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歴史的に、エネルギー・トランジションはイノベーションと必要性が原動力となって推進されてきました。例えば、工業化が薪から石炭への移行を促し、内燃エンジンとガソリン自動車の生産に世界中で石油への依存が進みました。
1970年代に起きた石油危機とエネルギー価格の高騰により、再生可能エネルギー、つまり消費よりも早く補充されるエネルギー源への関心が高まりました。その後、気候変動とその人為的な原因、すなわち化石燃料の燃焼によって放出される温室効果ガス(GHG)に対する認識の高まったことで、再生可能エネルギーソリューションの採用とエネルギーセクターの変革の動きが加速しました。
多くの再生可能エネルギー発電は二酸化炭素やその他の温室効果ガスをほとんど排出しないため、グリーンエネルギーや持続可能エネルギーとよく呼ばれます。化石燃料ベースの電力をグリーンエネルギーに置き換えることで、世界中の脱炭素化を促進できます。
このような排出削減は、世界の政策立案者が示すロードマップに従うために必要です。2015年、気候変動に関するパリ協定で、世界の平均気温が産業革命前のレベルから2°C(35.6°F)上昇するのを防ぐという目標が設定され、世界中の国に対する排出量制限が課せられました。国連によれば、このレベルの地球温暖化を防ぐには、2050年までに排出量を実質ゼロにする必要があります。
国際エネルギー機関(IEA)によると、2023年現在、再生可能エネルギー源による発電量は世界の発電量の3分の1未満です。1 地球の気温上昇を抑えるには、世界のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合をはるかに大きくする必要があります。そのため、国連の2023年気候会議において、各国政府は2030年までに再生可能エネルギーの発電量を3倍にすることに合意しました。目標の達成に向けて導入されている主なエネルギー源の次のとおりです。
水力発電は、水流を利用してタービンを回転させ、発電します。水力発電施設は、河川や小川の流れ、海洋や潮力エネルギー、貯水池やダムから発電しています。IEAによると、2022年の時点で、世界の発電量に占める水力発電の割合は15%です。同機関は、2030年まで水力発電がクリーンエネルギーによる発電を牽引すると予測しています。
風力発電は使用する風力タービンのサイズに応じて、発電規模が変わります。現在、洋上風力発電容量を倍増させる可能性のある、より強い洋上風力を利用した大規模な風力発電基地が開発されています。2022年、風力発電は世界の発電量の7%以上を占めました。
太陽エネルギー発電とは、太陽光発電(PV)と太陽熱発電(CSP)の2つの方法によって太陽光から発電することです。PVはより一般的な変換方法で、ソーラー・パネルを使用して太陽エネルギーを収集し、電気に変換します。IEAによると、2022年に世界の発電量に対する太陽光発電の割合は4.5%でした。ですが同機関は、2028年までに太陽光発電の発電量は風力発電を上回ると予測しています。
地熱エネルギーとバイオマスも、はるかに少量ではありますが、世界のエネルギー供給に貢献しています。
今日のエネルギー・トランジションを支える主要なエネルギー技術は以下のとおりです。
エネルギー貯蔵システムは、再生可能エネルギーが発電していないときにエネルギーを供給することで、電力供給を安定させるのに役立ちます。例えば、太陽エネルギー発電では夜間、風力発電では風力タービンが回転しない静かな日に必要になります。エネルギー貯蔵技術には、リチウムイオン・バッテリー、揚水発電、圧縮空気エネルギー貯蔵などがあります。
電化とは、非電気エネルギー源に依存するデバイス、システム、またはプロセスを、電動のものに置換することです。化石燃料を使用する設備を再生可能エネルギーによる電気設備に置換することで、再生可能エネルギーへの移行が促進されます。電化は家庭と産業の両方で起きています。たとえば、多くの家庭では天然ガスによるコンロはIHコンロに置き換わっていますし、一部の製造施設では化石燃料ベースの暖房技術が産業用ヒート・ポンプに切り替わっています。
電気自動車(EV)は化石燃料を使用する自動車に取って代わりつつあり、際だって広く普及している電化の例の1つです。そしてEVは、エネルギー貯蔵という形でも再生可能エネルギーへの移行を促します。電気自動車は、充電ステーションに接続することで、貯蔵しているエネルギーを電力網に提供できます。Vehicle to Grid(V2G)技術によって、EVのバッテリーに蓄えられた未使用のエネルギーを電力網に供給できるのです。
二酸化炭素回収・貯留とは、排出された二酸化炭素が大気に放出される前に回収し、隔離するプロセスです。二酸化炭素の回収と貯蔵は気候変動を緩和し、カーボン・ニュートラルを達成するためのより広範な取り組みの一部であると同時に、化石燃料由来の排出量を削減することで、再生可能エネルギーへの移行を後押しする役割を担っています。エネルギー貯蔵技術と同様に、化石燃料による発電は、再生可能エネルギーによる発電が不安定な場合のエネルギー供給を安定させるのに役立ちます。二酸化炭素回収技術は、需要に応じた化石燃料による低炭素エネルギー生産を可能にします。
カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト (CDP)の報告書によると、企業のサプライチェーンは、CO2排出量を含む温室効果ガス総排出量の90%以上を占めています。持続可能なサプライチェーンマネジメント は、商品やサービスの調達、生産、流通の各段階において、環境を配慮した施策を組み込むことです。例として、化石燃料に代わり再生可能エネルギーを使用することが挙げられます。人工知能 や モノのインターネット (IoT)デバイスを含むサプライチェーン管理ツールは、エネルギー使用量を監視し、エネルギー調達の決定を導きます。
現在のエネルギー・トランジションの主な原動力は排出量削減と気候変動の低減ですが、再生可能エネルギーへの転換はその他にも多くのメリットがあります。
地政学的な対立やサプライチェーンの混乱により、世界中で化石燃料へのアクセスが困難になる中、再生可能エネルギーはエネルギー市場に多様性をもたらし、各国のエネルギー安全保障を強化します。再生可能エネルギーと電化技術の活用は、多くの場合、エネルギー効率を向上させ、メンテナンスの必要性を低下させるため、燃料コストと維持費の削減に役立ちます。そして、再生可能エネルギー・プロジェクトは、いわゆる移行を推進することで、経済成長を促進し、雇用を創出し、エネルギー貧困を軽減し、発展途上国をよりクリーンな未来に導きうることが研究で明らかになっています。
しかし、エネルギー・トランジションの取り組みにはいくつかの課題があります。再生可能エネルギーによる発電が一定しないこと、再生可能エネルギー設備やプラントの建設と設置には高額な初期費用を要すること、電化を支える送電網容量やインフラストラクチャーが不足していることなどが課題としてあげられます。
近年、ヨーロッパからアジアに至る政府は、他の気候変動対策と連動して再生可能エネルギーの導入を促進する政策に取り組み始めています。これらのプログラムは、再生可能エネルギーへの移行のコストを補填し、移行の推進に必要なインフラの強化を支援します。