ホーム お客様事例 首都圏交通機関 デジタル・エージェント"Ava"がサン・アントニオ交通機関の乗客を案内
AIを利用して利用客の質問に答え、バスの到着時間を予測
テキサス州サン・アントニオ市街にあるサン・アントニオ・コマース・ストリート

VIA Metropolitan Transitはテキサス州サン・アントニオ地域の主要公共交通機関です。地域住民にとって不可欠な移動手段として、バス、バン、オンデマンド・サービスによる乗客輸送回数は年間約3,600万回に達しています。

VIAは2つのコール・センターを通じて顧客をサポートしています。1つは補助的交通機関の乗客用、もう1つは一般情報用で、平日のほとんどの時間にライブ・エージェントが対応します。テクノロジー・イノベーション・チームとカスタマー・ケア・チームはサービス向上目的で、待ち時間報告サービスと、長い保留時間を軽減するコールバック機能を追加しました。

イノベーションを通じた継続的な改善に重点を置くVIAでは、デジタル・テクノロジーを駆使して顧客体験をさらに向上する方策を模索していました。VIAのテクノロジー・イノベーション担当バイス・プレジデントであるSteve Young氏は次のように説明します。「『顧客最優先と乗客に優しく』がVIAのモットーであり、その一環として最先端ツールを導入して、価値の高い情報の提供を図っています」。

情報関連の諸問題のいくつかはデジタル・イノベーションの進歩で解決する土壌が整っていました。その1つがコール・センターの稼働時間のみから24時間年中無休へとカスタマー・サポートの提供時間を拡大することでした。スマートフォン、タブレット、PCを多用する乗客の割合が増えており、デジタル・チャネルを歓迎する地合いが整っていることも導入を後押ししました。さらに、経営陣がコール・センターのデータを検討したところ、顧客からの基本的な問い合わせは反復的であることが判明しました。こうした問い合わせをデジタル情報ツールに任せれば、エージェントは付加価値サービスに集中できるようになります。

Young氏は説明を続けます。「バスはいつ来るか、犬と一緒に乗車できるか、子供運賃はいくらか、といった簡単に答えられる質問が何度も繰り返し寄せられます。コール・センターが閉じている時間に自動応答できればと考えていました」。

このソリューションの本質は自動化されたデジタル・エージェント(バーチャル・アシスタント)であり、コール・センターのデータを利用してFAQに回答します。リアルタイムの交通情報と道順を提供するには、サード・パーティーのAPIとの連携も必要となります。サン・アントニオの多様なコミュニティをサポートするには、英語とスペイン語の両方の会話能力を持つ必要がありました。運用分析は必須要素であり、クラウド・コンピューティングを基盤とする必要がありました。

VIAのチームは当初、地元の新興企業と開発に着手しましたが、この提携が頓挫したため、プロジェクトをいったん棚上げしました。奇しくもこの頃IBM®は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する質問に回答するAI搭載エージェントを自治体向けに提供していました。Young氏が探していたのはCOVID-19向けエージェントではありませんでしたが、興味をそそられ、保留中のプロジェクトをIBMチームに持ちかけました。その結果VIAは、カスタマー・サービス・アシスタントの共同開発でIBMと提携することにしました。

Young氏はIBMを選んだ理由を説明します。「VIAは安定度を重視し、AI分野の市場リーダーを求めていました。IBMはこの条件を満たすだけでなく、パートナーとして共同作業をし、膝を交えて話し合いながら成長を支援する意欲も感じられました」。

AIとの会話による支援

 

VIAのデジタル・アシスタント「Ava」が提供したサービス件数は稼働開始以来、41,000件を突破

AIケイパビリティー

 

AIとサード・パーティーAPIとの統合を利用する「Ava」が支援してきたユニーク・ユーザー数は約28,000人に到達

AIの効率性

 

「Ava」がVIA利用客と交わす会話数は月間約3,000

VIAは安定度を重視し、AI分野の市場リーダーを求めていました。IBMはこの条件を満たすだけでなく、パートナーとして共同作業をし、膝を交えて話し合いながら成長を支援する意欲も感じられました。 テクノロジー・イノベーション担当バイスプレジデント Steve Young氏 首都圏交通機関
自動化されたデジタル・エージェント「Ava」の開発

IBM® Expert Labsのコンサルタントは、このAIプロジェクトに当初携わっていた、VIAの開発者チームと共同作業に取り組みました。「計画立案のための電話会議を毎週実施し、IBMチームの担当作業とVIAチームの担当作業について報告し合いました。こちらは成長を期待して若手開発者を配属しました。IBMのエキスパートは知識の共有に非常に熱心で、『行き詰まったり、助けが必要な場合は、遠慮なく連絡してください』と言ってくれました」(Young氏)。

チームは条件とアーキテクチャーについて合意した後、コール・センターのデータを分析してカテゴリー化し、アシスタントが回答する必要がある一般的な照会を特定しました。この貴重なデータを生成したIBM watsonx Assistantは、IBM Cloud®の多言語会話エージェントで、自然言語でテキスト化された質問を理解し、何らかの回答をすることができます。

次にチームが取り組んだのは、最もよく寄せられる「次のバスはいつ停留所に到着しますか?」という質問です。VIAはその時点で各停留所に5桁のコードを割り当てるサービスを策定済みでした。乗客がVIAの提携先であるSwiftly Systems社にこのコードをテキストメッセージで送信すると、同社はAIを使用してリアルタイムのバス・センサーと交通データを分析し、次の到着時間を予測します。開発者はSwiftly社のサービスをアシスタントに統合したのに加え、VIAの別の提携先であり、ロケーションと正確な方向を提供する地図サービスであるHERE.comのAPIも統合しました。

さらに、運用情報も必要でした。VIAのマネージャーにとって、利用者数や会話数、質問内容などのデジタル利用客との対話に関する知識は有用なものとなります。そこで開発者は、システムでクエリを実行する必要なしに、ステークホルダーに自動送信されるダッシュボード・レポートを作成しました。

分析には、IBM Watson Studioの開発環境、IBM Cognos® Dashboard Embedded分析、およびIBM Db2®データベースと、すべてIBM Cloudで入手可能な要素が利用されます。これらテクノロジーはまず、IBM watsonx Assistantの会話履歴を抽出・分析し、エージェントのユーザー対応の優劣を判断します。次に、ビジネスKPIのダッシュボード表示に現在の結果を示し、経営幹部レベルのステークホルダーにアシスタントの価値を提示します。

VIAのチームはこのツールをオートメイテッド・バーチャル・アシスタントの頭文字を取って「Ava」と名付け、一定期間のテストとレビューを経て、2020年末にVIAのWebサイトに導入しました。また、VIAのモバイル・アプリ「goMobile+」でも利用できます。Avaは150を超える一般的な質問に24時間年中無休で英語とスペイン語で回答でき、次のバスの到着時間をリアルタイムで予測します。評判は上々で、毎月数千件の会話が交わされています。

開発者はAvaの初代バージョンのリリース後に、継続的に機能の追加と改良を図っています。一例として、当初は明確な回答を提示できない場合、コール・センターにユーザーを再度差し向けていました。ただし、コール・センターが稼働していなければ顧客を失う可能性があります。現在、Avaはデジタル・ハンドシェークを通じて、そうしたやりとりをソーシャル・メディア管理企業のSPS DGTL社に移管しており、同社が連絡情報と希望の連絡手段をユーザーに照会しています。

「Avaは質問に正しく答えられなかった場合、そのことをある程度自覚しています。SPS社は会話自体を含むユーザー情報を収集し、SPS DGTLチームに引き継ぎます。この仕組みによりVIAは該当ユーザーへの連絡方法を確保できます」とYoung氏は語ります。

分析面でも調整が加えられました。IBMツールの威力に気づいたVIAの開発者は、2つ目の分析ダッシュボードをカスタマー・ケア・チーム向けに自力で作成しました。このダッシュボードはAvaが見逃した質問や確信が持てなかった質問を毎日記録します。「カスタマー・ケア・チームが質問内容と不足部分を把握できれば、よりインテリジェントになるようにAvaを訓練し直すことができるため、大変有用です」とYoung氏は付け加えます。

Avaのおかげで利用者はより手軽に情報を取得できるようになっており、顧客体験の向上につながっています。 テクノロジー・イノベーション担当バイスプレジデント Steve Young氏 首都圏交通機関
カスタマー・ケアの継続的な改善

稼働開始以来、Avaは約28,000人のユニーク・ユーザーと41,000件を超える会話を交わしてきました。現在の月間平均会話数は3,000件近くに上ります。また、ユーザーへの回答率は96%に達しています。Young氏は「これほど多数の会話と良好な成績を上げることができ、非常に喜んでいます」と語ります。

VIAの担当者はエージェントに対する反響に満足しています。「Avaのおかげで利用者はより手軽に情報を取得できるようになっており、顧客体験の向上につながっています。コール・センターの代わりにアシスタントを利用すれば、電話回線の解放、待ち時間の短縮、常勤エージェントの負担軽減が図れ、サービス向上に役立ちます」とYoung氏は指摘します。

Young氏はまたこのプロジェクトの費用対効果の高さにも言及しており、クラウド・コンピューティングの活用をその一因に挙げています。「専用のインフラストラクチャーを導入する必要がなかったのは、実にスマートなクラウド・テクノロジーを活用したおかげです」。

総体的な主要メリットとして、VIAがプロジェクト中にIBMから移転された知識が挙げられます。こうした知識は、長期にわたり組織に役立つと期待され、実際に開発者は、既に多数の機能強化に取り組んでいます。

まず優先されるのは、ロケーションと順路案内といったサービスの充実です。例えば、APIを使用して「自宅からWalmartにはどのように行けますか?」といった質問に回答するといったサービスです。あるいは、利用客が停留所にいないときにバスの到着を予測したり、利用客のロケーションや最寄りの停留所をグラフィック表示したりすることも考えられます。電話での会話を好む利用客に対しては、開発者は音声インターフェースを追加しており、将来的に、顧客がVIAのコール・センターに電話する際の選択肢となる可能性があります。コール・センターの稼働時間中にAvaが回答に詰まった場合、利用客の対応をライブ・エージェントに自動的に切り替えることもできます。

Young氏は次のように振り返ります。「内部チームにとっても開発者にとってもAIとデジタル・エージェントは初めての体験でしたが、チーム全体がサポートし、持続、成長させることができるものを創り上げることと、創作作業を共に行うパートナーを持つことがVIAの希望でした。IBMとの提携でまさにこの希望が叶いました」。

VIA Metropolitan Transitのロゴ
VIA Metropolitan Transitについて

1978年に設立されたVIA(ibm.com外部へのリンク)は、テキサス州サン・アントニオおよびベア郡13の加盟都市で複合輸送サービスを提供しています。バス、補助的交通機関、VIA Linkライド・シェアサービスを通じて、年間約3,600万人の乗客輸送を運行しています。また、通勤相乗りバン、パーク・アンド・ライド、特別イベント・サービスも運営しています。VIAは雇用職員数約2,200人で、1,208平方マイルの営業区域内で7つの交通センター、約7,000のバス停、8つのパーク・アンド・ライド・センターを運営しています。

次のステップ

この記事で紹介されているIBMソリューションの詳細については、IBMの担当者またはIBM ビジネス・パートナーにお問い合わせください。

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2022年4月、アメリカ合衆国で制作。

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本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。