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IBMのビジネス・プロセスソフトウェアで治療成績を最大化
診察器具を身につけた医師

NHSBTは、IBM Business Process Manager on Cloud、Operational Decision Manager on Cloud、IBM Blueworks Liveを使用して、ワークフローを取り込んでプロセスを簡素化し、組織が割り当て体制のルールを開発、実装、変更し続けられるようにする、アジャイル開発のためのルール・ベースのプラットフォームを構築しました。

ビジネス上の課題

英国の臓器提供の仕組みにおいて公平性を確保し、有用性を最大化するために、NHSBTは臓器の割り当て体制を最適化し、その仕組みが迅速かつ柔軟に適用されるようにする必要がありました。

概要と経緯

NHSBTは、IBM Business Process Manager、Operational Decision Manager on Cloud、Blueworks Liveを使用し、割り当て体制を改良して最新の研究の成果やデータを反映させるためのアジャイル開発プラットフォームを構築しました。

成果 合理化
臓器割り当て体制の改善点および変更点をよりスムーズに適用
最大化
英国内で提供された臓器の活用率と臓器割り当ての公平性を最大化
解放
クラウドを活用し、テクノロジーではなくNHSBTのミッションに集中するためにリソースを解放
ビジネス上の課題の詳細
全国規模で臓器提供を管理

英国各地で臓器移植の順番を待つ何千人もの患者にはあまり知られていませんが、NHSBTは、患者にとって移植外科医と同じくらい重要な役割を果たしています。ドナーの臓器が1人の患者の命を救うまでに、多くの複雑な調整業務が行われます。

この業務を担うのがNHSBTです。同機関は、移植待機者のリストを管理し、提供されたすべての臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸など)に対し、レシピエント候補を特定するマッチングおよび割り当てプロセスを運営しています。

NHSBTで臓器提供・移植担当ディレクターを務め、ドナーの病院および移植外科医と連携してドナーの家族が臓器提供に関する決定を下す支援をしているSally Johnson氏によると、英国では移植のために寄付される臓器の数は増えつつあるものの、毎日平均3人の患者が、移植を待っている間に死亡しています。「より多くの命を救うためには、ドナー・プールを最大限に活用することが欠かせません。割り当て決定プロセスを改善することで、利用できる臓器が増加するのです」

ドナーとレシピエントの年齢、体格、臨床状態から、各臓器の種類に特有の生理機能に至るまで、さまざまな要因が割り当ての決定(割り当て体制)に影響を与えます。たとえば、腎臓の適切な割り当て体制に関与する医学的決定要因は、心臓や肝臓における決定要因とはまったく異なります。

いずれにせよ、NHSBTは、臓器移植のアクセスの公平性と有用性を全体として最大化できるようにすべての仕組みを開発しており、その仕組みはすべて、最新の研究の成果や医療の進歩を反映することを企図したものです。この最新の状態を維持する、つまり割り当て体制を改良し、新しいルールとプロセスの開発と実装を続ける必要があります。まずこのことが、NHSBTにおけるテクノロジー上の課題として現れます。

「私たちは2~3年ごとに体制を更新してきましたが、問題は、更新した体制と、関連するビジネス・プロセスを既存のIT環境に組み込んでいたことです」と、NHSBTのチーフ・デジタル・オフィサーを務めるAaron Powell氏は述べています。「月日が経つにつれて、安全に変更を加えることができなくなりました。人事異動により組織の知識が失われ、入り組んだシステムのどこで何が起こっているのかを完全に把握できなかったためです」

Powell氏によると、割り当て体制に変更を加えるには受け入れがたいほど長い時間がかかっており、数年かかることもあったそうです。もっと良い体制を新たに開発するよりも長い時間がかかっていました。「私たちはワークフローを取り込んでプロセスを簡素化し、ルールを素早く開発、適用、変更する方法を見出さなければなりませんでした」

新しいデータや研究の成果に基づいて、割り当て体制を普段から少しづつ適応させていけると私が言うと、医師たちは確かに理解してくれます。もう何年も待つ必要はありません。 Sally Johnson氏 臓器提供・移植担当ディレクター NHSBT
概要と経緯の詳細
ルール・ベースのプラットフォームを使用した臓器割り当てとプロセス自動化

ルールを開発・実装し、それを迅速に変更できるこの機能が、割り当て体制の土台になります。「こうしたルールを効果的に利用できるようにするために、IBM Business Process Manager on Cloudが活躍します」とPowell氏は言います。「このツールは、Operational Decision Manager on Cloudとうまく統合できるだけでなく、既存のシステムにもうまく統合できることがわかりました。このことが、ワークフローを取り込んで変更を迅速に実装するための鍵となります。Operational Decision Managerにおけるワークフローと意思決定機能の両方を再現して、実際に割り当てを実行できるようにします」

NHSBTは近年、極めて重要なマイルストーンに達しました。プロセスの最適化にIBM Business Process Manager on Cloud(BPMoC)を使用し、割り当て体制そのもののルール・エンジンとしてIBM Operational Decision Manager on Cloud(ODMoC)を使用して開発された新体制によって初めて割り当てられた臓器(心臓)の移植です。

Powell氏は、チームを率いてBPMoCで心臓および肺の割り当て体制ワークフローを構築しました。このワークフローでは、NHSBTの24時間オペレーション・センターが臓器提供のステータス(受け入れられたか辞退されたか)をモニターし、その後のワークフローを管理することができます。辞退された場合、適切なレシピエントが見つかるまで、迅速に次のレシピエント候補に当たることになります。

また、BPMoCとODMoCによってルールとプロセスが作られるのに対し、SaaS製品であるIBM Blueworks Live(BWL)ソフトウェアを使用すると、NHSBTが新しいプロセスとモデルを常時評価できるようになります。「Blueworks Liveのおかげで、アクセスしやすくわかりやすいフォーマットでワークフロー情報を取り込むことができ、実装計画を改善したり、実際の割り当て体制がどう機能するのかをより多くの人に明確に伝えたりできるようになりました」伝える相手には、IT業界の利害関係者だけでなく、統計学者、アナリスト、規制責任者、NHSBTオペレーション・センターも含まれます。

BWL、BPMoC、ODMoCは、NHSBTがクラウドに移行した最初のビジネスクリティカルなアプリケーションです。Powell氏によれば、組織が技術よりもミッション、つまりできるだけ多くの人々が必要な臓器移植を受けられるようにすることに集中する必要があったために、この移行が実現しました。「私たちにとってクラウドとは、どのデータセンターで何台の仮想マシンを稼働させるべきかといったことを、自分たちが心配しなくてもいいようにすることです」

成果の詳細
移植の成果の最適化

英国では平均して毎日4~5人のドナーが臓器を提供できる状態になり、1人あたり2.5~4個の臓器が提供されるため、NHSBTはクラウド・ベースのプラットフォームを心臓と肺の割り当て以外にも活用しようとしています。次の目標は、臨床医がモバイル・デバイスからアクセスできる全国規模の移植待機者リストです。これにより、ほぼリアルタイムで新しい患者を登録したり、患者のステータスを変更したりすることができます。

同時に、肝臓の割り当て計画も開発中であり、これにより肝臓移植の数が年間約50件増加すると予想されています。「これで50人の患者の命が救われたり、生活が大きく変わったりするのです」と、割り当て体制の開発をめぐって外科医とやり取りしているJohnson氏は言います。Johnson氏は、BPMoCおよびODMoCプラットフォームによって実現する新たなアジャイル開発機能により、外科医が入力した情報に対する応答性が向上したと評価しています。

同氏はこう続けます。「体制を設計するのは臨床医であり、私たちは彼らと協力してそれを実装できるものに変えます。私がクラウド・プラットフォームについての話をしても、臨床医たちはピンとこないようです。しかし、新しいデータや研究の成果に基づいて、割り当て体制を普段から少しづつ適応させていけると私が言うと、医師たちは確かに理解してくれます。もう何年も待つ必要はありません。医師たちにとって、これは非常に価値のあることです」

ITに関していうと、Powell氏は、割り当て体制の開発におけるデータの役割が拡大し、長期的には自己学習型のIT環境が出現するという未来を思い描いています。「システムに入力されるデータの性質が、将来の割り当て体制の設計方法に影響を与えるでしょうか。システムがほぼ自ら学習し、アクセスの公平性と臓器の有用性という相反する要求をどちらも満たせるようにしてくれる、そのような段階にいつか到達できるでしょうか。私は、できると思います。私たちはこれが、将来的によりインテリジェントな割り当て体制を実現するための一歩になると確信しています」

「私たちはバランスを追求します」とJohnson氏は言います。「私たちは、移植が必要になったあらゆる人が平等に移植に手が届き、機会を得られるよう努めています。割り当て体制の改良の一つ一つが、利用できるすべての臓器を最大限に活用し、移植後の生存年数を最大限に伸ばせるようにしてくれます。それこそが重要なのです」

今回の心臓移植の事例は、NHSBTにおけるテクノロジー主導のビジネス・プロセス管理の始まりを表しています。今回の件はたまたまですが、その結果は文字通り生死に関わります。しかし、より少ないリソースでより多くのことを達成するという課題は普遍的であり、公共部門と民間部門の両方の組織が、希少なリソースをいかに配分し、自組織にとって重要な成果をあげるかに取り組んでいます。組織が公共部門であるか民間部門であるかにかかわらず、また、問題となるのが生命なのか、アプリケーションの納期や、顧客の注文を時間通りに納品することなのかにかかわらず、ビジネスプロセス管理は、あらゆる組織を成功に導くために不可欠です。それはつまり、テクノロジーを活用して内部および外部向けのプロセスを特定し、把握し、最適化することなのです。

NHS Blood and Transplantのロゴ
UK National Health Service Blood and Transplant

英国NHS Blood and Transplant(NHSBT)(ibm.comの外部サイトにリンクします)は、英国保健省の独立機関です。その責務は、信頼できる血液、臓器および関連サービスを国民保健サービスに効率的に供給することです。NHSBTは設立以来、患者に提供するサービスの質を維持または向上させ、血液コストの上昇を安定させ、多くの企業サービスを集約してきました。

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脚注

 

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2018年12月、米国で作成。

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