ホーム お客様事例 The Co-operative Bank IBM Consultingでダウンタイムのない変革を実現
The Co-operative Bankは独立したITアーキテクチャーを構築しました
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銀行がIT業務を親会社から分離したり、事業の一部を売却したりする場合、あらゆるネットワークを細心の注意を払って移行する必要があります。移行が計画どおりに進まない場合、結果として、顧客への対応、業務の遂行、規制の順守、企業としての評判に重大な影響が生じる可能性があります。

2015年、The Co-operative Bankはまさにそのような状況に直面しました。同行は、小売、保険、その他の市場でさまざまな事業を展開するグループ企業であるThe Co-op Groupの子会社として成長してきました。The Co-op Groupにはアプリケーション、情報リポジトリー、テクノロジー管理を共有するという戦略があり、The Co-operative BankのITシステムはこのグループ企業の他のネットワークと緊密に絡み合っていました。

The Co-operative BankがThe Co-op Groupから分離されると、この戦略は変更されました。同行は、このグループ企業のITサービスへの依存度を低減し、独自のITシステムを管理する必要があったのです。このような分離を効率的に実現するには、大規模な変革プログラムが必要でした。

The Co-operative Bankは、当時、英国の銀行業界で注目を集めていたIT関連の問題を受け、プログラムに関する規制当局の精査レベルが非常に高くなるであろうと認識していました。その結果、リスクを軽減するために、計画、準備、実行におけるあらゆる側面を効率的に管理する必要がありました。

The Co-operative BankのITチームは、独自のアプリケーションとインフラストラクチャーを把握していましたが、専門知識は主に運用上のものでした。システムの構築、保守、文書化において、同行はそれらのシステムが日常的な銀行業務という計り知れないほどのプレッシャーに確実に対処できるようにすることに重点を置いていました。

変革プログラムによって、さらなる課題が提起されました。The Co-operative BankのシステムとネットワークをThe Co-op Groupのその他のインフラストラクチャーから分離すれば、それらをまったく新しい環境、つまり新しいデータセンター、新しいサーバー、新しいネットワーキング、新しい運用モデルに移行することになります。こういった大規模な変更を実施すれば、未定義の動作や予測不能な影響が発生するリスクが高まります。何十万人もの顧客の金融データが危険にさらされるため、同行は何事にも万事を期さなければなりません。

「IT分離プロジェクトは当行の将来にとって不可欠でしたが、お客様に対する責任は常に最優先事項です」と、The Co-operative Bankの最高執行責任者であるChris Davis氏は説明しています。「当行は、顧客体験に一切影響を与えずにこの変革を実現できるという揺るぎない自信を持つ必要がありました。そのため、IBMとの提携を選びました。IBMは、大規模な銀行移行プロジェクトにおいて十分な専門知識を持ち、そうした確信を当行に与えてくれる唯一の組織でした」

大規模な移行作業

 

The Co-operative Bankは顧客サービスに影響を与えずに、250以上のアプリケーションと800台以上のサーバーを移行

100%の成功率

 

移行の成功率100%を達成

IBMは、他では見られないレベルの移行に関する専門知識を提供してくれました。...解決できない問題にぶつかったとき、システムの隅々まで知り尽くし、迅速に対応できる人材が必要です。IBMはそれを提示してくれたのです。 Mark Record Former IT & Change Director The Co-operative Bank
変革の計画と実行

The Co-operative Bankは、IBM® Consultingのエグゼクティブ・アーキテクトと協力して、変革プログラムの青写真とロードマップを策定しました。その作業の大部分は、エンタープライズ・サービス・プログラムと分離プログラムと呼ばれる2つの主要なフェーズで実行されることになりました。

エンタープライズ・サービス・プログラム

エンタープライズ・サービス・プログラムでは、最先端の事業継続性機能と災害復旧機能を備えた、2つの新しいデータセンターの構築に重点が置かれました。また、中核となる銀行用アプリケーションや財務システムや金融システムなど、同行の優先度の高いビジネス・サービスも移行しました。

このプログラムは一連の6つの「ウェーブ」で構成され、各ウェーブに含まれる業務上重要な一連のアプリケーションが新しいインフラストラクチャーに移行されました。また、同行とその顧客への影響を最小限に抑えるために週末にカットオーバーが実行されました。これらのウェーブは、IBMがその他数多くの主要な金融サービス移行プロジェクトで利用した高度な方法論を使って計画および実行され、その方法論は、現在、IBM Garage™ Method for Cloudの一部となっているIBM Cloud® Innovateリポジトリーで文書化されています。

これらのウェーブは、移行されるアプリケーションを分離した保護的な「バブル」を作ることにより、リスクを軽減するように設計されています。基本的に、各ウェーブは、必要なデータセンター・インフラストラクチャーを構築し、そこにアプリケーションとデータのコピーをインストールすることから始まりました。次に、ハードウェア、オペレーティング・システム、アプリケーション、データ、およびバッチ処理の厳格なテストを実施して、ターゲット環境が問題なく機能することを確認しました。バブル内のテストがすべて合格すると、チームは、所定の期間内にカットオーバーを正常に実行できることを確信するために、「最終リハーサル」を何度か行います。そして最後に、チームはカットオーバーを実行したのです。

ピーク時には、エンタープライズ・サービス・プログラムに700人を擁するチームが配置され、そこには300人を超えるIBM社員も加わっていました。これらの人材は、インフラストラクチャー、アプリケーションの移行、テストなど、各ウェーブ内の特定のワークストリームに割り当てられました。これらのワークストリームのリーダーは6つの全ウェーブで一貫していたため、継続性があり、後続のウェーブは、先行して実施された移行作業中に得られた知識を活かすことができました。

分離プログラム

分離プログラムは、同行がThe Co-op Groupのインフラストラクチャーからテクノロジーを最終的に分離するための準備と実行を支援する幅広いプロジェクトで構成されました。これらのプロジェクトは一連の独立した「タワー」に編成され、それぞれが別々のチームによって管理されました。一連のタワーは以下のとおりです。

  • アプリケーションの移行:100を超えるアプリケーションと、監視とデータ転送のためのテクニカル・ツールの移行または使用停止に重点を置きました。これらのシステムには、多くの場合、複雑な依存関係があります。たとえば、1つのサービスが100を超えるデータ・フィードと連動し、それぞれが異なるサード・パーティー・プロバイダーからデータを得ていました。
  • アプリケーションの変更:新しいデータセンターに移行する前にモダナイズする必要がある多数の大規模アプリケーションに重点を置きました。
  • データウェアハウジング:同行の大規模なSerial Attached SCSI(SAS)分析環境のアップグレードと、さまざまなSASシステムを新しい銀行専用の単一インスタンスに統合することに重点を置きました。
  • レガシー:近い将来、置き換えられる予定の既存の銀行所有のデータセンターで実行されている少数の非戦略的サービスのインフラストラクチャー・ホスティングとネットワーク・サポートの引き継ぎに重点を置きました。
  • セキュリティー:同行がグループ企業に提供していたさまざまなセキュリティー・サービスを段階的に廃止することに重点を置きました。
  • 外部接続:多数のサード・パーティーの仮想プライベート・ネットワーク(VPN)接続をターゲット・インフラストラクチャーに移行することに重点を置きました。
  • IT管理サービス:同行とグループ企業の間で共有されていたサービスに重点を置きました。たとえば、ユーザー・ディレクトリーを同行とグループ企業の2つの組織それぞれに対して個別のインスタンスに分割しました。
  • ネットワーク:同行とグループ企業のネットワーク間でネットワークを分離することに重点を置きました。リスクを最小限に抑えるために、ネットワーク・チームは「ビッグバンな」カットオーバーを回避し、代わりに同行の環境を7つの中間状態を経て移行して、最終的な分離に備えました。
IBMと共に実現した変革プログラムにより、IT戦略の管理を可能にした独立したアーキテクチャーを構築することができました。 Andrew Bester Chief Executive Officer The Co-operative Bank
ダウンタイムのない移行の実現

どちらのフェーズも計画どおりに実施され、同行は変革が完全に成功したと評価しています。エンタープライズ・サービス・プログラムでは、どのカットオーバーにも重大な問題はありませんでした。たとえば、6つのウェーブの中で最も大規模で最も複雑なコア・バンキング・ウェーブは、予定より4時間以上早く完了し、カットオーバーを実施した週末以降、重大度1の問題は発生しませんでした。実際、同行のITリーダーシップ・チームのメンバーによれば、その翌日は「ここ数カ月で最も静かな月曜日」だったとのことです。

同様に、分離プログラムの終了を告げる最終的なテクノロジー分離の後、同行では重大度1の問題も重大度2の問題も発生しませんでした。これは、同行が着手した変革の範囲と規模を考えると、目覚ましい成果です。

The Co-operative BankのITおよび変更ディレクターであるMark Record氏は、プロジェクト期間中、分離プログラム全体を通じてIBMチームと肩を並べて作業にあたりました。Mark Record氏は次のようにコメントしています。「プロジェクトが成功したのは、何よりも、チームに適切な人材が揃っていたからです。当行のチームはこちらのアプリケーションとシステムに関して長年にわたり蓄積した知識を提供し、IBMは他では見られないレベルの移行に関する専門知識を提供してくれました。適切なリソースが整っていたため、その結果に全幅の信頼を寄せることができました。プロジェクトの精査中も、そのプロセスを信頼し、『パイロットに飛行機の操縦を任せよう』という状況でした」

また、Mark Record氏はこのようにも話しています。「IBMの移行に関する方法論は世界クラスですが、最良の方法論であっても、これほど大規模なプロジェクトでは、発生するすべての問題を解決できるわけではありません。解決できない問題にぶつかったとき、システムの隅々まで知り尽くし、迅速に対応できる人材が必要です。IBMはそれを提示してくれたのです」

たとえば、エンタープライズ・サービス・プログラムの期間中に、ソース環境では完璧に機能するにもかかわらず、同一構成のように見えるターゲット環境のバブル・テストでは正しく動作しないアプリケーションがありました。担当のIBM技術理事は、関連するチームとすべてのアプリケーションとミドルウェアの構成設定を見直し、IBM製品の専門家と同行の専門家と協力して何が問題であるかを突き止めようとしました。その結果、オペレーティング・システムの奥深くに問題があることがわかり、そう診断されると、問題は簡単に解決されました。当時、同行のあるステークホルダーは、「どのような問題に直面したとしても、このチームなら常に答えを見つけ出せる」と述べていました。

どちらの変革プログラムにおいても、チームは合計800台以上のサーバーで実行されている250を超えるアプリケーションの移行に成功しました。何百件もの技術実装でチームは100%の成功率を達成し、ビジネスとその顧客にほとんど影響を与えることなく、テクノロジーの最終分離を完了しました。

その結果、同行は現在、2つの世界クラスのデータセンターと最先端の災害復旧機能を備えており、日常業務に対応するレジリエントなプラットフォームと、将来のさらなるデジタル変革のための強固な基盤を提供しています。アプリケーションのモダナイゼーションにより、同組織の技術的負債が減少し、デジタル・サービスの開発と新製品の市場投入をよりアジャイルに進めやすくなりました。

同行の最高経営責任者であるAndrew Bester氏は次のように結論付けています。「IBMと共に実現した変革プログラムにより、IT戦略の管理を可能にした独立したアーキテクチャーを構築することができました。新しいデジタル・サービスの開発とクラウドへの移行を継続する中で、英国全土の数十万にのぼる個人や法人のお客様に、より迅速でよりスマート、かつより便利なバンキング体験を提供するために必要な技術的基盤が整ったのです」

The Co-operative Bankのロゴ
The Co-operative Bankについて

The Co-operative Bank (ibm.com外部へのリンク)は、リテール・バンキング、インターネット・バンキング、当座預金口座、住宅ローン、普通預金口座、クレジットカードを個人顧客および中小企業に提供する英国の大手プロバイダーであり、350万人以上の顧客にサービスを提供しています。

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2021年3月、米国で作成。

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