IBMは2024年5月、アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)の環境構築から運用監視、セキュリティーまで、総合的なサービスを提供する株式会社スカイアーチネットワークスを買収しました。これにより、IBMは同社のAWSに関する専門知識と優れたノウハウを、IBMのハイブリッドクラウド向けサービスなどと組み合わせて提供し、企業の変革とビジネスの成長をさらに力強く支援できるようになります。両社の協業によって生まれるシナジーやお客様への提供価値について、Japan AWS Ambassadorsとして活躍するAWSエキスパート同士の対談を通じてご紹介します。
山崎 まゆみ まず買収が決まった際、神津さんはどのように感じましたか。率直な感想をお聞かせください。私は直属の上司がスカイアーチネットワークスのCEOに就任すると知り驚きましたが、同じAWS Ambassadorである神津さんとともに新たな取り組みができることへの期待も大きく膨らみました。
私は2018年からIBMでAWSとのアライアンスを担当してきましたが、IBMがAWSパートナーとしてお客様に一層貢献していくためには、AWSサービスの再販体制など組織として強化すべき機能があると感じていました。私自身や所属組織だけでできることは限られているため、課題解決に向けてマネジメント層に相談してきたという経緯があります。IBMがスカイアーチネットワークスとともにAWSのビジネスを推進することで、不足していた機能が補完され、これまで十分に対応できなかった領域にも手が届くようになると考えています。
神津 崇士 私も強い期待を抱きました。スカイアーチネットワークスがIBMグループの一員となることで、より大きな資源とサポートを得られ、クラウド・サービスの技術開発や提供がさらに加速するでしょう。また、IBMの豊富な経験とノウハウを活用することで、AWSに特化した当社のエキスパート・チームの専門性を存分に発揮できる環境が整うと考えています。
一方で、企業文化の違いや組織統合の課題も懸念しています。スカイアーチネットワークスの独自性や柔軟性が損なわれないよう、両社の良い面を生かしていくことが重要です。いずれにせよ、今回の買収はスカイアーチネットワークスにとって大きな飛躍の機会です。この変化の中で、私自身もエンジニアとしての力を最大限に発揮し、新たな挑戦に取り組んでいきたいと思っています。
山崎 IBMのお客様の中には、スカイアーチネットワークスをご存じない方もいらっしゃると思います。どのような会社なのか、簡単にご紹介いただけますか。
神津 スカイアーチネットワークスは2001年に創業し、当初はお客様の要望に応じたサーバー環境を提供して運用・保守を行うマネージド・サービス・プロバイダー(MSP)として事業を展開していました。その後、クラウドが普及するのに伴いAWSビジネスへの注力を強め、2014年にAWSアドバンストコンサルティングパートナー(現:AWSアドバンストティアサービスパートナー)に認定されました。それ以降、各種認定を取得しながらAWSを用いたソリューション提供力の向上に努めてきました。
山崎 スカイアーチネットワークスの最大の特長はAWSのスペシャリスト集団である点ですね。具体的にどのようなエキスパートが所属し、どのような強みを持っているのでしょうか。
神津 当社のエンジニアは、サーバーレス・アーキテクチャーやコンテナ技術など、最新のクラウドネイティブ技術を活用したシステム設計・構築に優位性を持っています。その技術力はAWSからも高く評価されており、2024年には私がJapan AWS Ambassadorに選出されたほか、Japan AWS Top Engineersを2名、Japan AWS All Certifications Engineersを6名輩出しています。これは同規模の企業と比較しても優れた実績だと自負しています。また、AWS認定トレーニングパートナーとしてAWS人材の育成にも力を入れており、約160名の専門人材が400を超えるAWS認定資格を取得しています。
さらに、当社はAWS MSPパートナープログラムやAWS Well-Architectedパートナープログラム、AWSレベル1MSSPコンピテンシーなど難関認定を含む12の認定を取得しており、AWSパートナーの上位5%に属しています。
スカイアーチネットワークスが保有する認定・資格(2024年11月現在)
AWS認定
AWS 認定資格(個人)
山崎 提供しているソリューションや、これまでご支援してきたお客様についても教えてください。
神津 現在、当社は「AWS総合支援」として、「AWS内製化支援」や「AWS導入支援」「AWS運用代行」「AWSセキュリティ」「パートナー・ソリューション」などのサービスを提供しています。これらを適切に組み合わせることで、AWS環境の検証から設計・開発、運用、さらにはAWS利用の最適化まで、一気通貫のサービスを提供できます。この総合的なアプローチが、当社の持つ特長の一つです。
また、これまでに1万件を超えるAWSプロジェクトを手掛けており、広告代理店、メディア・エンターテインメント、エンタープライズ分野の企業を中心に豊富な実績を積み重ねてきました。
例えば、モダナイゼーションの領域では、オンプレミスの数千台規模のサーバー環境を、AWS上の大規模なサーバーレス・コンテナ環境へ移行した事例があります。また、オンプレミスのさまざまな業務アプリケーションのAWS移行も支援しています。
さらに、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインを含むサーバーレス環境の構築や、AWSのサービスを活用したIoT環境の構築にも数多く取り組んできました。加えて、ETL(データの抽出、変換、ロードの略)を含むデータ・ウェアハウス(DWH)環境の構築でも実績があり、AWS以外の環境へのDWH構築も含め、多くのお客様をご支援しています。
山崎 素晴らしい実績ですね。IBMもAWS技術者の育成に注力しています。2022年にはグローバルに倣い、日本IBMでもAWS Strategic PartnershipというAWS専門組織を立ち上げ、私は技術リーダーとしてAWS技術者の育成などを推進してきました。IBMには業種別の組織と業種横断の組織がありますが、現在はそれら全ての組織にAWSエンジニアが在籍しています。
国内の認定資格者数は公表していませんが、グローバルではプレミア・レベルのサービス・パートナーとして17のAWSサービス認定を有し、2万3,000名を超える認定資格を持つプロフェッショナルを擁しています。IBMは急成長しているAWSパートナーの一つであり、2023年には日本リージョンでもGSI Partner of the Yearを受賞しました。さらに、2024年に私がJapan AWS Ambassadorに選出されたほか、Japan AWS Top Engineersを4名、Japan AWS All Certifications Engineersを22名輩出しています。
神津 IBMはマルチクラウド・ハイブリッドクラウドのプレーヤーでもあり、IBM watsonxをはじめとするAIや各産業界向けのソリューションを展開している点も大きな強みですね。
山崎 現在、watsonxなどのAIとハイブリッドクラウドを組み合わせて、金融、製造、流通など、さまざまな業界のデジタル変革(DX)を加速させるためにソリューションの拡充を進めています。
また、近年は人材不足などの影響で、多くの企業のIT部門が自社システムの開発・運用に関して課題を抱えています。IBMは、AIと各種のソリューションを活用し、システム開発・運用を高度に自動化・効率化する「IT変革のためのAIソリューション」の提供を開始しており、今後はAWSを利用するお客様にも積極的にご提案していきたいと考えています。
神津 IBMならではの魅力的なソリューションですね。当社のソリューションにもこれらのアセットを取り入れることで、お客様の層を広げ、より良いサービスを提供していけるはずです。
山崎 ぜひ実現していきたいですね。IBMとスカイアーチネットワークスの協業が、お客様にどのような価値を提供していくのかについては、後編で詳しくお話ししたいと思います。