ホーム お客様事例 Prometeo Platform 火の中へ:消防士の命を守る
Prometeo社、コンテナベースのアーキテクチャーを使って健康観察アプリケーションを拡張
森林火災

山火事から逃れられる人はいません。

NASA外部リンクによると、地球上では常に何かが燃えています。農地における野焼きや、化石燃料の燃焼、または雷や人によって引き起こされた山火事などが起きている可能性があります。NASAは衛星「Terra」で世界中で燃えている火災を積極的に監視しているため、これを把握していることでしょう。時には、1,000平方キロメートルの範囲で1日に30件もの火災が発生することもあります。こうしたすべての燃焼の最終生成物には、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素などの混合ガスが含まれています。

山火事は深刻な問題となってきています。The Climate Reality Projectl外部リンクは、ワシントンDCで気候解決のための闘いを率いるアクティビストの世界的ネットワークです。化石燃料の燃焼による気温の上昇は、植生を乾燥させ、山火事はより大きく、しぶとくなっていると述べています。

Wildfire Today外部リンクは、消防士は生きている植物と枯れた植物(煙)の燃焼による有害な汚染物質、灰や土壌の粉塵、呼吸保護具のない長時間のシフトなどの健康被害にさらされていると説明しています。山火事は、人が走るよりも速く進行します。

これは世界的な問題であり、Prometeo Platform S.L.は消防士の有害物質曝露を測定する解決方法を使って取り組みたいと考えていました。

火災件数

 

NASAは1 ,000平方キロメートルの範囲で1日に30件もの火災を測定しました。

 

 

 

世界全域における目標

 

Prometeoチームの目標は、世界中にいるすべての消防士の有害物質暴露を測定することです。

 

 

私たちは消防士にとっての現実世界の問題に取り組むためにPrometeo社を創業しました。 Salomé Valero博士 (工学)、Co-founder(共同設立者) Prometeo Platform S.L.
現実世界の問題への取り組み

Salomé Valero博士(工学)は、スペイン、バルセロナにある大手銀行のIT service delivery manager(ITサービス・デリバリー・マネージャー)です。また、Prometeo社の共同設立者でもあります。

Prometeo社は、山火事の消火活動に従事する消防士の有害物質への曝露を、カラー信号と警報を通じてほぼリアルタイムで監視するシステムを提供しています。

「消防士にとっての現実世界の問題に取り組むためにPrometeo社を創業しました」とValero氏は言います。「私たちは、山火事の作業中に吸い込む煙や有毒物質の蓄積的な作用から身を守るため個別に戦略を設定し開発できるように支援します」

この携帯電話サイズのデバイスには環境センサーが組み込まれており、消防士がジャケットに付けて身につけられるように設計されています。一酸化炭素や二酸化窒素などの有毒物質の環境に加え、温度、湿度、煙の濃度を監視します。

デバイスから値を収集し、ネットワークを介して認知プラットフォームに送信し、そこで機械学習モデルによりデータを処理します。データは、Prometeoダッシュボード上で簡単に色分けされたステータスに抽出され、消防指令センターが消防士の煙と有害物質への曝露を監視するために使用できます。

緑は消防士の健康状態が良好であることを表し、黄色または赤は注意または「安全な場所に戻れ」を表します。その場合、消防隊の指揮官は消防士を消防区域から退去させる措置を取ることができます。

Prometeoシステムは、複数のIBM Cloud製品に依存して機能しています。

失敗から始まった成功物語

Prometeo社は、 Call for Codeコンテストへの応募から始まりました。Call for Codeは、開発者やその他の問題解決に取り組む人々に、社会的、人道的な問題に取り組むオープンソース・テクノロジー・プロジェクトで協業する機会を提供する世界的なプログラムです。Call for Codeイニシアチブは、テクノロジーのための優れたイニシアチブとしては業界最大規模です。この組織は、毎年開催されるコンテストを後援しており、優勝者には賞金と、ソリューションを開発して市場に投入するための包括的なサポートが与えられます。

「IBMとの会議中にCall for Codeに関する情報を受け取りました」とValero氏は言います。「勤務している銀行では、たくさんのボランティア活動が行われています。優れたプロジェクトの技術を支援することに加えて、新しいIBM Cloudのテクノロジーを試す良い機会になると思いました」

Valero氏はIT環境の友人や同僚5人でチームを結成し、ヨーロッパ南部の自然災害についてブレーンストーミング・セッションを行い、特にスペインの山火事に焦点を当てました。当初のアイデアは、山火事の危険から人々の家を守るためのシステムでした。

「Prometeo社の成功の物語は失敗から始まりました」とValero氏は説明します。

チームは2018年のCall for Codeチャレンジに参加しましたが、すぐにアイデアを改良しなければならないことに気づきました。彼らは専門家、つまり消防士自身に相談していなかったのです。「この経験の後、私たちは『よし、消防署に行って消防士と試験をしてみよう』と言いました」とValero氏は述べています。Valero氏は消防士と個人的に面識がなかったため、消防士のEメールを検索して、手紙を書きました。彼女は、現在Prometeoチームのメンバーである消防管理の専門家でベテラン消防士のJoan Herrera氏に連絡を取りました。

Valero氏はさらにこう続けます。「私のチームと一緒に消防署に行ったところ、彼はこう言いました。『皆さんはテクノロジーについてはよくご存知のことでしょう』ところが、山火事については何もご存知ないのではないでしょうか』それは本当のことでした。彼は正しかったですし、それが勝てなかった理由です」

ふりだしに戻る

Herrera氏は、山火事に関する専門知識を共有しました。彼は、消防士がマスクを着用していないことが多い野焼きなど、火災の中で活動しているときに消防士が常に吸っている煙と有毒物質について不安と懸念を表しました。

「彼は同僚の消防士を亡くしたことなど仕事について話をしてくれました。そのことがとても印象に残っています」とValero氏は言う。「Herrera氏の所属する消防署は各消火活動に関するデータを保管していましたが、Excelファイルで手動で作業し、各消防士からの3つのデータ・ポイント(火災の開始、中間、終了)のみを記録していたことがわかりました。これらのデータ・ポイントは、現場で消防士の後を追った看護師によって収集されていました」

現在では技術者3名、消防士(Herrera氏)、看護師1名を含むPrometeoチームがバルセロナに再集結しました。力を合わせて、有害物質による影響の問題、消防士のための手順、この問題に取り組むための技術的な適用方法について、枠組みを作りました。その後、彼らは2019年のCall for Codeチャレンジに向けたシステム構築に取り組み始めました。その焦点は自然災害でした。

「IoT(モノのインターネット)センサーとクラウド上のAIの力を活用すれば、各消防士をリアルタイムで監視するシステムを構築できることがわかっていました」と Valero氏は言います。

Prometeoチームは、複数のIBM Cloud サービスを使用してプロトタイプのシステムを構築しました。IBMは、ダッシュボードにほぼリアルタイムで情報を表示するIoT(モノのインターネット)プラットフォームを用意しました。IBM Cloudantテクノロジーが完全に管理されたIBM Cloudサービス・データベースを提供し、IBM Cloud Kubernetes Serviceが複数のホストにわたりアプリケーションを管理できます。

Node-RED (ibm.com外部へのリンク)は、OpenJS Foundation (ibm.com外部へのリンク)が提供するローコード/ノーコード・プログラミング・ツールで、もともとはIoT(モノのインターネット)のハードウェア・デバイス、API、オンライン・サービスを「配線」するために使用されていました。オリジナルのPrometeoデバイスは3Dプリンターで作成されましたが、現在のバージョンは、消防士が装着するSamsung製の堅牢なスマートフォンとスマートウォッチであり、消防士はBluetooth経由でIBM Cloud App IDを使って安全にデバイスにログインできます。

「このデータにより、各消防士に何が起きているのかが分かり、彼らを守るために個別に設定して戦略を立てることができます。これがPrometeoシステムが目指しているところです」とValero氏は言います。

今回、チームはCall for Codeのチャレンジに参加し、最優秀賞を獲得しました。

クラウドネイティブ開発によるプロジェクトの拡大

Samsung製デバイスの実地試験はスペインにおいて野焼きの条件で実施されており、実地試験は世界中で継続されています。プロジェクトの成長をサポートするために、Prometeo社チームはIBM開発者と協力して、オリジナルのモノリシックなアプリケーションを採用し、クラウドネイティブ開発から得られるメリットを実現しました。データの処理やダッシュボードの構築などの特定のニーズに対応するために、アプリはいくつかのマイクロサービスに分割されています。

このアプローチには複数の利点があります。「各マイクロサービスは、Python、Node JSであるかを問わずに、ジョブに最適な言語でコーディングができます」と、Call for Codeの IBM Developer AdvocateであるUpkar Lidder氏は述べています。「またこれは、メンテナンスやコード実行の失敗の際に、アプリケーション全体がダウンするのではなく、個々のコンポーネントのみがダウンするということでもあります。現在、複数の開発者がプロジェクトに取り組んでいますが、各開発者が一度に1つのマイクロサービスのみを作業している限り、ある開発者が別の開発者のコードを上書きする危険は少なくなります」

これらの各マイクロサービスは、IBM Cloud Kubernetes Serviceによって管理される独自のDockerコンテナに収容されるようになりました。これにより、アプリケーションの拡張に応じてインフラストラクチャー管理が合理化され、アプリケーションをある環境から別の環境に移植するプロセスが簡単になります。

「IBM Cloudテクノロジーを使うと、拡張が簡単にできます。世界中にデータセンターがあるため、各地域でデータを安全に保持できます」と Valero氏は言います。

さらに、Prometeoチームは、 Pyrrha(ibm.com外部へのリンク)と呼ばれるオープンソース・プロジェクトを Linux Foundation(ibm.com外部へのリンク)に提供し、他のユーザーが新しい場所でこのシステムを導入できるようにしています。「このテクノロジーを必要としている人はたくさんいます。どのような導入も重要です」と Valero 氏は言います。Prometeo社の短期的な目標には、長期にわたる有害物質曝露の分析やスマートフォン機能の更新などが含まれます。

現在のスマートウォッチのセットアップにより、各消防士は自身の有害物質への曝露を監視できます。「彼らは、どちらかといえば最初に手を引くことができないグループです」とValero氏は言います。「ですから、ステータスが赤になったときにスマートウォッチで確認できることが重要だと思います」

最終的な目標は、各消防署が消防士を守るための戦略を構築できるように独自の要件を含めることができる、オープンで柔軟なプラットフォームを用意することです。

「消防士一人ひとりの体調や累積暴露量を考慮しながら、煙の作用を実際に示すビッグデータが得られることを期待しています」とValero氏は言います。

ヒーローを守る

Prometeoシステムの次期バージョンでは、Samsung Health APIを統合し、各消防士のより具体的なメトリクスを評価し、復旧戦略の考案に役立てる予定です。例えば、平地を走るのと丘の上を走るのは異なり、丘の上では消防士の呼吸も異なるため、同じ量の煙でも影響は大きくなります。

「IT業界では、悪い日があるということは、銀行のシステムに障害が発生して作戦室にいるということで、最悪のシナリオは帰宅が遅くなるかもしれないということです」とValero 氏は言います。「しかし、消防チームにとって悪い日は、ご想像のとおり本当に悪い日になります」

Valero氏は次のように結論付けています。「消防士は私たちのヒーローです。彼らは大きな勇気を持っていますが、Prometeoプラットフォームを活用して彼らを守らなければならないと思っています。私たちの夢は、世界中のすべての消防士の上着や手首にPrometeo社のIoT(モノのインターネット)デバイスを付けることです」

Prometeo Platform S.L.のロゴ
Prometeo Platform S.L.について

 

スペインのバルセロナに拠点を置くPrometeo社外部リンクは、2019年Call for Code Global Challengeで優勝した後に設立されたスタートアップです。同社は、山火事の消火活動や野焼きの管理時に消防士がさらされる有害物質を測定するIoT(モノのインターネット)ソリューションを提供しています。その認知プラットフォームでは、ダッシュボードやスマート・デバイス上の信号や警告を通じて消防士をリアルタイムで監視できます。

次のステップ
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脚注

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2022年4月、アメリカ合衆国で制作。

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