創業以来培ってきた教育に関する豊富な知見を生かし、質の高い通信教育サービスを提供している株式会社Z会(以下、Z会)。データの活用によって個々の学習者に最適な教育サービスの提供を目指す同社で課題となったのが、長年にわたり個別最適で増改築が繰り返された基幹システムでした。従来の紙の教材と郵送を前提としたサービスから、教材のデジタル化、データを活用したサービスへの変革を進めるにあたり、基幹システムの改修に多くの期間とコストを要していたのです。同社はデジタル時代の教育サービスにふさわしいシステム環境にすべく、IBMとの共創を通じた基幹システムの刷新を決断。アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)のコンテナ基盤上に、マイクロサービスによって新基幹システムを構築することで高い柔軟性と俊敏性、拡張性を実現しました。Z会は2025年に旧基幹システムからの完全移行を目指してプロジェクトを進めており、その後はグループ共通の基幹システムへと発展させることも視野に入れています。
Z会は時代のニーズに応じて新たな教材や指導スタイルを開発し、提供してきました。今日、この取り組みを実践していくうえで不可欠なのがデジタル化であり、とりわけ今後は「データの活用」が重要となります。しかし、同社の基幹システムは業務やサービスごとに個別最適で構築してきたため細分化されており、目指すデータ活用を実現するのは難しい状態でした。新たなサービスを立ち上げるには多くの期間と改修コストが必要となり、柔軟性や俊敏性にも欠けていました。紙の教材を前提にしていたことからデジタル教材への対応が困難なほか、業務部門の要望に応じて効果や妥当性を吟味せずに構築してきたため、あまり使われない機能の維持管理に無駄なコストがかかっていました。Z会はこれらの課題を解決すべく、基幹システムの刷新を決断します。
Z会は「今後10~20年戦えるシステム」の構築を目指し、その共創パートナーとしてIBMを選びます。上流工程からシステム・アーキテクチャー、インフラまで全てをカバーし、同社のビジネスを深く理解していることなどが選定の理由です。Z会はIBMの提案に従い、「RedHat OpenShift」をベースにしたコンテナ基盤上に、API連携で動作する多数のマイクロサービスによって新基幹システムを実現するアプローチを採用。インフラについてはAWSを選びました。2019年から始まった構築作業では要件管理手法「MoSCoW分析※」によって要件を優先順位付けし、ビジネスの観点から本当に必要な機能だけを実装しました。旧基幹システムからの移行方法も工夫し、業務・サービス単位で少しずつ完成させて段階的に新基幹システムに移行する方法を採りました。
Z会は現在、2024年内に旧基幹システムから完全移行することを目指してプロジェクトを進めています。2020年のコロナ禍以降は教材のデジタル化も加速していますが、段階的移行のアプローチで早期に移行した各機能により、新サービスの提供もスムーズに進みました。新基幹システムへの移行後は、新機能の追加に要する手間やコストを大きく削減できる見込みです。また、拡張性が高い新基幹システムはビジネス上の意思決定の向上にも寄与しており、業務部門は各フェーズで開発する機能について柔軟に意思決定を行えるようになりました。旧基幹システムからの移行完了後も新基幹システムを発展させる取り組みは続き、将来的にはZ会グループ共通の基幹システムへと発展させることも視野に入れています。
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2023年9月
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