人工知能(AI)を活用している最先端の人々は、瞬く間に変化しています。
ある日、タコス好きな人が、地元のドライブスルーでフレンドリーなチャットボットに注文していました。1また、AIツールを使用してサステナブルな香水をデザインする調香師2や、ロボット除草機を導入する有機野菜農家3、あるいは、遠近両用メガネの使用者は、AIを搭載した目の検査を受けます。4
全体像を把握するために優れた視力は必要ありません。AIのユースケースとメリットが目まぐるしいスピードで拡大するにつれて、AIを使用する人間の数も膨大となります。かつては難解だった高度なAIテクノロジーが、消費者とビジネス・ユーザーの両方をサポートしています。この普及率は、AIの民主化を示す指標であるとも言えます。
しかし、現在のAI慣行を詳しく見てみると、AIの民主化にはまだ改善の余地があることが示唆されています。その理由を理解するためには、民主化に何が必要か、それが今日の個人や企業にどのような影響を与えるか、そして将来どのような影響を与えるかを検討することが重要です。
AIの民主化の定義は、長年にわたって変化してきました。大まかに言えば、AIのアプリケーションと機能がより公平に社会全体に広がることと考えられます。より詳細なレベルでは、研究者は通常、AI民主化の少なくとも3つの核となる側面について同意しています。5
AI使用の民主化とは、機械学習(ML)の専門家以外の幅広いユーザーにAIへのアクセスを提供することを指します。アクセスを向上させる一般的な手段としては、AIのコストを削減することや、人々がすでに使用しているツールやプラットフォームにAIを組み込むことなどが挙げられます。
これは、AIが世間一般の話題になる何年も前から存在してきた概念です。たとえば、2016年、Microsoft社は「象牙の塔からAIを解放し、すべての人が利用できるようにする」というアプローチでAIを民主化することを宣言しました。6AIの利用が民主化されることは、より多くの人々が私生活や仕事においてAIが持つ性能のメリットを享受できるようになるということです。
消費者向けの生成AIアプリケーションのリリースと急速な普及は、消費者の間でAI利用の民主化が進んでいることを示唆しています。2023年の世界消費者心理調査では、回答者の75%がAI駆動型ツールを使用していることがわかりました。7最も人気のある消費者向けの大規模言語モデル(LLM)アプリケーションであるOpenAI社のChatGPTは、毎週2億人以上のアクティブ・ユーザーを抱えています。
ただし、ビジネスでは、AIの活用は規模や業界によって異なります。たとえば、IBMが委託した調査では、従業員1,000人を超えるエンタープライズ・レベルの組織の42%が、積極的にAIシステムを使用しており、さらに40%がAIテクノロジーを検討していることがわかりました。しかし、中小企業(平均従業員数が48人未満)を対象とした調査では、AIを使用して商品やサービスを生産している企業は4%未満であることが判明しました。
米国国勢調査局が実施したこの調査では、導入率は業種・業務によっても異なり、外食産業と建設業が最も低い結果でした。ハイテク企業が最も高い利用率であったことは、予想しやすい結果でした。8
AI開発の民主化とは、AIソリューションの開発により多くの人を含めることを指します。しかし、その人たちが誰であるかは、各自の解釈次第となります。多くの場合、開発者、研究者、データサイエンティストに、大手ハイテク企業ですでに利用可能な無料または低コストのコンピューティングリソースや技術ツールを提供することが当てはまります。
また、開発の民主化には、AIソリューションやモデル開発に技術者以外のユーザーを含めることも関係します。それは、限られた専門家の枠を超えて、必ずしもAIアルゴリズム、データセット、コンピューター・サイエンスについて深い理解を持っていない人々に目を向けることを意味します。
これは、技術的なノウハウを持たないユーザーでも、AI搭載アプリケーションを構築・適応させることができるツールを提供することで実現できます。この概念は、企業内のデータ民主化と一部類似しています。技術的なバックグラウンドに関係なく、すべての従業員が意思決定プロセスにデータ・サイエンスを組み込むことができるシステムを作成し、ツールを導入するプロセスです。
どちらの場合も、AI開発の民主化は、AIイノベーションの将来にとって良いことであると考えられています。このようなイノベーションは、AIモデルを最適化して、現在よりも幅広い利害関係者やユーザーに、より効果的にサービスを提供できるようになる可能性があります。たとえば、以前は自社のニーズに合わせてAIアプリケーションを作成する余裕がなかった中小企業でも、ツールやサービスがより手頃な価格になったため、そのような取り組みがより実現しやすくなる可能性があります。
一方、民主化された開発はAIバイアスを防ぐのに役立つため、過小評価されているグループの消費者もメリットを受ける可能性があります。AIバイアスとは、アルゴリズム設計、AIトレーニング・データ、その他のAI開発の側面に社会的偏見が意図せず埋め込まれることです。AIバイアスは、過小評価されているグループの人々にとって、有用性がない、あるいは有害な結果を生み出す可能性があるため、経済や社会に参加する能力を妨げます。
Center for the Governance ofAIの研究者が指摘するように、バイアスの問題の一部は、大手AI企業が通常、開発者の「狭い人口統計」を採用しているという事実に起因しています。研究者らは、AI開発に参加する人が増えることで、より多様な関心に対応するアプリケーションが実現する可能性があると結論づけています。9
現在では、AIの開発とイノベーションの大部分は、依然として特定の国または地域や利益分野に集中しています。2024年のある調査によると、米国の開発者は、開発レベルで第2位となっている中国と比較して、年間でAIの基盤モデルを5倍生産しました。一方、テクノロジー業界の開発者は、学術会から生まれるモデルと比較して、4倍近くのモデルを開発しました。10
AIガバナンスとは、AIシステムとツールが安全かつ倫理的であることを保証する取り組みにおけるプロセス、標準、ガードレールを指します。ここで、AIガバナンスの民主化とは、開発者やテクノロジー企業を超えて、より多くの人々や組織がAIテクノロジーの安全で倫理的なデプロイメントに対して影響力を持つという考え方です。
ガバナンス推進派は、このような民主化は、差別やプライバシー侵害など、AIデプロイメントに関連する害を最小限に抑えるために役立つと主張します。また、AIシステムへの信頼性を高めるAIの説明可能性、解釈可能性、透明性などの特性の向上を促進することにも役立つ可能性があります。
ただし、AI開発の民主化と同様、ガバナンスの民主化に誰が参加すべきか、その詳細はさまざまである可能性があります。AIデプロイメントの影響を受ける人々を特定して含めるべきだと主張する人もいます。11 一方、社会のすべての人たちが何らかの形でAIガバナンスに関与すべきであると提案する人もいます。12
ガバナンスの民主化は、企業レベルで実施可能で、企業は従業員や顧客からAIシステムのガバナンスに関するインプットを収集します。より広い規模では、官公庁・自治体の行動(すなわち、自主的なフレームワークや義務的な規制)や、民間部門と公共部門の協力的な取り組みを通じて、民主化の取り組みが行われています。
さまざまなツールやテクノロジーが、より多くの個人や組織が独自のAIアプリケーションを開発できるようにすることで、AIの民主化をサポートします。
オープンソース・ソフトウェアは、ユーザー・コミュニティによって共同で開発・更新されるソフトウェアです。また、誰でも無料で使用、変更、再配布できます。AIに関しては、 IBMのパートナーであるHugging Face社が提供するようなオープンソースのモデルライブラリには、企業が特定のユースケースに適応できる基盤モデルが含まれています。
追加のオープンソース・ツールは、ユーザーが利用可能なモデルを最大限に活用するのに役立ちます。たとえば、IBM Researchと Red Hatによるオープンソース・プロジェクトであるInstructLabは、合成データを生成し、LLMトレーニングの加速に役立ちます。合成データは、特定の目標、価値、ユースケースに合わせて調整することができる一方で、同様の要件を満たす実世界のデータを収集するのは困難で、法外なコストがかかります。
AIシステムを正常にカスタマイズして導入するために必要なインフラストラクチャは、AIソリューションの導入を検討している組織にとって大きな障害となる可能性があります。このようなインフラストラクチャには、データ・ストレージ・ソリューション、コンピューティング・リソース、機械学習フレームワーク、機械学習オペレーション(MLOps)プラットフォームが含まれます。
幸いなことに、SaaSモデルにより、企業は大規模なインフラストラクチャ投資を行わずにAIの導入を加速できます。IBMとAmazon社のコラボレーションにより、企業がAIに重点を置いたSaaSにアクセスしやすくなる可能性があります。IBMは現在、Amazon マーケットプレイスを通じて主要なデータ・ストレージとAIガバナンスのソリューションを提供しています。
ノーコードツールとプラットフォームを活用することで、コーディング・スキルが限られている人やスキルがない人でも、ある程度のAIアプリケーションを作成できます。Amazon SageMakerCanvasのようなノーコード・ソリューションは、AI開発ワークフローの自動化を提供し、可視化中心のアプローチに向けたドラッグ・アンド・ドロップ・インターフェースを特徴としています。
近年、民間部門および公共部門では、使用、開発、ガバナンスというAI民主化における3つの形態すべてを推進するための、いくつかの取り組みが登場しています。これらのイニシアチブには、次のものが含まれます。
AIガバナンス・アライアンス(AIGA)は、世界経済フォーラム(WEF)での責任あるAIリーダーシップ・サミットの後に、2023年にWEFによって創設されました。AIGAは、AIの開発と導入における包含性、倫理性、持続可能性を促進しています。その運営委員会は、アライアンスの成果に関する顧問を担当しており、教育機関の指導者や政府職員、およびGoogle社、IBM、Meta社、OpenAI社などのテクノロジー組織の幹部で構成されています。
米国国立科学財団の国家AI研究リソース(NAIRR)による試験的プロジェクトは、米国全土の研究者にAIインフラストラクチャーのリソースを提供する取り組みです。この試験的プロジェクトは、Amazon Web Services社、Google社、Hugging Face社、IBM、Intel社、Meta社、Microsoft社、OpenAI社を含む12の連邦機関および26の組織とのパートナーシップで構成されています。
さまざまな政府や政府間組織が、AIシステムの開発と導入における公平性と透明性の向上など、重要な性質の向上を促進するために、信頼できるAIフレームワークを開発してきました。このようなフレームワークには、経済協力開発機構のAI原則や、米国国立標準技術研究所のAIリスク・マネジメント・フレームワークなどがあります。少なくとも一つのフレームワーク(EUの信頼できるAIに関する倫理ガイドライン)の原則が、後に法律(EUAI法)に組み込まれました。
1 “Taco Bell is rolling out AI ordering in hundreds of drive-thrus. Here's how it works.” ZDNET. 1 August 2024.
2 “Is the Future of Fragrance In the Hands of AI?” Fashion. 2 January 2024.
3 “Carbon Robotics raises $70M to scale up AI-powered robotic farming solutions.” SiliconANGLE. 21 October 2024.
4 “Meet the 'Eyebot': An AI-Powered, 90-Second Vision Test.” CNet. 17 October 2024.
5 “Democratizing AI’ and the Concern of Algorithmic Injustice.” Philosophy & Technology. 14 August 2024.
6, 12 “Democratizing AI.” Microsoft. 26 September 2016.
7 “Consumers Know More About AI Than Business Leaders Think.” BCG. 24 April 2024.
8 “How Many U.S. Businesses Use Artificial Intelligence?” United States Census Bureau. 28 November 2023.
9, 11 “Democratising AI: Multiple Meanings, Goals, and Methods.” Association for Computing Machinery Digital Library. 29 August 2023.
10 “Artificial Intelligence Index Report 2024.” Stanford University Human-Centered Artificial Intelligence. Accessed 28 October 2024.
13 “Here are 7 free AI classes you can take online from top tech firms, universities.” Fortune. 5 September 2024.
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