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公開日:2024年2月27日
寄稿者:アリス・ゴムスティン、アマンダ・マクグラス

カーボン・ニュートラルとは

カーボン・ニュートラルとは、炭素排出物を生成する存在が地球の大気から同量の炭素排出物を除去したときに達成される状態を指します。 カーボン・ニュートラルの達成には、エネルギー効率の取り組みを始め、再生可能エネルギーへの移行や炭素除去、カーボン・オフセット・プロジェクトなどのさまざまな対策が必要となります。

カーボン・ニュートラルが重要な理由

カーボン・ニュートラルの取り組みの支持者は、大気中の温室効果ガスの排出の蓄積によって引き起こされる気候変動と地球温暖化を緩和する上で重要な役割を果たすことができると主張しています。二酸化炭素に加えて、気候変動の原因となる温室効果ガス(GHG)には、メタンや亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類が含まれます。

これらのガスの排出は主に人間の活動、特に化石燃料の燃焼によって引き起こされ、地球の気温の大幅な上昇を引き起こしています。 欧州連合の気候監視機関コペルニクスは、2023年が記録上最も温暖な年であったと報告しました。これは産業革命以前のレベルより摂氏1.48度(華氏2.66度)近い上昇でした。

カーボン・ニュートラルの取り組みは、すべての温室効果ガス排出量をほぼゼロに削減し、残りの排出物を大気中から除去するという、ネットゼロ排出の目標の達成に役立ちます。 ただし、ネットゼロ排出イニシアチブは通常、排出の除去よりも削減に重点を置いています。 複数の世界的な非営利団体のパートナーシップであるScience Based Targetsイニシアティブ(SBTi)は、企業に直接的・間接的なバリューチェーンの排出量を90%以上削減することを求める企業ネットゼロ基準を推進しています。1企業や国または地域が気候変動対策を講じてネットゼロ排出量を達成すると、気候ニュートラルであると見なされます。

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カーボン・ニュートラルを実現するに必要な戦略とは

業務とサプライチェーンでカーボン・ニュートラルを実現しようとする組織は、通常、下記に上げるアプローチのうち複数を採用します。

エネルギー効率

エネルギー効率とは、必要とされるエネルギーよりも少ないエネルギーを使用してタスクを実行するという概念です。 米国エネルギー省は、エネルギー効率を「二酸化炭素のネットゼロ排出を達成するために不可欠な要素」と呼んでいます。2

エネルギー効率の改善は、古い電球を新しい省エネ電球に交換するなど、小規模な場合もあります。 ただし、改善は大規模なプロジェクトの形をとることもあります。 たとえば、反射屋根を設置し、建物全体に断熱材を追加すると、暑い季節でも室内温度を低く保つことができ、HVACシステムによる全体的なエネルギー消費が削減されます。 企業のカーボン・フットプリントを削減するだけでなく、エネルギー効率によって光熱費も削減できるため、企業は商品やサービスの価格を下げることができます。

再生可能エネルギーへの移行

再生可能エネルギーとは、消費されるよりも速く補充できる自然資源から生成されるエネルギーです。ほとんどの種類の再生可能エネルギーは一度稼働すると二酸化炭素を排出しないため、クリーン・エネルギーと呼ばれることがあります。 (再生可能エネルギー技術の製造と設置は、比較的小さいカーボン・フットプリントを生み出します)3

再生可能エネルギーには、太陽光発電を始め、風力発電や、水力発電、地熱エネルギー、バイオエネルギーなどがあります。 エネルギー効率と同様に、組織は化石燃料源から再生可能エネルギー源への移行に着手する際に、さまざまな戦略を追求できます。 現地での選択肢としては、太陽光パネルの設置や、風力タービンの設置、地熱暖房・冷房システムの使用などが挙げられます。

入手可能なところでは、地域の再生可能エネルギープロバイダーから直接電力を購入することもできます。 米国とヨーロッパでは、組織がグリーン・エネルギーへの投資を示す証明書を購入することもできます。 (このような証明書の支持者は、再生可能エネルギーへの移行を支援し、意識を高めるのに役立つと述べています。 しかし、調査によると、認証書が必ずしも再生可能エネルギー・インフラの開発を促進するわけではなく、グリーン・ウォッシング(企業の持続可能性に関する誤解を招く情報のマーケティング)への懸念が高まっています。)4

炭素除去と炭素回収

二酸化炭素の排出は、炭素吸収源を通じて大気から自然に除去されます。 自然の炭素吸収源には森林や海洋、湿地などがあり、大気中の二酸化炭素を吸収します。このプロセスは隔離として知られています。 人間は、森林再生や湿地の保護や修復を通じて、このような生物学的隔離を支援することができます。 (このような生息地の復元は、生物多様性を保護するという付加的なメリットももたらします。)

他の種類の炭素隔離にも人間の努力が必要です。 これらには、土壌中の炭素貯蔵量を増やす農業慣行(土壌炭素隔離として知られる)や直接空気回収(DAC)が含まれます。 DACテクノロジーは、化学反応を利用して二酸化炭素分子を濾過する空気捕捉システムを通じて、大気中から二酸化炭素を直接除去します。 DACは特に高価な炭素除去方法ですが、国際エネルギー機関(IEA)によると、2023年7月の時点で世界中で27カ所のDACプラントが稼働開始しました。5炭素除去における継続的な革新は、カーボン・ネガティブ・ショット・イニシアチブ6や二酸化炭素除去ランチパッド7などの政府プログラムによって支援されています。

二酸化炭素除去に使用されるテクノロジーの中には、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)プロジェクトで使用されるものと類似したものもあります。 ただし、CCUSプロジェクトは、工場や発電所などの発生源で二酸化炭素排出を回収するという点で独特です。 回収された二酸化炭素は圧縮して、産業用途の輸送や地下貯蔵が可能です。 IEAによると、2023年7月現在、500以上のCCUSプロジェクトが開発中であす。8

カーボン・オフセットとカーボン・クレジット

サステナビリティーへの取り組みを補完し、気候変動に配慮する利害関係者の期待に応えるために、組織がカーボン・オフセット・プロジェクトやカーボン・クレジットに投資することがよくあります。 こうしたプロジェクトは、植林や再生可能エネルギーの生成など、上記の取り組みの多くの形をとることがあります。 企業は、GHG排出量の除去または回避に投資することで、自社の排出量を「相殺」しています。

カーボン・ニュートラル実現に向けた世界的な取り組み

1997年の京都議定書は、先進国が温室効果ガス排出を削減するための法的拘束力のある目標を設定する最初の国際条約となりました。 2015年のパリ協定では削減目標が発展途上国にも拡大され、最終的には世界約200カ国から署名者が集まりました。 2015年、国連は排出量削減に重点を置く17の持続可能な開発目標(SDGs)も採択しました。

特にカーボン・ニュートラルへの注目は、気候ニュートラルのための世界的な連合の発展に伴い強化されています。 2020年までに、欧州連合加盟国や英国、米国、日本、韓国を含む110カ国以上が2050年までにカーボン・ニュートラルを達成することを約束しました。 さらに、中国は2060年までにカーボン・ニュートラルを達成すると約束しています。9

2023年の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC COP 28)では、別の世界的な取り組みが具体化されました。 そこでは、2030年までに世界の再生可能エネルギー発電設備容量を3倍にし、エネルギー効率の改善率を2030年まで毎年、世界平均で約2%から4%以上に倍増させるために協力するという誓約に、120カ国以上が署名しました。10

カーボン・ニュートラルの取り組みを支援するテクノロジーとは

技術革新は、多くの組織や国のカーボン・ニュートラルへの道の中核をなすものです。 新しい開発には、太陽光と海水を利用する二酸化炭素除去システムや、小型風力発電機の出現11 、運河に太陽光パネルを改修する計画などが含まれます。12

さらに、炭素管理ソフトウェアは、組織が脱炭素化の取り組みを加速するのに役立ちます。 このようなソフトウェアは、GHG排出情報を使用したデータ基盤を構築し、報告プロセスを合理化し、低炭素目標を達成する機会を特定し、約束に対するパフォーマンスを追跡する分析ツールを提供できます。

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参考情報 ネット・ゼロとは

ネット・ゼロとは、大気中へ排出される温室効果ガスと大気から除去される温室効果ガスの量が均衡する状況のことです。

脱炭素化とは

脱炭素化とは、温室効果ガスの排出量を削減し、大気中から除去する気候変動緩和の手法のひとつです。

炭素会計とは

炭素会計を使用すると、組織は温室効果ガス排出量を定量化し、気候への影響を理解し、排出量を削減する目標を設定できます。

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脚注

 1SBTi Corporate Net Zero Standard(SBTiコーポレート・ネットゼロ基準)」(ibm.com外部へのリンク)。SBTi、2023年4月。

 2Energy Efficiency: Buildings and Industry(エネルギー効率ー建物と産業)」。(ibm.com外部へのリンク)米国エネルギー省エネルギー効率・再生可能エネルギー局。

3When 100% renewable energy doesn’t mean zero carbon(100%再生可能エネルギーがゼロカーボンを意味しないとき)」(ibm.com外部へのリンク)。ドーア持続可能性大学院、スタンフォード大学、2019年5月23日。

4Renewable Energy Credits: Decarbonizing the Grid or Just a Corporate Messaging Tool?(再生エネルギー・クレジット 送電網の脱炭素化か、単なる企業のメッセージ・ツールか)」 (リンクは ibm.com 外にあります) ペンシルベニア大学クラインマン・エネルギー政策センター、2023年6月15日。

5Direct Air Capture(直接空気回収)」 (ibm.com外部へのリンク)。国際エネルギー機関、2023年7月11日。

6Carbon Negative Shot(カーボン・ネガティブ・ショット)」(ibm.com外部へのリンク)、 米国エネルギー省化石エネルギー・炭素管理局。 2024年1月4日。

7Carbon Dioxide Removal Launchpad(二酸化炭素除去ローンチパッド)」。 (ibm.com外部へのリンク)。二酸化炭素除去ミッション、2022年11月17日。

8Carbon Capture, Utilisation and Storage(二酸化炭素の回収・利用・貯留)」(ibm.com外部へのリンク)。国際エネルギー機関、2023年7月11日。

9Carbon neutrality by 2050: the world’s most urgent mission(2050年のカーボン・ニュートラル 世界で最も緊急なミッション)」(ibm.com外部へのリンク)。国連、2020年12月11日。

10Global Renewables and Energy Efficiency Pledge(世界の再生可能エネルギーとエネルギー効率の誓約)」 (ibm.com外部へのリンク)。COP 28、アラブ首長国連邦、2023年。

11A new carbon removal startup is powered by sunlight and seawater(太陽光と海水を動力源とする新しい炭素除去スタートアップ)」 (ibm.com外部へのリンク)。ボストン・グローブ紙、2024年2月17日。

125 smart renewable energy innovations(5つのスマート再生可能エネルギー・イノベーション)」。 (ibm.com外部へのリンク)。世界経済フォーラム2023年9月21日。