ホーム Think ページタイトル 電力購入契約 電力購入契約(PPA)とは
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公開日:2024年5月17日
寄稿者:Alexandra Jonker

PPAとは

電力購入契約(PPA)は、エネルギー購入者(オフテイカー)とエネルギー供給者との間の長期契約です。PPAは、再生可能エネルギー資産から生成されるメガワット時(MWh)あたりのエネルギーに対してエネルギー供給者が受け取る価格を定義します。また、供給される電力量や契約期間、送電の問題や保険などの詳細についても概説しています。

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PPAによってエネルギー購入者は、エネルギー消費習慣をよりコントロールしやすくなり、エネルギー・コストを大幅に節約し、場合によってはコストの確実性を確保できます。またPPAによって、購入者は資産に関連する再生可能エネルギー証明書(REC)の付与を受けることもできます。RECは、化石燃料によって生成された可能性のある電力を表します。組織は、RECを使用してクリーン・エネルギーとサステナビリティーの目標をサポートし、炭素排出規制に準拠します。欧州連合(EU)には、原産地証明(GO)と呼ばれる同様のエネルギー属性証明書が存在します。

エネルギー供給業者は、PPAによって長期的なキャッシュ・フローを確実なものとすることができます。これらは、太陽光発電所風力発電所などの再生可能エネルギー・プロジェクトをさらに発展させるための鍵となると考えられています。

オンサイトPPAとオフサイトPPA

電力購入契約はオンサイトまたはオフサイトのいずれかで行われます。主な違いは次のとおりです。

オンサイトPPA

オンサイト電力購入契約では、風力タービンやソーラー・パネルなどの再生可能エネルギー資産は、オフテイカーの拠点に設置されます。エネルギー供給者(またはプロジェクト開発者)は、合意された期間や再生可能エネルギー・システムの運営・所有・保守を行います。通常、エネルギー購入者には初期費用や資本コストはかかりません。

オフサイトPPA

一部のエネルギー購入者(主に大規模組織)にとって、オンサイトでの再生可能エネルギー生成は、再生可能エネルギーの目標を達成するのに不十分である可能性があります。オフサイトPPAを使用すると、大量の再生可能エネルギーを調達できる大規模な再生可能エネルギー施設にアクセスできるようになることで、目標を達成できるだけでなく、規制上の義務も果たせるようになります。

フィジカルPPAとファイナンシャルPPAの違い

電力購入契約には、物理的(フィジカル)または金銭的(ファイナンシャル)なものがあります。フィジカルPPAは、送電網を通じて顧客に電力を物理的に供給することを特徴としています。ファイナンシャルPPA(仮想PPA、合成PPA、差金取引、固定対変動スワップとも呼ばれる)は、エネルギー購入者に生成された再生可能エネルギーに対するファイナンシャル・クレジットまたはオフセットを提供しますが、エネルギー供給者は送電網に電力を販売します。この販売による収益(キロワット時あたりの合意された「行使価格」に基づく)は、エネルギー購入者に返還されます。電力の販売額が合意された行使価格を下回る場合、顧客は売主に対して差額を支払う義務があります。ファイナンシャルPPAは、関係者双方にとって電力価格の変動リスクを軽減するものとなるため、ヘッジ契約とみなされます。

ファイナンシャルPPAは、フィジカルPPAが許可されていない、従来規制されているエネルギー市場に属する組織に特に役立ちます。このような組織はファイナンシャルPPAにより、税額控除や報奨金を利用して、サステナビリティーの目標を達成することができます。またそれにより、エネルギー販売業者にはプロジェクト開発のための資金が提供されます1

PPAの価格はどのように設定されるか

市場には次のようないくつかのPPA価格モデルがあります。

固定価格

固定価格PPAでは、購入者に電力購入の価格が設定されます。これらのPPAでは、電力市場の変動に影響されず価格は一定です。組織にとって、これは運用の予測可能性の向上につながります。固定価格PPAは、市場で最も一般的なPPAの1つです。

インデックス・ベース

変動価格PPAとも呼ばれるインデックス・ベースのPPAは、電力の現行の市場価格に基づいて価格設定されます。固定価格のPPAと同様に、これも非常に一般的です。このタイプのPPAは、固定価格PPAよりも柔軟性が高いですが、市場変動のリスクも伴います。ただし、変動価格PPAであれば市場価格から割り引いた価格で電力を供給できます。

ハイブリッド価格

固定価格PPAやインデックス・ベースPPAほど一般的ではありませんが、ハイブリッド価格PPAは、一部は固定価格で、一部は変動価格で供給される組み合わせ電力価格モデルです。これはより複雑な契約ですが、エネルギー購入者はエネルギー価格の予測可能性と柔軟性の両方のメリットを享受できます。

価格エスカレーター

PPA価格モデルには、年間エスカレーターまたは価格上昇率が含まれる場合もあります。この場合、電力は契約期間中の一定の間隔で、合意された率で上昇する価格で購入者に販売されます。

グリーン料金PPAとは

グリーン料金PPAは電力会社によって提供され、エネルギー購入者には従来のPPAに代わる選択肢となります。グリーン料金PPAにより、電力会社はエネルギー購入者に代わって再生可能エネルギーの発電業者や発電所から電力を購入します。購入者はエネルギーと関連RECの両方を受け取ります。これは、PPAを直接管理しなくても、エネルギー顧客が再生可能エネルギー開発の推進と資金調達を支援し、サステナビリティーの目標を達成するための助けとなる自主的な公益事業プログラムです。

PPAを購入するのは誰か

利害関係者の圧力を始め、気候変動の影響による環境問題への意識の高まりや、再生可能エネルギーの潜在的な経済的利益といったさまざまな要素が入り組んでいるため、PPAはあらゆるセクターの企業購入者にとって魅力的なものとなっています。上位の購入者として名を連ねているのは、テクノロジー業界(データセンターの電力需要を満たすために企業向けPPAを利用)、小売業、製造業などセクターの多国籍企業です。2023年、その年の再生可能エネルギーの最大の購入者であるAmazonは、16の市場で合計8.8ギガワットに及ぶ74件のPPAを発表しました。

非営利団体もPPAを購入します。これらの組織は、オンサイトの再生可能エネルギー・システムの購入を支援するために連邦税額控除を利用することができないため、PPAは実行可能なグリーン・エネルギー調達の選択肢です。

個人の住宅所有者もPPAを利用できます。例えば、太陽光発電購入契約(SPPA)を利用すると、個人は初期費用なしで自分の敷地内にソーラー・パネルを備えた太陽光発電(PV)システムなどの太陽光発電プロジェクトを設置できます。従来のPPAと同様に、太陽光発電PPAを利用することで、開発者はホスト顧客の電力購入元となるエネルギー・システムを所有・運用できます。

ブロックチェーン技術により、大規模なPPA契約をエネルギー単位と時間単位のいずれでも小さな単位に分割できるようになりました。これにより、中小企業や個人購入者にとって参入障壁の低いPPAの流通市場が生まれました。

現在、米国、カナダ、ラテンアメリカを含む南北アメリカは、PPA活動の最大の地域です。この地域に次いで、ヨーロッパ、中東、アフリカ(EMEA)地域が続きます。それに対してアジア太平洋(APAC)地域はPPA活動がかなり低調ですが、近年の政策により成長が支えられ、過去最高を記録しています2

PPAの課題は何か

PPAは、エネルギー・コストの削減とエネルギー・コストの安定性を実現し、再生可能エネルギーへの移行の推進を支援するものです。ただし、PPAには次のようないくつかの課題があります。

契約の複雑さ

PPAは長く複雑な契約協定です。この種の契約の署名と交渉には費用がかかり、外部の会計事務所からの追加的な助言が必要になる場合もあります。

エネルギー貯蔵

再生可能エネルギー源は断続的な性質があるため(ソーラー・パネルは太陽エネルギーを生成するために太陽光が必要であり、風力タービンは回転するために風が必要)、PPAを利用する組織によっては、エネルギー不足対策としてエネルギー貯蔵システムが必要となる場合もあります。

影響の測定

組織にとって再生可能エネルギー調達(PPA、RECなどによる)の影響の測定は、とりわけ複雑になる可能性があります。監査要件もサポートするデータ管理プラットフォームやレポート・プラットフォームなど、支援テクノロジーの採用を選択する企業もあります。

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脚注

1金融PPA」(ibm.comの外部サイトにリンクします)米国環境保護庁、2023年11月1日。

2Amazon Is Top Green Energy Buyer in a Market Dominated by US(アマゾン、米優勢市場で世界最大の再生可能エネルギー購入企業に)」(ibm.com外部へのリンク)BloombergNEF、2024年2月26日。