IBM®ビジネス・パートナーのRepo Cyber社は、ユーザーの個人情報を保護し、使いやすいスマート・シティ・アプリにより、潜在的な情報提供者が通報しやすくなるように支援しています。IBM Cloud®インフラストラクチャーに支えられたRepo Cyberアプリにより、イスラエルのある都市では市民からの通報数が450％以上増加し、警察では苦情に迅速に対応できるようになりました。
Repo Cyber Ltd.は、個人が犯罪やその他の懸念事項を当局に匿名で報告できるAI強化アプリを迅速に構築してデプロイするため、高度にセキュアでスケーラブルなクラウド・プラットフォームを必要としていました。
Repo Cyber社は、Repo Cyberアプリのハイブリッド・マルチクラウド・ソリューションを設計するためにIBMを選択しました。IBM Cloud環境を使用すると、スタートアップ企業である同社は資本コストと運用コストを最小限に抑えながら、イノベーションを迅速に実現することができます。
犯罪を目撃した市民の多くは、法執行機関に通報しません。多くの場合、加害者の報復を恐れているためです。また、単に警察署で列に並んだりコールセンターの担当者と話したりする不便さを嫌う人もいます。たとえ市民が行動を起こしたとしても、言葉の壁、正確な場所が分からない、その他の困難のために完全な説明ができない可能性があります。
Repo Cyber社の創業者は、市民が自分たちのコミュニティをより安全で、より住みやすい場所にすることができる力を与えたいと考えていました。そのために、自分自身や家族を潜在的な危害にさらす心配から個人を解放するスマート・シティ・アプリの開発を目指しました。携帯電話を数回タップするだけで、自分の都市で起こっていることに関する重大な情報を法執行機関やその他の官公庁・自治体の機関に匿名でタイムリーに送信できます。
Repo Cyber社の最高技術責任者（CTO）で共同創業者のZeev Mindali氏は、「私たちの主な目標は、市民が安全かつ確信を持って犯罪やテロ攻撃、その他の懸念を通報できるようにすることであり、同時に日々の作業を自動化して、より迅速で正確な対応を可能にすることでした」と説明します。
Mindali氏と同社の最高経営責任者（CEO）で共同創業者のYehuda Solomon氏は、新しいアプリに対する共通のビジョンだけでなく、ふたり合わせて数十年にわたる法執行経験をイスラエルのスタートアップ企業に結集しました。Mindali氏は以前イスラエル警察に勤務していたITプロフェッショナルで、Solomon氏はイスラエル警察の退役准将です。ふたりは、民間人の行動と警察の手順に関する深い洞察を活用して、アプリを市民中心にすることに焦点を当てて、ソリューションの要件を計画しました。
「私たちは、このアプリをあらゆる携帯電話に必須のものにしたいと考えていました」とMindali氏は言います。つまり、アプリは使いやすく、多数の言語とメディア形式をサポートでき、セキュリティーが保護される設計でなければなりませんでした。また、アプリをホストするための非常にセキュアでスケーラブルなクラウド環境と、AIツールセットを含むその他の高度なテクノロジーの両方を提供できるサービス・プロバイダーを検討しました。
同社は、IBMを選択する前に、多くの主要なクラウド・サービス・ベンダーを評価しました。「（IBMのチームは）弊社のソリューションを信じ、そのアーキテクチャーを決定するのを手伝ってくれました」とMindali氏は言います。「その後も短期間で、弊社のリスクを最小限に抑えながらアプリをセットアップし機能を拡張する手助けをしてくれました。」Repo Cyber社は、 IBM Global Entrepreneur Program for Cloud Startupsの参加者として、IBM Cloud プラットフォームやその他の貴重なテクニカル・リソースおよびビジネス・リソースに手頃な価格でアクセスすることができました。
Repo Cyber社は、ロシア人や北アフリカ人、エチオピア人、およびその他の国からの移民が生活し、さまざまな言語が話されている、人口約4万人のイスラエルの港湾都市Kiryat Yam市でアプリをテストしました。同市の警察やその他のファーストレスポンダーは、テロ行為、家庭内暴力、破壊行為、地震による傷害や被害など、さまざまな事件に対応しています。さらに、同市のC&Cセンターは、ウェブカメラを通じて街路や地中海の海岸線を監視し、交通管制システム、気象衛星、大気質センサー、地震探知機からの情報も受信しています。
Repo Cyber社とIBMは、パイロット・プログラムを通じて市当局と協力して、Repo Cyber社のシステムを市のC&Cネットワークと統合し、住民や観光客がアプリを利用できるようにしました。これで、危険な犯罪や地震、その他の生命を脅かすような事件から、ゴミ収集や街路の穴などの緊急性の低い公衆衛生や安全上の懸念に至るまで、あらゆるものを個人が迅速に通報できるようになりました。テキスト、写真、動画、または音声メッセージを使用可能で、個人情報は匿名のままであることが保証されます。このアプリでは、80以上の言語でコミュニケーションできるオプションも提供されています。
IBM Watson®のAI技術が、情報を迅速に分析し、他の個人からの同様の報告や、市の監視システムから収集された関連データと関連付けます。さらに、データを自動車、テロリスト、家出人、およびその他のデータベースと相互参照します。このような高度な分析に基づいて、Repo Cyber社のシステムは官公庁・自治体の関連機関に自動的に通知し、その機関が情報に基づいて対応方法を決定できるようにします。また、同市のC&Cセンターのオペレーターおよびその他の職員（ほとんどは第一言語がヘブライ語）向けに、必要に応じて報告書を翻訳します。これらはすべて、クラウド上で数秒で行われます。
「例えば、ある市民が、道路が冠水していると通報したとします」とMindali氏は説明します。「道路の冠水の原因は2つしかありません。豪雨か水道管の破裂です。Repo Cyber社のシステムは、あらゆるAPIからデータを取得し、環境や天候、および市のどこで何が起こっているかについて情報を得ます。その上でシステムが詳細な最終レポートを提供します。それに基づき、最終意思決定者が緊急車両を出動させる必要があるかを決めることができます。」
同市の警察、消防隊、その他のファーストレスポンダーは、ウェブやモバイルの専用ポータルサイトを通じてインサイトを受け取ります。Mindali氏は、Repo Cyber社のインテリジェンスによって、危険な状況がエスカレートして重症者や死亡者が出る前に、より迅速かつ緊急に対応できるようになると強調します。同氏は最近、ある市民がこのアプリを使って、10代の少年2人が電動自転車で危険な運転をしていると匿名で通報したケースを紹介しています。「警察官が駆けつけると、そのひとりが（マリファナの入った）小さな袋をいくつか持っていて、中学生に売ろうとしていたのです」とMindali氏は言います。「Repo Cyber社のシステムが危険な出来事を警察に警告したので、警察は迅速に対応することができ、結果的により深刻な事件を防ぐことができたのです。」
Repo Cyber社はIBMと協力して、オープンなIBM Cloud基盤上で提供される以下のサービスを備えたハイブリッド・マルチクラウド・ソリューション・アーキテクチャーを設計しました。
- IBM API Connect®サービスは、地方自治体などのサード・パーティーのシステムとの接続用に、単一の署名および暗号化されたゲートウェイを提供します。
- IBM Blockchain PlatformはLinux FoundationのHyperledger Fabricを利用し、個人情報を確認して市民からの各通報元を検証します。
- IBM Cloudant®分散データベースは、スループット容量とデータ・ストレージを高速化し、拡張します。
- IBMのIDおよびアクセス管理ソリューションは、セキュアなサインオンを通じてユーザーにアクセスを許可します。
- IBM Watson IoT® Platformは、自治体のインテリジェント・デバイスのネットワークからデータをキャプチャします。
- IBM Watson Knowledge Studioサービスは、テキスト、動画、画像、およびその他の非構造化データを分析するための高精度モデルをカスタム・トレーニングします。
- IBM Watson Visual Recognitionサービスは、ビジュアル・コンテンツに素早く正確にタグを付け、分類し、学習させます。
マルチクラウド・サービスは、ヘブライ語を含む複数の言語でSpeech to Text翻訳を提供します。
身元を明かさなくてすむようになり、Kiryat Yam市では不審な行動を通報する傾向が強くなっています。また、希望の言語や複数のフォーマットでコミュニケーションできるため、確信を持って行動することができます。ある2週間で、アプリを使用して毎日約14件の匿名通報がありました。これは450％以上の増加に相当します。Kiryat Yam市における3か月間にわたる概念実証（POC）期間中、約1,000人がアプリを使用して通報した一方で、C&Cセンターのオペレーターが対応した電話での通報数は約20％減少しました。さらに、ヘブライ語以外の言語、特にルーマニア語、ロシア語、イディッシュ語を話す人々による通報数が50％以上増加しました。
また、同市の職員の対応力も向上しました。公衆衛生、公共サービス、社会サービス、医療を含む市のすべての部門でサービス・レベルが最大30％向上しました。特に、警察では効率性レベルが35％以上向上し、C&Cセンターではオペレーターが苦情を処理するのに必要な時間が平均20％短縮しました。
「このシステムの提供を開始したとき、多くの自治体職員は、システムが自分たちに取って代わるのだろうと考えました」とMindali氏はコメントします。「しかし、システムが業務の一部を代行してくれることで、自分たちが市民の通報に対してより迅速かつ最も現実的な方法で対応できるようになると気づいてから、彼らはこのシステムの大ファンになりました。」
パイロット・ソリューションに対する評価の高さは、Kiryat Yam市が初期パイロット終了後にRepo Cyber社のシステムを完全導入したことからも分かります。市当局者らは、同国第3の都市ハイファを含む他のイスラエルの自治体にもこのシステムに対する熱意を語っていますが、おそらく最も重要なことは、市の調査で、地域社会における住民の全体的な安全・安心感が50%以上高まっていることが明らかになったことです。
最後に、Repo Cyber社は、スマート・シティ・アプリをIBM Cloud上に構築することで、資本投資とリスクを最小に抑えつつPOC開発を高速で行うことができました。クラウド・インフラストラクチャーは、同社が高いサービス品質と低い運用コストを維持しながら、AIを中心としたイノベーションを迅速に実現するのにも役立っています。
Mindali氏は、同社は今後もIBMと協力してアプリの新しい機能を開発していくつもりだと強調しています。「IBMが提供してくれるサポートは、かけがえのないものです。まるで大家族のようで、これが、弊社がIBMを使い続ける理由です。その次は、セキュリティーの問題であり、これはイスラエルにとって非常に重要です。」
Repo Cyber社は、市民が身元を明かさずに匿名で犯罪やその他の懸念事項を官公庁・自治体機関に通報できるスマート・シティ・アプリを開発しました。大規模企業が、職場でのセクシャル・ハラスメントやいじめなどをなくすためにRepo Cyber社のシステムを使用することもできます。同社は2017年に設立されたスタートアップ企業で、イスラエル北部のハイファ湾地区のKiryat Yamにあるオフィスで4名を雇用しています。
法務
© Copyright IBM Corporation 2019. IBM Corporation, IBM Hybrid Cloud, New Orchard Road, Armonk, NY 10504
2019年7月、米国で制作。
IBM、IBMロゴ、ibm.com、Cloudant、IBM API Connect、IBM Cloud、IBM Watson、Watson、およびWatson IoTは、世界の多くの国で登録されているInternational Business Machines Corp.の商標です。その他の製品名およびサービス名はIBMまたは他社の商標である可能性があります。IBMの登録商標の最新リストは、Webサイトの「著作権および登録商標情報」（ibm.com/trademark）でご確認いただけます。
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記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。IBM製品およびプログラムを使って他社製品またはプログラムの動作を評価したり、検証する場合は、お客様の責任で行ってください。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。
Repo CyberアプリはIBMの製品またはサービスではありません。Repo Cyberアプリは、場合によっては、製品または製品に付属するRepo Cyber Ltd.の利用規約に基づいてユーザーに販売またはライセンス供与されます。Repo Cyberアプリの可用性、あらゆる保証、サービス、サポートは、Repo Cyber Ltd.が直接責任を負い、ユーザーに直接提供します。
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