ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)の例

大きなロール巻きのアルミニウム板が保管された工場内の発電所でスチール・タービンを検査する作業員

ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)とは、パフォーマンス、効率、有効性を劇的に改善するために、コア・ビジネスのプロセスを根本から再設計することです。BPRの例は、1回限りのプロジェクトではなく、エンドツーエンドのプロセスを最適化し、冗長性を排除することに焦点を当てた、イノベーションと変革の継続的な取り組みです。BPRの目的は、ワークフローを合理化し、不要なステップを排除して、リソースの使用率を向上させることです。

BPRは、ビジネス・プロセスの再設計を通じて、組織内の規範や手法に新たな視点を投げかけるもので、典型的には、既存のプロセスに劇的な変化をもたらすことに焦点を当てています。プロセスを最適化するためのより段階的な手法であるビジネス・プロセス管理(BPM)や、現在のプロセスを改善するためのあらゆる体系的な取り組みを含むより広義の用語であるビジネス・プロセス改善(BPI)と、BPRを混同しないようにしなければなりません。このブログでは、BPM手法から恩恵を受けるBPRの例をいくつかご紹介します。

ビジネス・プロセス・リエンジニアリングの背景

BPRは、ビジネス変革を実現するために事業運営を根本的に再設計することを目的とした管理手法として1990年代初頭に登場しました。この手法は、1990年にMichael Hammer氏がHarvard Business Review誌に発表した論文『Reengineering Work: Don’t Automate, Obliterate』と、1993年に同氏とJames Champy氏が共同執筆した書籍『Reengineering the Corporation』の出版によって、広く知られるようになりました。BPRの初期のケース・スタディはFord Motor社で、1990年代にリエンジニアリングの取り組みを成功させ、製造プロセスの合理化と競争力の向上を実現しました。

規模や業界を問わず、あらゆる組織が、ビジネス・プロセス・リエンジニアリングを導入しています。最初のステップでは、BPRの目標を定義し、その後のステップでは、現状の評価、ギャップと機会の特定、プロセス・マッピングなどを行います。

BPRを成功裏に実施するには、強力なリーダーシップや効果的な変更管理、継続的な改善への取り組みが必要です。リーダー、上級管理者、チーム・メンバー、利害関係者は、BPRの取り組みを擁護し、新しいプロセスと有意義な変化の実現に必要なリソース、サポート、指示を提供しなければなりません。

BPRの例:ユースケース

サプライチェーン管理の合理化

サプライチェーンの最適化にBPRを使用する場合、物流、在庫管理、調達など、すべてのステップを入念に再評価し、再設計する必要があります。サプライチェーンの包括的な見直しには、調達戦略の再検討、ジャストインタイム在庫システムの導入、生産スケジュールの最適化、輸送および流通ネットワークの再設計などが考えられます。プロセスの自動化および最適化には、サプライ・チェーン管理ソフトウェア(SCM)、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システム、高度な分析ツールなどのテクノロジーを使用することができます。例えば、予測分析を使用すると、需要を予測し、在庫レベルを最適化することができ、ブロックチェーン・テクノロジーは、サプライチェーンの透明性と追跡可能性を向上させることができます。

利点:

  • 効率の向上
  • コスト削減
  • 透明性の向上

顧客関係管理(CRM)

BPRは、顧客関係管理(CRM)プロセスを全面的に見直したい組織にとって極めて重要な戦略です。CRMのビジネス・プロセス・リエンジニアリングのステップとして、異種ソースから得られた顧客データの統合、洞察を得るための高度な分析の使用、パーソナライズされたエクスペリエンスの提供と待ち時間の短縮を実現するためのサービス・ワークフローの最適化などが挙げられます。

CRMのBPRユースケースには、次のようなものがあります。

  • 統合CRMソフトウェアを導入することで、顧客データを一元化し、リアルタイムで洞察を得ることができるようにする
  • オムニチャネル・コミュニケーション戦略を採用して、タッチポイント全体においてシームレスで一貫性のあるエクスペリエンスを提供する
  • 現場のスタッフにトレーニングとリソースを提供することで、優れたサービスを提供できるようにする

BPRを使用することで、企業は各顧客を包括的に把握し、ニーズの予測、やり取りのパーソナライズ、迅速な問題解決を実現できます。

メリット

  • 360度の顧客ビュー
  • 売上と顧客維持率の向上
  • より迅速な問題解決

管理プロセスのデジタル化

ヒューマン・エラーを低減する目的で管理プロセスをデジタル化および自動化するために、BPRに注目する組織が増えています。この変革では、手作業による紙ベースのワークフローを、日常的なタスクにロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)などのテクノロジーを使用するデジタル・システムに置き換える必要があります。

これには、給与プロセスの合理化、人事業務のデジタル化、請求手順の自動化などが考えられます。これにより、効率、正確さ、拡張性が大幅に向上し、より効果的な組織運営が可能になります。

メリット

  • 処理時間の短縮
  • エラーの低減
  • 適応力の向上

製品開発プロセスの改善

BPRは、アイデアの立案から市場投入までの製品開発プロセスを最適化するうえで重要な役割を果たします。この包括的な見直しとして、ワークフローの評価と再設計、部門横断的な連携の促進、高度なテクノロジーを使用したイノベーションなどが挙げられます。これには、コミュニケーションと知識の共有を促すための部門横断的なチームの導入、反復型開発とラピッド・プロトタイピングを促進するためのアジャイル手法の採用、ドキュメントとバージョン管理を合理化するための製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェアなどのテクノロジーの使用などが含まれます。

このようなBPRの取り組みにより、組織は製品開発サイクル時間を短縮し、市場の需要により迅速に対応し、さらには、顧客のニーズを満たす革新的な製品を提供できるようになります。

メリット

  • 商品化までの時間の短縮
  • イノベーションの強化
  • 製品品質の向上

テクノロジー・インフラストラクチャーの更新

技術が急速に進歩する時代において、BPRはテクノロジー・インフラストラクチャーの更新とモダナイゼーションを必要とする組織にとって不可欠な戦略といえます。この変革では、クラウドベースのソリューションへの移行、人工知能(AI)機械学習(ML)といった新興テクノロジーの採用、データの管理と分析を向上するための異種システムの統合が必要となります。これにより、より情報に基づいた意思決定が可能になるのです。新しいテクノロジーを取り入れることにより、組織はパフォーマンス、サイバーセキュリティー、拡張性を向上させ、長期的な成功に向けて体制を整えることができます。

メリット

  • パフォーマンスの向上
  • 安全性の向上
  • イノベーションの促進

余剰スタッフの削減

市場動向の変化や組織のニーズに対応するため、多くの企業がBPRに注目し、人員整理や余剰人員の削減を行っています。このような戦略的な取り組みでは、組織階層の合理化、部門の統合、非中核機能のアウトソーシングなどが行われます。人員配置を最適化し、冗長な役割を排除することで、組織はコストを削減し、業務効率を高め、重要な優先事項にリソースを集中させることができます。

メリット

  • コストの削減:
  • 効率性の向上
  • コア・コンピテンシーへの集中

業務全体でのコスト削減

BPRは、事業運営における非効率性、冗長性、無駄を体系的に特定する強力なツールです。これを使用することで、組織はプロセスを合理化し、コストを削減することができます。

BPRは、付加価値のない活動の排除、リソース割り当ての最適化、運用効率の向上を実現するために、プロセスの再設計に重点を置いています。これには、反復的なタスクの自動化、ボトルネックを最小限に抑えるためのワークフローの再編成、より良い条件を確保するためのサプライヤーとの契約の再交渉、連携とコミュニケーションを改善するためのテクノロジーの使用などが考えられます。これにより、大幅なコスト削減と収益性の向上が期待できます。

メリット

  • 効率の向上
  • コストを削減
  • 競争力の強化

アウトプットの質の向上

BPRは、製造からサービスの提供に至るまで、さまざまなビジネス・プロセス全体にわたってアウトプットの質を向上させることができます。BPRの取り組みは一般的に、重要業績評価指標(KPI)を向上させます。

アウトプットの質を向上させるためのステップとして、品質管理対策の実施、継続的改善の文化の醸成、イノベーションの推進を目的とした顧客のフィードバックやその他のメトリクスの活用などが挙げられます。

テクノロジーは、プロセスの自動化にも使用できます。従業員が煩雑なプロセスから解放されると、高品質の製品とサービスを一貫して提供することに集中できるようになります。これにより、顧客の信頼とロイヤルティーが構築され、組織の長期的な成功が促進されます。

メリット

  • 高い顧客満足度
  • エラーの低減
  • ブランド・イメージの向上

人事プロセスの最適化

BPRは、人事プロセスを最適化するために不可欠です。その取り組みには、使いやすいポータルによるオンボーディング・プロセスの自動化、ワークフローの合理化、セルフサービス・ポータルおよびアプリの作成、AIを活用した人材獲得、パフォーマンス管理へのデータ駆動型手法の導入などが考えられます。

従業員エンゲージメントの促進は、優秀な人材の誘致、育成、維持にも役立ちます。人事プロセスを組織の目標や価値観と合わせることで、従業員の生産性、満足度、業績を向上させることができます。

メリット

  • 採用サイクルの短縮
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • 戦略的な人材配置

BPRの例:お客様事例

以下のお客様事例は、BPR手法とユースケースを組み合わせることで、クライアントにメリットがもたらされていることを実証しています。

Bouygues社、フランスの通信業界でAI分野のリーダー的存在に

フランスの大手通信サービス・プロバイダーであるBouygues Telecom社は、膨大なサポート・コールの対応に苦慮するレガシー・システムに悩まされていました。その結果、不満を募らせる顧客が電話がつながるまで長時間待たされ、Bouygues社は競合他社に乗り換えられるリスクにさらされていました。幸いなことに、Bouygues社はかつて、IBM® watsonx AI以前の初期のバージョンを導入する際にIBMと提携したことがあったのです。このフェーズ1の取り組みにより、フェーズ2で通信事業のコールセンターにAIを導入するための基礎が完全に構築されました。

現在、Bouygues社はIBM® watsonx Assistantを使用することで、月に80万件を超える電話に対応しています。また、IBM® watsonx Orchestrateにより、以前は手動で処理しなければならなかった反復的なタスクが減り、担当者はより価値の高い仕事に時間を確保できるようになりました。全体として、担当者の電話前後のワークロードは30%削減されました。1さらに、以前は部分的にしか分析されていなかった800万件の顧客と担当者の会話が、現在では一貫した精度で要約され、実行可能な洞察が得られるようになりました。

このようなテクノロジーを組み合わせることで、Bouygues社はカスタマー・ケアの世界におけるディスラプターとなり、年間500万米ドルもの運用コストの削減を見込み、AIテクノロジーの最前線に立つことになりました。1

Finance of America社、顧客中心の変革を通じて生涯にわたるロイヤルティー獲得を推進

IBMとの共創により、住宅ローン融資会社のFinance of America(FOA)社は、顧客を業務の中心に据え直し、同社自身と、同社のサービス対象である住宅の潜在顧客の両方にとって大きな価値をもたらすことができました。

この目標を達成するため、FOA社はカスタマー・サービスと顧客維持を第一義とする新しい戦略と機能の両方を迅速かつ繰り返し導入しました。IBMが主催するデザイン思考ワークショップから、チャネル全体で一貫したブランド・エクスペリエンスを実現するためのロードマップが作成されたことにより、担当者の作業が簡素化され、顧客の申請プロセスが合理化されました。

この変革の結果、FOA社はわずか3年で顧客基盤を2倍にすると予測されています。また同社は、同じ期間に、収益を50%以上、収入を80%以上増やすことを目指しています。現在、同社は、生涯にわたる顧客ロイヤルティーの促進に役立つ債務アドバイザリーなど、より充実したサービスを提供できるよう準備を整えています。2

BPRの例とIBM

IBMによるビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)は、コア・プロセスを厳しく評価し、改善を必要とする分野を特定して再設計します。ストラテジストは、全体を俯瞰することで、サプライチェーン、カスタマー・エクスペリエンス、財務業務などの分野を分析できます。BPRサービスの専門家は、新興テクノロジーを組み込み、既存のプロセスを全面的に見直すことで、ビジネスを総合的に改善することができます。また、インテリジェントなワークフローを使用して新しいプロセスを構築し、収益性を高め、冗長性を排除して、コスト削減を優先します。


 

 

著者

Matthew Finio

Staff Writer

IBM Think

脚注

1. IBMのワオ・ストーリー:Bouygues社、フランスの通信業界でAI分野のリーダー的存在に。最終更新:2023年11月10日。

2. IBMのワオ・ストーリー:Finance of America社、顧客中心の変革を通じて生涯にわたるロイヤルティー獲得を促進。最終更新:2024年2月23日