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TomagoがSAP HANAをプライベートクラウドに移行
Tomago本社

アルミニウム精錬施設は一度稼働すると生産を止めることはできません。液体金属が凝固した生産ポットの清掃には多大なコストがかかるためです。オーストラリアのTomago Aluminium Company Pty. Limitedの工場では、1983年以来24時間生産が続けられています。工場内のすべてが、3つの巨大な生産ラインに編成された840個の精錬ポットを使用して、アルミナから金属への加工をサポートしています。

TomagoのIT部門は、ポットラインの生産を維持する上で重要な役割を果たしています。「たとえば、当社には重要なプラント・インフラストラクチャ用のスペアパーツを保管する大規模な倉庫があり、何かが故障した場合にそれらのパーツをすぐに見つけるためにSAP ERPプラットフォームを利用しています」とTomagoのIT監督者、Dennis Moncrieff氏は述べています。「一刻も早く生産を再開させる必要があります」

数年前、ITチームはサードパーティ・プロバイダーからアプローチを受けました。ビジネスに不可欠なSAP®ソフトウェアをSAP HANA®プラットフォームにアップグレードする機会を提供されましたが、その条件としてパブリッククラウド・プロバイダーに移行する必要がありました。

しかし、Tomagoの移行が完了してから間もなく、問題が表面化し始めました。「クラウドはまさにブラックボックスでした。私たちにはまったく見識がありませんでしたから」とMoncrieff氏は言います。「環境によってどれだけの容量が使用されているかが分からなかったため、意思決定を行うのは困難でした。私たちに監視できたのは、稼働しているか停止しているかだけでした」

「サービスが動いていることは分かっても、それ以上のことは分からなかったのです」と、IBMビジネス・パートナーであるAdvent Oneの最高技術責任者であるTalor Holloway氏は言います。「サンドボックス環境を構築するにはどうすればよいのか、バックアップが行われていることをどうやって確認できるのか。そしてその検証方法は?」

パブリッククラウドを使用することで、開発イニシアティブに関しても問題が発生しました。「プロバイダーは現在のソリューションの信頼性とアップタイムを重視していたため、私たちが革新的なことを行うのは困難になりました」とMoncrieff氏は言います。「業務時間外に開発作業を行うことができず、そのことが進捗の妨げとなっていました。」

パブリッククラウド・プロバイダーとの契約が2020年10月に期限切れになる予定だったことが、Moncrieff氏にとって新たなチャンスの到来に思えました。パブリッククラウドに移行する前、Tomagoは、前世代のIBM® Power® Systemsインフラストラクチャでホストされた以前のSAP ERPバージョンをオンプレミスで運用していました。当時、Power SystemsハードウェアがSAP認定を受けていなかったことが、SAP認定のパブリッククラウド・ソリューションへ移行する決定に影響を与えました。

パフォーマンスの向上

 

パブリッククラウド・プラットフォームと比較して、IBM Power Systemsプラットフォームによるパフォーマンスの向上は75%

インストール時間の短縮

 

典型的なインストールが数週間かかるのに対して、IBM Power Systemsインフラストラクチャのインストールの場合は6日

効率の向上

 

月末レポート処理が66%高速化され、財務部門の効率が向上

SAP、IBM Power Systems、IBMフラッシュ・ストレージ・ソリューションを自社施設内に設置することには、当社のビジネスにとってメリットがあります。おかげで私たちのシステムは非常に安定していて復元力があります。 Dennis Moncrieff IT監督者 Tomago Aluminium Company Pty. Limited

しかし、Moncrieff氏は、IBM Power SystemsがSAP HANAの認定を受けたことを知ったとき、より優れた選択肢が浮かび上がりました。「パブリッククラウドは、多くの場所と多くのインターネット接続がある場合に適しています」とMoncrieff氏は言います。「しかし、インターネット接続が単一のケーブルに依存していることが問題です。そのケーブルが切断されると、クラウドサービスへのアクセスが完全に失われるからです」

2015年以前、TomagoがPower Systemsサーバー上でオンプレミスのSAPプラットフォームを運用していたとき、Moncrieff氏は自身のコントロールと可視性を高く評価していました。しかし現在は、パブリッククラウド・ソリューションに欠けていたパフォーマンスと柔軟性を備えた、プライベートクラウド環境で利用可能な最新世代のIBMソリューションを活用する準備ができています。

「一度自分が制限されていることに気づくと、もう制限されたくなくなるのです」とMoncrieff氏は言います。

迅速なデプロイメントと緊密なチームワーク

Advent Oneの推奨と、IBMのシステムをオンサイトで運用して成功した経験に基づき、Tomagoはパブリッククラウド・プロバイダーから離れ、IBMのシステムとRed Hatのソリューションの統合インフラをベースにしたプライベートクラウド・モデルでSAPソリューション・スイートを運用することを決定しました。

Tomagoは、スペアパーツの倉庫管理にSAP ERPプラットフォームを使用することに加えて、給与計算、調達、人事、財務など、その他のビジネスに不可欠なタスクでもSAPを利用しています。停止によるデータの損失や遅延はビジネスに重大な影響を与えるため、TomagoのIT部門はAdvent OneおよびIBMと緊密に連携し、以下のSAPソリューションをサポートするために設計された独自のプライベートクラウドへのスムーズな移行を果たしました。

SAP HANAを活用したSAP Business Warehouse:データを統合し、マスター・データを調和させ、柔軟なレポート・シナリオを提供するデータ・ウェアハウス。

SAP HANAを活用したSAP ECC:SAP HANAデータベース上で動作し、物流、財務、販売、倉庫管理などのビジネス・タスクを簡素化するERPセントラル・コンポーネント。

SAP Fiori®:デザイナーや開発者にアプリを迅速に作成するためのアジャイル・ツールとガイドラインを提供するユーザー・エクスペリエンス・プラットフォーム。SAP Fioriにより、モバイル・デバイス用のユーザー・インターフェイスの迅速な開発が可能になり、広大なTomago工場施設全体でユーザーがSAPツールにアクセスできるようになりました。

IBM Lab Services とAdvent Oneは、非常に厳しい期限の中で協力してトランスフォーメーションを完了し、新しいIBM Power Systems、ストレージ、バックアップ・インフラストラクチャ(すべてのオペレーティング・システムのインストールと構成を含む)を6日間でデプロイしました。「ハードウェア納品後1週間も経たないうちに、すべてのシステムがSAPチームに引き渡されました」とHolloway氏は言います。

「できるだけ早くすべてを実現し、引き渡さなければならないことは分かっていました」とMoncrieff氏は言います。「Advent OneとIBMチームの皆さんに敬意を表します。」

プライベートクラウド・インフラストラクチャには、IBM Power Systems H924(PDF)とIBM PowerVM®サーバー仮想化が含まれており、より少ないシステムで複数のワークロードを統合し、サーバーの利用率を高め、エンドツーエンドのセキュリティを提供するように設計されています。

IBMフラッシュ・ストレージ・ソリューションIBMハイブリッド・フラッシュ・ストレージIBM Storage Area NetworksIBM Spectrum® Storageのソフトウェアは、オンプレミスとハイブリッドクラウド用のストレージの経済性を向上させるAIを組み込んだ完全なストレージ・ソリューションを提供しました。IBM FlashSystem®とすべてのフラッシュおよびハイブリッド・フラッシュ・ストレージ・ソリューションは、ソフトウェア定義の複製や移行を可能にするIBM Spectrum Virtualizeテクノロジーで構築されています。

Advent Oneは、SAP認定のRed Hatソリューションの導入経験に基づいて、Tomagoに複数のオペレーティング・システムをRed Hatプラットフォームに統合することを推奨しました。「複数のオペレーティング・システムを使用することは理想的ではありませんでした。また、情報がサイロ化したり、重要なリソースが1人に依存することは望ましくありませんでした」とMoncrieff氏は言います。「Red Hatは、オペレーティング・システム全体にわたる技術および開発の知識を私たちに提供し、私たちが必要なときにIoT(モノのインターネット)をデプロイできるように準備を整えてくれます。」

オペレーティングシステムをRed Hat® Enterprise Linux®(リンクはibm.comの外部にあります)に統合することで、一貫性とレジリエンスが得られ、TomagoはSAPソフトウェアとIBM Power Systemsプラットフォーム間の運用シナジーを活用できるようになりました。

Tomagoのシステムはすべて、SaaS(Software as a Service)ソリューションであるRed Hat Insights(リンクはibm.comの外部にあります)にレポートします。「Insightsを使用すると、セキュリティの脆弱性や構成の問題を特定し、セキュリティ基準と比較することができます」とHolloway氏は言います。「適切なセキュリティ設定が有効になっているという安心感があります。」

インフラストラクチャを迅速に構築するための鍵の1つは、Red Hat Ansible® Automation Platform(リンクはibm.comの外部にあります)を使用してデプロイメント全体を自動化することでした。「ハードウェアをラックに積み込んで電源を入れると、あとはすべて自動化されました」とHolloway氏は言います。「1か月以上早く準備できました。Tomagoは、SAP HANAシステムをパブリッククラウドからIBM Power Systemsに非常に迅速かつ簡単に複製し、システムを切り替えることができました。ここで重要なのは、いかに簡単に移行できるかということです。」

経営陣は処理時間が大幅に改善されたことを実感しており、非常に満足しています。コストの一貫性も大幅に向上したため、追加コストをかけずにビジネスにより良い成果をもたらすことができるようになりました。 Dennis Moncrieff IT監督者 Tomago Aluminium Company Pty. Limited
必要不可欠なアプリケーションの力を活用

イノベーションに投資することで、TomagoはコアSAPアプリケーションの能力を最大限に活用し、より実用的なインサイトを通じてより迅速かつ適切な意思決定を下せるようになりました。オンプレミスのIBMプライベートクラウド・インフラストラクチャを使用することで、Tomagoは以前のパブリッククラウド・ソリューションと比較してパフォーマンスが大幅に向上しました。「Tomagoでは、IBM Power Systemsプラットフォームを使用したことで、以前のクラウド・プラットフォームと比較してパフォーマンスが75%向上しました」とHolloway氏は言います。「TomagoのCFOも、これはこれまでで最も成功したプロジェクトの1つだと言っています。」

別の改善例としては、x86ベースのパブリッククラウド・サーバーでの処理に60秒かかっていた月末の財務レポートが、20秒で完了できるようになり、66%高速化されました。

Tomagoの新しいハイブリッドクラウド・システムもより効率的に実行されます。「以前のものよりもはるかに優れています」とHolloway氏は言います。「以前はパブリッククラウド上で32個のCPUを効果的に使用していましたが、現在IBM Power Systems上で使われているCPUは8個のみです。この削減を行った後でも、依然として75%高速化されているのです。」

Tomagoは、パブリッククラウドで実行する場合と比較して、独自のハイブリッドクラウド・システムの優れたコスト管理と料金体系の一貫性の恩恵を受けています。同社は、IBM Power Systemsサーバーに組み込まれた仮想化を通じて、容量を簡単にスケールアップできます。

ハードウェアの仮想化は、開発者やデザイナーが新しいアプリを迅速に作成、テスト、スケールアップできる拡張環境も提供します。「追加のモジュールを有効にする場合でも、開発用にサンドボックス環境を立ち上げる場合でも、今では新しいものを素早く確認できるようになりました」とMoncrieff氏は言います。「コスト管理の一貫性は大きな改善であり、追加のコストをかけずにビジネスにより良い成果をもたらすことができています。」

また、システム・パフォーマンスの可視化により、システム・ユーザーへのサービスの向上が促進され、インサイトが最適化され、意思決定の実際の影響がリアルタイムで表示されます。「データベースのサイズとメモリ使用量の観点からシステムの動作を実際に確認できるダッシュボードがあります」とMoncrieff氏は言います。「こうしたインサイトにより、プロセスの最適化と変革について同僚と会話できるようになります。」

アルミニウム製錬に必要な電力コストは流動的であり、世界の金属価格は予測不可能であるため、Tomagoが競争しているのは複雑で常に変化する業界です。しかし、これらの課題に対処するために、Moncrieff氏は、彼のIT部門が将来的に会社をサポートできる適切な立場にあると信じています。「SAP、IBM Power Systems、IBM Storageを自社施設内に設置することは、当社のビジネスにとってより良いソリューションとなりました」とMoncrieff氏は言います。「おかげで私たちのシステムは非常に安定していて復元力があります。私たちは何が起こっても対処する準備ができています。」

Tomago Aluminium Company Pty. Limitedロゴ
Tomago Aluminium Company Pty. Limitedについて

オーストラリアのニューサウスウェールズ州にあるTomago(リンクはibm.comの外にあります)は、1983年に生産を開始して以来、24時間体制で操業しています。1,100人の従業員と請負業者を擁するこの製錬所は、年間58万トンのアルミニウムを生産し、毎年15億オーストラリア・ドルをオーストラリア経済に貢献しています。Tomagoは、Rio Tinto Alcan、CSR、およびHydro Aluminiumが所有する独立経営の合弁会社です。

 Advent Oneについて

オーストラリアのメルボルンを拠点とするIBMビジネス・パートナー、Advent One(リンクはibm.comの外にあります)は、20年にわたりITコンサルティングとマネージド・サービスを提供してきました。同社は、クラウド、サイバーセキュリティー、データセンター、不正防止およびマネーロンダリング防止テクノロジーを専門としています。Advent Oneは、エンタープライズ・ストレージ、仮想化、UNIX、IBM i、Linux、およびMicrosoft Windowsの高度な機能も提供し、クラウド移行とITトランスフォーメーションを可能にします。

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脚注

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米国で製作、2021年9月

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