カスタマー・サービスを通じて顧客体験を向上させることは、あらゆる組織にとって最も重要な分野の1つです。その理由は単純です。顧客がいなければ、組織は一夜にして崩壊してしまうからです。カスタマー・サービスは、カスタマー・ケアまたはカスタマー・サポートとも呼ばれ、組織がタイムリーなアクションと信頼のおける回答によって顧客のニーズを確実に満たすためのアクティビティに関連するものです。
顧客とのやり取りはそれぞれ異なりますが、顧客維持を向上させ、顧客基盤を拡大したい組織は、効果的なカスタマー・サービス・ストラテジーを策定する必要があります。しかし、この戦略はオートメーションと人工知能(AI)なしでというわけにはいきません。企業は、オートメーションやAI搭載ツールなどのテクノロジーを採用することで、迅速かつシームレスなサービスを提供しています。もはや顧客からのフィードバックに応えるだけでは十分ではありません。顧客が期待するのは、その企業がプロアクティブで応答が早く、いつでも対応してくれることです。
IBM Institute for Business Value(IBV)によると、今日では、カスタマー・サービスがCEOにとって生成AIの最優先事項に躍り出ています。CEOのほぼ半数が、その原動力となっているのは利害関係者であり、顧客が求めるのは新しいテクノロジーの利用を加速させることだと感じている、と回答しています。
最高のカスタマー・サービスを提供するためには、カスタマイズと、顧客が抱える問題への対応方法に関する組織全体のルールとを組み合わせて、パーソナライゼーションと拡張性の最適な組み合わせを見いだすことが求められます。さらに、AIツールと人間のエージェントを組み合わせる企業は、顧客にとっての価値が高まり、文字どおりのカスタマー・サービス・ストラテジーを構築することができます。
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これまで以上に、カスタマー・サービスの卓越性が重要となっています。Salesforce社『State of the Connected Customer Report』によると、サービスの質の悪さが、消費者が企業からの購入をやめる最大の理由となっています。サービス専門家のほとんどは、コロナ前と比べて顧客の期待が高まっていると述べていますが、組織もそう認めています。
現在、顧客が別の製品に切り替えたり、メンバーシップをキャンセルしたりする傾向が直近のどの時期よりも高まっています。コロナ禍で在庫切れ、注文のキャンセル、実店舗での買い物が困難な状況が発生したため、それまでどおりの顧客体験が得られなくなり、カスタマー・ロイヤルティが低下したのです。
McKinsey社の調査結果によると、コロナ時に消費者の75%が新しいショッピング行動を試み、39%が既存のお気に入りブランドよりも新しいブランドを選んでいます。この傾向はZ世代とミレニアル世代の間でより顕著で、顧客ニーズへの対応の重要性が高まっていることのエビデンスとなっています。
顧客は依然として製品の価格、入手しやすさ、利便性など多くの要因に惹かれていますが、組織が顧客の問題点を理解してほしいとも考えています。さらに、顧客は組織に対し、製品やサービスについて直接コミュニケーションを取って回答してもらえるシンプルな方法を提供するよう望んでいます。Zendesk社によると、約70%の顧客が、カスタマー・サービスのエクスペリエンスに基づいて購入の決定を下していると報告しています。
そのため、大手組織は優れた顧客体験の提供にこだわっています。顧客のニーズを満たし、一瞬で発生する問題への対処に備え、顧客の期待に応えるべく可能な限りのことを行わなければなりません。
優れたカスタマー・サービス、良いカスタマー・サービス、悪いカスタマー・サービスの違いとは、顧客を維持できるか、競合他社に奪われてしまうという違いとなる場合があります。
優れたカスタマー・サービス・ストラテジーで、企業に求められるのは、ワークフローに新しいテクノロジーを導入することにオープンであること、新しい慣行の開発には時間がかかるとわかっていることです。カスタマー・サービスのプロセスをより高いレベルで機能させ、顧客第一のサポートを顧客に提供するために、企業が活用できるストラテジーは複数あります。
今の顧客は、商品やサービスを購入する組織の価値と、組織がもたらす価値をより意識しています。また、組織から望むものを得られない場合、かつてないほど簡単にソリューションや製品を切り替えられることも知っています。
つまり、組織はロイヤル・カスタマーを引きつけ維持するために最善を尽くす必要があるのです。見積もりは業種・業務によって異なりますが、既存の顧客を維持するよりも新規顧客を募る方がコストがかかることは十分に文書化されています。
組織のカスタマー・サービス・ビジョンでは、従業員が優れたカスタマー・サービスを提供する上で自分の役割がいかに重要であるかを理解するための指針を定めることができます。
このような点から、組織は、カスタマー・ジャーニーに潜在するあらゆるタッチポイントについて、価値を強化し、顧客がエクスペリエンスに満足していることを確実にする機会として、さらに留意しなければなりません。組織は高い価値を持つ既存顧客を驚かせ、喜ばせるために、どうすれば一層の価値を提供できるかを問う必要があります。
その方法の例としては、限定版や限定特典を提供するか、可能であれば他の方法で顧客を驚かせたり喜ばせたりすることが挙げられます。前もって顧客に満足してもらうことで、将来何か問題が発生した場合の影響を軽減できます。
人間の担当者はカスタマー・サービス・ストラテジーの重要なコンポーネントであることに変わりありませんが、オートメーションやAIのような技術的進歩のおかげで、組織は、より多くの顧客により効果的にサービスを提供できるようになり、またオペレーションの合理化もできます。具体的には、AIを使用したワークフローの最適化、いわばインテリジェントな自動化への関心が高まっています。AIエージェントをWebサイトやアプリに統合すると、コールセンターの効率が高まり、コスト削減になります。
AIで実現されるのは、自動チャット支援、担当者が顧客と電話する際のライブ・スクリプトの提案、問題の予測的解決、そしてカスタマー・サービス担当者が迅速かつ効果的に仕事を行うために役立つ強化機能です。
この他に、AIがエージェントの生産性向上の助けとなるのは、問い合わせにより迅速に応答するために利用できる洞察や関連情報へのアクセスを提供することです。IBM watsonx Orchestrateのある企業は、データ・セキュリティーを優先し顧客情報を保護するカスタマー・サービスに向けたインテリジェントなAIエージェントを構築できます。
今日のカスタマー・サポート管理はかつてないほど複雑化しています。顧客が組織に個別連絡を取ろうとしたら、カスタマー・サービスに電話するか手紙を書くのが主流チャネルだった時代は、とうに過ぎ去りました。
多くの場合、組織はカスタマー・サービスの問題すべてを1つのヘルプデスクに集約するというカスタマー・サポート戦略を展開します。顧客からの問題は、専門知識や空き状況に基づいて対応可能な担当者に送られます。
顧客は今や、テキストベースのソーシャルメディア、オンラインビデオ、チャットルーム、ヘルプフォーラム、チャットボットなど、さまざまなチャネルでの送受信ができます。
それ故、最前線にいるカスタマー・サービス・チームは、顧客の問題がどこで提起されたとしても、リアルタイムでの対処に熟達していなければなりません。チームに求められるのは、組織が顧客の質問に対応しているかどうかは他の顧客から簡単に見えると理解すること、そして、自らの説明内容を正確に把握することです。
現代のカスタマー・サービス・アプローチだと、多くの組織では、将来に向けてカスタマー・サービス担当者を育成するための人材開発イニシアチブに投資する必要があります。
たとえばカスタマー・サービスは現在オムニチャネル環境で行われており、複数のチャネルで発生する会話に優先順位をつけなければならない場合があります。組織はチャットボットをデプロイして顧客の一般的なリクエストを理解することにより、応答までの時間を短縮できます。
オートメーションでのこのストラテジーはコストの節約になりますが、チャットボットで顧客の問題をうまく解決できない場合、組織はカスタマー・サポート・チームにいる人間のオペレーターに素早く切り替える必要があります。高水準のカスタマー・サービス基準を維持することは非常に重要です。
こうしたリクエストを複雑にしているのは、数千人(数百万人かもしれません)の目にさらされることで、口コミによる情報交換を通じたカスタマー・サービスの問題がさらに引き起こされるという点です。たとえば、購入後わずか数日で製品が動かなくなったと顧客が苦情を言うと、そのメッセージを読んだ一部の見込み客が同じ製品の購入を思いとどまることがあります。
これは両刃の剣となります。顧客がブランドでのポジティブなエクスペリエンスを話してくれれば、その組織は新しい顧客を獲得できる可能性があるのです。
多くの顧客は担当者と直接話すことを好むかもしれませんが、自分で問題の解決策を調べて解決する方がよいという顧客もいます。したがって、組織はよくある質問(FAQ)や大規模な情報データベースなどの教育リソースに投資して、自分で答えを見つけたい顧客に豊富な情報を提供する必要があります。
このアプローチを取るとカスタマー・サポート担当者がコストのかかる1対1の会話を行う必要がなくなるため、一定層の顧客に対するソリューションの有用性が高まり、総コストが部分的に軽減されます。また他のサポート担当の手が空き、担当者から解決策を聞きたい顧客に、より多く直接対応できるようになります。
顧客関係管理 (CRM)システムは、既存顧客と新規顧客をより詳しく知るための優れた方法です。CRMが非常に重要になるのは、カスタマー・サービスのオペレーションで、顧客に問題が発生したかどうか、発生したならそれはいつであって解決はされたのか、そして必要になるかもしれないフォローアップ手順について把握するときです。
また、ある特定の顧客が以前より多くの製品を購入しているか、それとも購入する製品が減っているかを判断することもできるため、組織は適切なリソースをデプロイして価値を最大限に引き出せるようになります。ただし、顧客情報の保護に関しては法的および信用上の義務があるため、組織は何としてでも顧客データを守らなければなりません。
他にも、AIテクノロジーは、信頼性の高い顧客フィードバック・ループの開発にも役立つので、企業は顧客のフィードバックを簡明な方法で管理できます。オートメーション・ツールを利用して、シンプルなフィードバックのリクエストと回答を作成しておくと、カスタマー・サービスの人間のチームメンバーが解放され、より緊急性の高い問題に対応できるようになります。
メトリクス、KPI、継続的な測定なしでカスタマー・サービス戦略は完成しません。組織は顧客満足度を高めるために適切な重要業績評価指標(KPI)を設定し、それを定期的に追跡する必要があります。
組織は、定義が明確で達成できるカスタマー・サービス目標を確実に設定することが求められます。その優れた方法が、SMART(具体的かつ測定可能で、妥当な期間内に達成可能な)フレームワークの使用です。目標に具体的なターゲットを設定するものです。この方法なら、目標を達成したかどうかを組織が簡単に評価できます。
たとえば、顧客を100%完璧に満足させるのはほぼ不可能です。カスタマー・サービス担当者に問題を提起した顧客全員が満足した上でその場を去る可能性も低いのです。組織はまず、これらの重要領域における取り組みを基準に照らして評価し、具体的な改善目標を設定し、進捗状況を追跡する必要があります。
各組織にはそれぞれのベンチマーク、したがって独自の目標がありますが、SMART目標を設定するための測定可能なメトリクスをいくつか紹介します。
組織は既存顧客を確実に維持し、紹介や肯定的な口コミを通じて新規顧客を獲得する強力なカスタマー・サービスへの投資を継続する必要があります。競合他社より優れたカスタマー・サービスを提供することは、ビジネスを成長させ、高い評判を維持する方法の1つです。先述のガイドラインに従うことで、組織は競争が激化する市場で組織は競争が激化する市場で成功できます。
AIが近いうちになくなるようなことはないと予想されています。実際、IBM Institute of Business Value(IBV)によると、エグゼクティブの85%は、生成AIが今後2年間で顧客と直接やり取りするようになる、と述べています。企業は生成AIを熱心にデプロイしようとしていますが、ビジネスリーダーが忍耐強くあることでAIに理想的とは言えない結果を出させないようにすることは欠かせません。
IBMでは、10年以上にわたり、この分野で信頼できるAIを適用できるよう企業を支援してきました。生成AIは、複雑な質問内容を理解し、まるで人間と対話しているかのような応答を生成する機能により、顧客サービスとフィールド・サービスを大幅に変革する可能性を秘めています。
IBM watsonx Orchestrateは、コードの記述ができなくてもカスタマー・サービス向けAIエージェントをIBM の直感的なインターフェースで構築できるソリューションです。今日の顧客は卓越したサービスを期待していますが、それはAIと人間のエージェントが協力し合うことなしには実現できません。
カスタマー・サービスに生成AIを使用することで、効率化とエージェント強化を実現できます。
いつでもどこでも即座に正確なカスタム・ケアを提供する対話型AIを使用すれば、標準的なサポートを優れたカスタマー・ケアに変えることができます。
生成AIを活用した優れたAIカスタマー・サービス用チャットボットを構築すれば、顧客体験を向上させ、ブランド・ロイヤルティーと顧客維持率を高められます。