gartner社(ibm.com外部へのリンク)の報告によると、データ・ファブリック・プロバイダーが市場でより多くの企業へデータデータ・ファブリックの導入進めるにつれて、特に効率性に改善がみられ、「統合設計にかかる時間を30%、実装にかかる時間を30%、また保守にかかる時間を70%短縮できる」ようになりました。 データ・ファブリックによって全体的な生産性を向上できるのは明らかですが、以下のようなメリットから、導入する企業にとってビジネス価値があることも実証されました。
データ・ファブリックは導入の観点から見るとまだ初期の段階にありますが、そのデータ統合能力は企業のデータ・ディスカバリーに役立ち、多様なユースケースに採用されています。 データ・ファブリックが処理できるユースケースは他のデータ製品とそれほど異なるわけではありませんが、データ・サイロの解除に関して処理できる範囲と規模については、データ・ファブリックは突出しています。 さまざまなデータ・ソース全体を統合することにより、企業と企業のデータサイエンティストは、顧客の全体的なビューを作成できます。このビューは、特に銀行業界のお客様にとって大変役立ちます。 データ・ファブリックは、具体的には以下のような目的で使用されています。
IBM Cloud Pak for Dataは、オープンで拡張可能なデータ・プラットフォームで、データ・ファブリックを提供し、任員のクラウド上ですべてのデータを、AI用と分析用に使用できるようにします。
AIモデルを構築、実行、管理します。 オープンソース・コードまたはビジュアル・モデリングを使用して、データを準備し、任意のクラウドでモデルを構築します。 結果を予測して最適化します。
堅固なパフォーマンスを実現するために構成され、最適化されたフルマネージドのSQLクラウド・データベース、Db2 on Cloudをご覧ください。
「アクセス」、「ガバナンス」、「プライバシーとコンプライアンス」という3つの主要なデータ管理領域に着目して、AI向けの堅固なデータ基盤を構築する方法について説明するスマート・ペーパーをお読みください。
ING社のFerd Scheepers氏は、ハイブリッドクラウド環境でデータ・ファブリックを使用する自身のビジョンを共有しています。
インドState銀行が IBM Garage™の手法とともにいくつかのIBMソリューションを使用して、包括的なオンライン・バンキング・プラットフォームを開発した方法をご覧ください。
データ・ファブリックは、AI、機械学習、モノのインターネット、エッジコンピューティングに投資する企業が、データからより多くの価値を得ることを支援します。