ところでその名前が選ばれるまでの過程は、どのようなものでしょうか。

最終的なノミネート作品と受賞者が決まるずいぶん前から、大小のスタジオは、賞レースのシーズンに関わる20万人以上のオーディエンスに向けて、過去1年間の最高の作品を届けなければなりません。そのオーディエンスには、22の業界組合の投票者、一般の観衆、さまざまなVIPなどが含まれます。

業界最大手で最も有名なコンテンツの所有元を含め、こうしたスタジオの多くは、投票権のあるオーディエンス全員に自社のコンテンツを最高品質のストリーミングで時間通りに届けるため、Vision Mediaに頼っています。Vision Mediaは、全米映画俳優組合賞、スピリット賞、全米製作者組合賞、全米監督協会賞などの賞プログラム向けに、自社ブランドのカスタム上映室を提供しています。また、アカデミー賞やエミー賞などに向けたスタジオの投票活動もサポートしています。

Vision Mediaは最近、IBMのビジネス・パートナーであるPacGenesisと協力してIBM Asperaソフトウェアの利用を開始し、長編映画やテレビ番組の転送を迅速化して、スタジオがこれまでよりも早く賞の投票者に連絡できるようにしました。

「私たちは一流のスタジオや制作会社と協力しています」と、Vision Mediaのマーケティング担当シニア・ディレクターであるJoanna Syiek氏は語ります。毎年の授賞シーズン中には、候補作選考のためだけに、これらのスタジオは数テラバイトのコンテンツをアップロードし、投票担当者向けに映画やテレビ作品の安全なストリーミング上映を広く提供しなければなりません。

賞レースには重要な意味があります。ノミネートや受賞によって、スタジオが制作にかけた多額の投資をどれだけ回収できるかが大きく変わるかもしれません。ですが一部の授賞式では、スタジオは厳格に定められた期限内にコンテンツを配信する必要があります。

そして近年、こうした賞の「シーズン」は決して終わることがないほどに広がっています。「以前は秋から春先までの約5カ月間でした。現在、授賞シーズンは年間少なくとも11か月に拡大しています。ですから制作会社はさまざまな賞への取り組みに絶えず留意しなければなりません」とSyiek氏は言います。特定の月に、複数の賞プログラムの募集開始や締め切りが集中することもあります。そのためVision Mediaのコンテンツ配信・上映プラットフォームは、1年を通じて重要なリソースとなっています。

さらに同社のプラットフォームは、かつてないほどに大量のコンテンツを処理しています。新型コロナウイルスのパンデミックにより、スタジオは劇場内での賞の宣伝活動やイベントから軸足を移し、完全にデジタル化することを余儀なくされました。この時期に大手スタジオの多くが、受賞への取り組みに役立つ革新的なソリューションを求めてVision Mediaに注目しました。Vision Mediaは、試写室、For Your Considerationサイト、電子メールの一斉配信、受賞のための強力なサポートなどの適応型ソリューションを提供することができました。「2020年から2021年にかけて、当社のプラットフォームで共有される賞タイトルは前年比で94%増加しました」とSyiek氏は言います。

Vision Mediaのプラットフォームは、その柔軟性、安全性、そしてあらゆる主要用途で卓越した視聴体験を提供する能力ですでに業界をリードしていましたが、爆発的な利用量の増加によってスピードへのプレッシャーが増していきました。Vision Mediaは、従来はファイル転送プロトコル（FTP）テクノロジーでコンテンツを受信していました。100GBの高解像度の長編映画ファイルを転送して視聴できるようになるまでに、28時間以上かかる場合もありました。

Vision Mediaは、プロセスを劇的に高速化するチャンスを見出しました。

PacGenesisと協力し、Vision Mediaはコンテンツの統合と転送のために、Aspera High-Speed File Transferのソフトウェアを安全なストリーミング・プラットフォームに組み込みました。

PacGenesisはAsperaの専門家チームで、Vision Mediaの安全な上映ワークフローへのソリューション統合を支援し、最新のパッチとセキュリティを搭載してソフトウェアを最新の状態に保っています。プロジェクトの一環として、Vision MediaとPacGenesisはIBMと協力して Asperaのソフトウェアを評価し、スタジオの財産と著作権を保護するための Vision Mediaの厳しいセキュリティ要件をサポートしていることを確認しました。PacGenesisとVision Mediaは、Asperaの実装を30日間で完了しました。

かつて数時間かかっていた長編映画のアップロードが、今では10分で完了します。スタジオチームが新作映画やテレビシリーズの複数のエピソードを金曜日の午後5時までに提出する必要がある場合、週の初めにアップロードを開始して、期限通りに完了するように何日も監視する必要はもうありません。締め切り当日に作品の最後の編集をする場合でも、コンテンツの所有者は、ファイル転送が数時間または数日ではなく、数分で済むことを知っているので、あわてずに待つことができます。

Vision Mediaプラットフォームの柔軟なコントロールは、ユーザーに力を与えます。スタジオは、保護された表示ウィンドウでコンテンツを表示できる期間を選択したり、可視透かしまたはフォレンジック透かしを導入したり、必要に応じてセキュリティ設定をカスタマイズしたりできます。

PacGenesisのMark Eaton氏は次のように述べています。「Vision Mediaと協力してファイル転送速度を飛躍的に向上させ、安全なスクリーニングプラットフォームの時間とコストを節約できたことを誇りに思います。「Vision Mediaは一流のセキュリティとスピードに対する当社の取り組みを共有しています。統合ソリューションにより、スタジオやコンテンツ・クリエイターが賞への応募作品を大規模かつ安全に転送できるのは喜ばしいことです」。

Vision MediaのSyiek氏はこう付け加えます。「コンテンツ所有者、つまり当社のお客様は、1年を通じて完全に安心していられます。ファイル転送の待ち時間が減り、クリエイティブで感動的な映画やテレビ作品に命を吹き込むための仕事に精力的に打ち込む時間を増やすことができます」。

メディア・エンターテインメント業界のデジタルおよび物理的マーケティングとフルフィルメント・サービスを手がけるグローバル・リーダーのVision Media（リンクはibm.comの外にあります）は、映画、テレビ、ストリーミング、消費財、そして各種の賞の分野で280社以上のクライアントから信頼を寄せられるパートナーです。エンターテインメント業界で35年以上の経験を有するVision Mediaは、大手映画スタジオ、エンターテインメント業界の組合、配給会社、コンテンツ所有者のために、ベスト・イン・クラスの安全な上映体制、プロモーションのサポート、マネージド・サービスを提供しています。

IBMのビジネス・パートナーであるPacGenesis（リンクはibm.comの外にあります）は、10年以上にわたってあらゆる規模の組織にサービスを提供しているデータ・セキュリティ・ソリューションの大手プロバイダーです。顧客第一主義を掲げ、デジタルファイル転送セキュリティの分野で信頼される一流のアドバイザーとして頭角を現しています。企業が事業運営手法の変革を続ける中、PacGenesisは最新のサービスとソリューションのサポートを通じて、シームレスかつ効率的なデータ転送を支援します。