顧客獲得とは、企業が新規顧客を獲得するための戦略とプロセスを指します。目標は、予測可能で持続可能な新規顧客のパイプラインを構築し、長期的なビジネスの成長を確保することです。
成功している顧客獲得戦略は、ビジネスに忠実な支持者になってくれる可能性が最も高い顧客を引き付けることに重点を置いている傾向があり、したがって収益性が高くなっています。
マーケティング戦略の大部分は、ブランド認知度を高めて、組織のリーチを拡大することに重点を置いていますが、顧客獲得の実践は、ターゲット・オーディエンスを適格なリードに変換し、具体的な売上につなげることに重点を置いています。
顧客離れや顧客生涯価値(CLV)などのメトリクスに焦点を当てることは、企業が顧客獲得の取り組みの有効性を測定し、初めての買い物客をお金を使ってくれる顧客に変えるのに役立ちます。このプロセスには、理想的な顧客を特定し、商品の価値を伝えて、消費者を購入プロセスに導くことを目的としたさまざまな戦略と戦術が含まれます。
顧客獲得は、ビジネスの成長において重要な要素です。新規の、ロイヤルティーの高い新規顧客を獲得することで、収益が増加し、市場リーチを拡大し、組織の長期的な持続可能性を実証できます。多くの場合、マーケティングチームとセールスチームのコラボレーションとして組織されます。
通常、基本的な顧客獲得プロセスは、潜在的なリードの獲得、販売する準備ができるまでのリードの育成、そしてリードの顧客への変換の3つのステップから成ります。このプロセスは、以下のような複数のチャネルにわたって同時に実行することができます。
今日のオムニチャネル、デジタル・ファーストの環境により、顧客獲得はより複雑になっています。消費者には無限の選択肢があり、購入前も含めた顧客体験を通じてスムーズなジャーニーを求めています。82%ものユーザーが、必要な商品を探すのに10分もかかっていません。1 一方、摩擦が大きいユーザーの96%は、ブランドの商品にサインアップしない傾向にあります。2潜在顧客は、シームレスでダイナミックかつ、コンテキストに応じたカスタマー・ジャーニーを望んでいます。そして、どの製品を購入するべきかを調査することに何時間も費やしています。
顧客獲得のスペシャリストが扱うデータは膨大であるため、多くの組織では、顧客獲得プロセスを強化するために、厳選した自動化ツールや人工知能(AI)ツールを導入しています。これには、顧客関係管理(CRM)用のロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の導入、 AIを活用して、ユーザーの行動に基づいてデジタル・マーケティング戦略を推奨すること、パフォーマンスに基づいてターゲットを絞った広告キャンペーンを自動的に最適化することなどが含まれます。
顧客獲得戦略を成功させるには、顧客を惹きつけて、そのプロセスを再現可能にするための強力かつ具体的な方法論を決定するよう努める必要があります。今日の多くの企業は、顧客獲得を一瞬のコンバージョンではなく、継続的なプロセスと考えています。
顧客獲得ファネルは、潜在的な顧客がブランドを認識してから購入を完了するまでの段階を概説したモデルです。顧客獲得プロセスを可能な限り簡単な言葉で説明します。個々の顧客獲得戦術は異なり、複数のチャネルで行われる場合がありますが、ブランド認知度から購入までの段階は一般的に、企業がどのように包括的な戦略を策定するかの指針となります。これらは顧客獲得プロセスの個々の要素を表しており、個別に測定および監査することができます。
顧客の獲得と顧客価値を効果的に測定することは、あらゆるビジネスの成長と持続可能性において不可欠です。堅牢な顧客獲得プロセスの潜在的なメリットは次のとおりです。
持続可能な顧客ベースを獲得することで、売上と収益が直接的に増加し、新規顧客は潜在的なリピート客となり、収益機会が増えます。より多くの顧客を獲得することで、特定の市場でのシェアを拡大することができ、業界の中でビジネスの競争力を高めることができます。
継続的な顧客獲得により、ビジネスの持続可能な拡大を実現するだけでなく、新規市場への参入、新商品のローンチ、既存サービスの拡張を通じて成長し、規模を拡大することができます。顧客ベースが拡大するにつれて、スケールによるメリットを実現し、単位あたりのコストを削減し、オペレーション全体でリソースを最適化することもできます。
多様な顧客基盤を獲得することで、単一の市場セグメントへの依存が減り、リスクが分散され、変動する市場での安定性が得られるため、リスクが軽減されます。また、多様な顧客基盤により、さまざまな商品やサービスをさまざまな顧客セグメントにクロスセルしたり、アップセルする機会が生まれます。
新規顧客を獲得することで、組織は顧客の好みや行動、購入パターンに関するデータを収集できます。この情報は、商品、サービス、マーケティング戦略の改善に活用できます。新規顧客もイノベーションを促進し、企業が市場の動向や消費者の行動に遅れずについていくことを促します。
効果的な顧客獲得戦略の開発には、新規顧客をコンバージョンにつなげるための測定可能で反復可能なキャンペーンの計画と実行が含まれます。戦略の詳細は、ビジネスの規模や意図する目標によって異なります。新規顧客を特定の商品で獲得するための戦略を策定する企業もあれば、組織の顧客ベース全体の多様化を目的とした戦略を策定する場合もあります。一般に、顧客獲得戦略を策定するためのステップは次のとおりです。
獲得戦略を策定するための最初のステップには、理想的な顧客像を特定することが含まれます。顧客の属性、行動、好み、問題点を含む社内のデータ・セットとサードパーティーのデータ・セットの両方に基づいて、詳細な購入者ペルソナを作成することなどが含まれます。詳細なレベルでターゲット・オーディエンスを理解することで、特定の顧客の好みやニーズに合わせて取り組みを調整することができます。
価値提案は、顧客が特定の商品やサービスを選ぶ理由を明確に示したものです。多くの場合、価値提案は購入者の具体的な問題点や必要性、商品が提供する独自のメリットやサービスを強調するものです。価値提案は、属性や商品のユースケースによって変化する可能性がありますが、一般的には一貫したメッセージング・キャンペーンの一部です。
組織はこのフェーズで、ターゲット・オーディエンスの共感を呼ぶために、ブランド、顧客、チャネルのそれぞれに合わせた固有のマーケティング・コンテンツを作成します。これには例えば、ブログ記事、プログラマティック広告のアセット、ソーシャル・メディアの投稿、その他の広告が含まれます。パーソナライズされたこれらのマーケティング・メッセージは、獲得ファネルの各段階における消費者のニーズに対処できるように作成することが多く、顧客の具体的な疑問や要望に応えることを目的としています。
見込み客のナーチャリングは、製品や顧客に応じて、例えば営業担当者からの電話、対面でのミーティング、自動リターゲティング・Eメール・キャンペーンが含まれます。この段階の目標は、既に生じている関心を活用し、個別のオファーをパーソナライズして、見込み客が新規顧客になる可能性を高めることです。
企業は通常、キャンペーンを進める中で獲得に関するメトリクスを確認し、どの部分で効果が出ているかを特定します。これには例えば、戦略を改良するためのA/Bテストが含まれます。あるいは、AIなどの高度なテクノロジーを導入して、キャンペーン・データを分析し、パフォーマンスを次第に向上させる方法について提案する場合もあります。組織はこのフェーズで、最新のテクノロジーとビッグデータ・ツールを利用し、現在の状況に基づいて取り組みを継続的に最適化できます。
顧客維持のための計画がなければ、顧客獲得戦略は完全とは言えません。組織は通常、キャンペーンの実施中と実施後に、顧客維持とリピート利用促進に向けた戦略を策定します。これには例えば、自動でのリマインダーやプロモーション、ロイヤルティー・プログラムの実施、リピートに向けたその他のインセンティブが含まれます。顧客獲得と顧客維持の両方の戦略を継続的にチェックし改善する組織は、顧客ロイヤルティーを獲得し、それによって長期的な顧客生涯価値が向上します。
顧客獲得は、さまざまなプラットフォームで複数の方法を用いて同時に実施します。通常、顧客獲得担当者は、顧客獲得チャネルの多様なエコシステム全体にわたって、それぞれのコンテキストに合った、それでいて統一されているメッセージング戦略の実施に取り組みます。また組織は、ターゲット市場と消費者ペルソナに関するデータを分析し、特定のデモグラフィック・グループに向けて手法を調整する場合もあります。
主な顧客獲得手法の例としては、次のようなものがあります。
チャットボットとバーチャル・アシスタント:チャットボットとバーチャル・アシスタントは、企業のWebサイトやその他のプラットフォームで提供され、質問への回答や製品情報の説明を自然言語で行うことができます。強力なAIモデルを基盤とする、より高度なアシスタントの場合は、インテリジェントな検索を利用して、パッケージのキュレートや製品の推奨を行うこともあります。
検索エンジン最適化(SEO):SEOはオーガニック・マーケティングの一種です。検索エンジンの検索結果で上位に表示されるようにWebサイトのコンテンツを最適化し、潜在顧客が製品やサービスを見つけやすくなるようにします。
クリック課金型(PPC)広告:PPC広告は検索エンジンの検索結果の上部やソーシャル・メディア・プラットフォームに表示されます。企業はGoogle広告やFacebook広告などのツールを使用し、潜在顧客が広告をクリックした回数に応じて料金を支払います。このため、ターゲットに合ったトラフィックを獲得する、費用対効果の高い手段となります。
コンテンツ・マーケティング:コンテンツ・マーケティング・キャンペーンでは、ブログ記事、動画、その他のクリエイティブ・アセットなど、価値があり関連性の高いコンテンツを作成することによって、潜在顧客を引きつけ、関与を促します。コンテンツ・マーケティングは、SEOやソーシャル・メディアなどの手法と組み合わせて導入する場合があります。
ソーシャル・メディア・マーケティング:FacebookやTikTokなどのソーシャル・メディア・プラットフォーム上で顧客とつながっている企業は多くあります。組織がブランド認知度を確立し、自社のWebサイトやeコマース・ストアにトラフィックを呼び込むうえで、こうしたプラットフォームは役立ちます。
Eメール・マーケティング:Eメールは現在でも、見込み客を育成して顧客に転換するための強力なツールです。パーソナライズしたEメール・キャンペーンを通じて、獲得ファネルの中で潜在顧客を誘導していくことができます。この手法は、顧客獲得の各段階のうちで、検討と意図の段階、すなわち、顧客が製品に興味を示しているがまだ購入を決めていない場合に有益です。
紹介プログラム:既存顧客にインセンティブを与えて新規顧客の紹介を促すことは、効果的で低コストの顧客獲得戦略となり得ます。
アフィリエイト・マーケティング:報酬と引き換えに製品を宣伝するインフルエンサーなどのアフィリエイトや、エコシステムのパートナー企業と提携することによって、企業はリーチを拡大し、新規顧客を引きつけることができます。
顧客獲得を測定することは、戦略の効果を理解するうえで不可欠であり、ビジネスを最適化して成長させる最も重要な手段の1つです。さまざまな業界の顧客獲得担当者は一般に、複数のメトリクスを組み合わせることによってマーケティング活動を把握し適応させ、リソースの浪費を抑制して、新規顧客獲得を増やしています。
こうした主な測定基準には次のようなものがあります。
CACは、単一の新規顧客の獲得に要した総コストを表すメトリクスで、CAC比率と呼ぶ場合もあります。このメトリクスはマーケティング・コストと販売費の両方を含みます。値を求める際は、獲得キャンペーンに要した総コストを、獲得した新規顧客数で割ることで算出しますが、例えばSoftware-as-a-Service(SaaS)向けのように、特定のケース用に開発されたバリエーションもあります。CACの値が大きい場合は、獲得戦略の効率が低かったことを表し、CACの値が小さい場合は、キャンペーンが強力だったことを表しています。
顧客生涯価値は、単一の顧客が企業との関係を継続している期間全体を対象として、その顧客からの獲得が見込まれる総収益を推計する値です。この測定基準は、計算がより困難であるものの、価値を示す重要な指標となります。新規顧客の獲得よりも顧客維持の方がコストがかからないためです。CLVとCACを比較することは、顧客獲得活動の長期的な収益性を評価するうえで役立ちます。このメトリクスは、個々の顧客のCLVの計算にも、特定の顧客セグメントのCLVの計算にも適用できます。
顧客解約率とは、特定の期間内に企業との取引を打ち切った顧客の割合を表します。顧客解約率が高い場合は、顧客満足度に問題があることを示している可能性があり、顧客獲得活動の長期的な効果に影響する恐れがあります。
コンバージョン率は、例えば購入などの期待されるアクションを行った見込み客の割合を表します。コンバージョン率が高い場合、獲得ファネルを通じて潜在顧客を購入に向けて効果的に誘導できていることが分かります。
これらのメトリクスを総合的に評価することによって、顧客獲得戦略がどの程度成功しているか、また企業の戦術が包括的な目標にどの程度合致しているかを判断できます。顧客解約率が高い場合、セールス・ファネルの下層部か、場合によっては購入後の顧客体験に関して、組織が戦術を変更する必要があることを示唆している可能性があります。CLTVが低い場合、顧客獲得戦略で間違ったオーディエンスを主なターゲットにしていることを示唆している可能性があります。コンバージョン率が低い場合、潜在顧客を認知から購入まで導く方法を診断する必要があることを示唆しています。
今日の消費者は、膨大な量のコンテンツ、デジタル・マーケティング・キャンペーン、特別オファーをあらゆる場面で見せられており、顧客獲得の世界は競争が熾烈です。一般に、成果を残す顧客獲得キャンペーンは、さまざまなテクノロジーと専用ツールを導入して、購入前の調査から最終的な販売まで、最大限にシームレスで直感的なエクスペリエンスを顧客のために構築しています。
こうしたベスト・プラクティスには、次のようなものがあります。
成果を残す顧客獲得キャンペーンは一般に、適切なメッセージを適切なタイミングで適切な人に届けています。つまり、企業は多くの場合、さまざまな顧客セグメントの個別のニーズを満たすようにコミュニケーションを調整しています。以前から、顧客体験のパーソナライズはコンバージョン率に影響を与えてきました。今日の企業は、生成AIテクノロジーをマーケティングで利用することによって、特定のデモグラフィック向けにとどまらず、特定の顧客に向けたメッセージを作成できます。このようなハイパーパーソナライゼーション・キャンペーンは、個々の利用者の過去のコミュニケーションや行動を考慮に入れることによって、コンバージョン率、ひいては収益を劇的に向上させる力があります。
多くの組織は、きめ細かなデータ分析を顧客獲得戦略に反映しています。これには例えば、キャンペーンの効果を高めるために顧客の行動、嗜好、フィードバックを分析することが含まれます。今日のAI支援ツールは、1人の人間では処理し切れない量のデータを分析し、将来の市場傾向を予測する機能を備えています。顧客獲得戦略を成功させるには、これらの分析で得た推奨事項に基づいて、キャンペーンの微調整と適応を継続的に行い、現在の状況に応じた最新のメッセージを確実に届けることが必要な場合があります。
顧客獲得には、デジタル・マーケティングに関連するさまざまな定型的タスクがあります。例えば、Eメール・キャンペーンの導入、カート放棄のリマインダー、購入後のフォローアップなどです。近年は、多くの企業がこうしたタスクの一部を自動化して業務効率を向上させています。その場合、顧客獲得担当者は、より創造的で多くの労力を必要とするタスクに専念できます。オートメーション・ツールには、行動に基づいて有望な見込み客を明らかにする機能や、SEOキャンペーンとPPCキャンペーンを自動的に最適化する機能があることから、広範な顧客獲得戦略のコストを削減できます。企業は顧客獲得プロセスの効率化をさらに推進するために、AIアシスタントをますます利用しています。こうしたアシスタントは、自然言語で顧客とコミュニケーションを行い、そのやり取りを継続的に学習して、購入を検討している顧客に向けた大規模なパーソナライゼーションを行います。
オムニチャネル・アプローチでは、顧客が利用する各プラットフォームを通じて、一貫性のあるシームレスな体験を顧客に提供できます。マルチデバイスかつマルチプラットフォームの今日の世界において、この戦略は不可欠です。組織は、オムニチャネルの強固な顧客獲得戦略を構築するために、例えば一元的なCRMシステムを利用し、すべてのチャネルにわたって顧客データの全体像を維持します。また、ソーシャル・メディアのコピーから、ブランディングを加えたランディング・ページ、ターゲットに合ったEメール・キャンペーンまで、さまざまなマーケティング・キャンペーンを作成します。
新規顧客の獲得は不可欠な職務ですが、獲得した顧客の維持も同じく重要です。顧客維持を重視することで、それぞれの顧客の価値を最大化できるだけでなく、全体の顧客獲得コストを抑制できます。これには例えば、企業が課題や遅延の発生を予期し、顧客が問題に直面する前にあらかじめ連絡を受けられるようにする、事前対応型のカスタマー・サポート戦略が含まれます。一部の企業は、パーソナライズされたコンテンツ、特別オファー、定期的なコミュニケーションなど、より長期的なエンゲージメント戦略を策定しています。エンゲージメントの高い顧客や、常にポジティブな顧客体験を得ている顧客は、ブランドへのロイヤルティーを維持する可能性が高く、前年比で売り上げが増加することが見込まれます。
1. Digital-First Customer Experience Report, NICE, May 2022(ibm.com外部へのリンク)
2. What's your customer effort score?, Gartner, 5 November 2019(ibm.com外部へのリンク)