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小さく始めて勢いを増していきましょう
複数の画面の前に立つ人物のアイソメ図
最初の一歩は小さな一歩です

もはやITとビジネスは2つの個別のものではありません。ITイコールビジネスです。—CEOによる生成AIガイド

「組織にITオートメーション・ソリューションを導入しようとしている人への最善のアドバイスとは何でしょうか」との問いに、調査対象のIBMの経営幹部は全員、「まずは小さく始めることです」と異口同音に答えました。その理由と、ITオートメーションを導入するために実行できる3つの手順について詳しく説明します。

「すべての計算可能な問題はコンピューターに任せるべきです。コンピューターで計算できることであれば、それに任せて、私たちは批判的思考、交渉、人間関係など人間ならではの特性を活かすようにします。デジタル・トランスフォーメーションはビジネス・アプリケーション担当者やナレッジ・ワーカーにだけ関係するものではありません。それらが依存するすべてのITシステム、アーキテクチャー、インフラストラクチャーが関わってきます。AIはあらゆるレベルで組織全体の変化を推進しており、導入と追跡には高レベルの監視が必要となります」—William Lobig、IBM Automation Software製品管理担当バイスプレジデント

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CEOによる生成AIガイド

ステップ1:達成可能な小さな目標を立てる

優れた戦略は、生産性を向上させることや、平均復旧時間(MTTR)を短縮するための新しいツールを追加するなど、何を達成しようとしているのかを明確に理解することから始まります。IT組織にAIとオートメーションを導入および実装する場合、最初のステップは小規模かつ戦略的に考えることです。

「採用したいストラテジーについて、明確かつ規定的であることが重要です。ITオートメーション・ソリューションを追加する際には、それが部署横断的な共同作業になることを理解しましょう。プロセスを合理化する新しいソフトウェアは、それを導入するチームだけでなく、部門を超えたチームやそれ以外のチームにも影響を与えます。この新しい実装を利用してオートメーション導入の文化を促進し、これは置き換えではなく拡張であり、従業員としての能力を強化する一つの方法であることを人々が理解できるようにしましょう」—Tim Cronin、IBM Automation製品マーケティング・マネージャー

組織が定期的に実行する一連のプロセスまたは機能を文書化することから始めてください。次に、ビジネスの大部分に関わるものを選択します。これは通常多くの手作業が関連しており、オートメーションを導入すべき機が熟したプロセスであることを意味します。たとえば、新規顧客をオンボーディングするプロセスでは、10人の異なる担当者または部門とのやり取りが必要になる場合があります。各ステップで必要な業務を確認し、これら10種類のインタラクションのうち、時間を短縮した場合に、資源または時間の観点から組織にとって最も価値の高い機会を示すのはどれかを判断します。

「千里の道も一歩から。物事を急いでやろうとすると、プロセスの一部を見逃してしまい失敗します。そうではなく、管理しやすく、合理的で、多くの手作業が伴うものを選択してください。そこから構築していきます。なぜなら、いくつかの小さな成功が積み重なって、最終的には大きな勝利につながるからです」—Melissa Long Dolson

 

 

物事を急いでやろうとすると、プロセスの一部を見逃してしまい失敗します。そうではなく、管理しやすく、合理的で、多くの手作業が伴うものを選択してください。そこから構築していきます。 Melissa Long Dolson
ステップ2:成功のための指標を決定する

開始点を特定したら、成功を測定する方法を定義する必要があります。オートメーションに関しては、考慮すべき標準的な重要業績評価指標(KPI)がいくつかあります。平均復旧時間(MTTR)およびアプリケーションのアップタイムなどはよく使用されている指標です。オンボーディングの例を使用すると、オンライン顧客のリクエスト・フォームの可用性を99.99%にするという目標を設定できます。

これらの標準的な指標以外にも、他の測定値も重要ですが、測定が困難となることがよくあります。例えば、顧客は新しいオンライン・フォームにどの程度満足しているでしょうか。AIとオートメーションを導入する際には、ネット・プロモーター・スコア(NPS)やオンライン・レビューなどの指標の導入を検討することもできます。従業員の生産性や士気を測定したい場合は、従業員エンゲージメント調査の情報を使用することを検討しましょう。

チェンジ・マネジメントも重要な分野ですが、測定するのは難しいかもしれません。例えば、新機能を予定より早くリリースしたことで、どれくらいのコスト節約になったでしょうか。このリリースで何人の新規顧客を獲得できましたか。繰り返しになりますが、ブランドの健全性やNPSなどのデータ・ソースは、ITオートメーション投資の成功をより正確に把握するのに役立ちます。

「私はチェンジ・マネジメントのコストについて多くのお客様と話し合っています。ミスを犯してコードを修正しなければならなくなったとき、あるいは企業の方から『この一連の機能は、我が社を必要な方法ではサポートしてくれないので、調整してほしい』と言われると、チェンジ・マネジメント・コストは高くつきます。ビジネスとの整合性を高めることにより、コストを削減したり、チェンジ・マネジメントを完全に回避したりする能力は、実際に測定可能です」—Melissa Long Dolson

ステップ3:データに関する重要な質問をする

データはオートメーションの取り組みの中心にあると言っても過言ではありません。生成AIの台頭により、データの品質がいかに重要であるかが注目されています。1

IT運用にAIを導入する際は、組織に関する次の質問を常に念頭に置いてください。

  • 自社におけるミッションクリティカルなデータは何か。
  • データを使用するためにどのようなガバナンスとガードレールが設けられているか。
  • 私たちのデータはどの程度信頼できるか。
  • データの健全性をどのように測定するか。
  • 知的財産(IP)に関する懸念をどのように管理しているか。
  • 特に規制の厳しい業界では、コンプライアンス・ガイドラインにどのように対処しているか。
  • データの適切な使用について従業員を指導するために、どのような教育や研修が実施されていまるか。

事実:調査対象のCEOのほとんどは、データ系列と来歴(61%)およびデータ・セキュリティー(57%)に関する懸念が、生成AIの導入の障害になると回答しています。2

 

ステップ4:コストを理解する

ITに関連する他のほとんどの事柄と同じように、特にAIの導入を検討する場合はコストは必ず考慮しなければなりません。2023年のレポートによると、調査対象者の中で、IT幹部は、生成AIの予算が4カ月前の予測より3.4倍大きくなると予想しました。しかし一方で、同じ幹部たちがこれらの投資は必ず利益を生むと信じていると回答しています。生成AI支出の約4分の3(74%)は、人事、財務、カスタマー・サービス、営業およびマーケティング、ITで費やされ、これらへの投資によるコスト削減が期待されています。2

「組織は常にコストを削減する方法を模索しています。ITオートメーション・プロジェクトを開始するには、新しいツールを採用し、新しいライセンスや新しい SaaS サービスを取得する必要があり、それにはコストがかかります。しかし、ITオートメーションを導入することで最終的にコストを削減する機会や、投資に対する実質的な利益は現実のものです」—Keri Olson

しかし、何よりもリーダーとして、テクノロジーが自分の働き方、従業員の働き方、組織の顧客との関わり方にどのような影響を与えているかをより深く考える必要があります。ITオートメーションの導入とは、実際には組織の目標を理解し、それを最もよく達成するためのストラテジーを立てることに他なりません。また、適切なテクノロジーとソリューションを選択し、実装計画を策定することも重要です。ITチーム内でも、AIプロンプト・エンジニア、MLエンジニア、AIデータ・サイエンティスト、AIトレイナー、AI倫理学者など、より多くのさまざまなスキルが必要になります。

「SaaSツールなど、実装が簡単なITオートメーション・ツールを探してください。この分野で選ばれるのは、実装、立ち上げ、実行が最も簡単なソリューションです。貴社の現状に対応し、ビジネスの成長に合わせて成長できるツールを見つけましょう」—Keri Olson

この分野で選ばれるのは、実装、立ち上げ、実行が最も簡単なソリューションです。 Keri Olson
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ITオートメーションのブロッカー
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出典

1消費者ではなく創造者になる、IBM Institute for Business Value、2023年4月

2 技術コスト:どのように支払うか。IBM Institute for Business Value、2023年。