ホーム お客様事例 HSBC USA社 データをマスターし、市場をマスターする
HSBCはAIを使用し、高成長が期待される銘柄を特定しています

投資の分野では、洞察力や重要な知識が不足していると、ポートフォリオが不十分になる可能性があります。幸いなことに、私たちは大量のデータが存在する社会へと移行しており、どんなに小規模な企業であっても豊富な情報を得ることができます。ところが残念なことに、このように情報が溢れる中にあって、どこに注目すべきかを把握し、何が関連しているかを判断することは、もはや人間だけで行える作業ではなくなりつつあります。

HSBC Global Marketsで定量的投資ソリューション販売担当副社長を務めるHolly Robertson氏は、「IBMによると、世界のデータの90%は過去2年間に作成されたものだそうです。おそらく、あと2年したら、また同じことを言うことになるでしょう。」

さらに問題を複雑にしているのは、最近生成されたこのような情報の多くが、自然言語テキストや、ソーシャル・メディアの投稿、画像、動画といった、アクセスしにくい非構造化フォーマットに含まれているということです。このようなフォーマットから関連する詳細を利用できれば、HSBCは特定の企業や機会について新たなインサイトを得ることができ、より良い投資判断につながる可能性があります。

Robertson氏は次のように語ります。「それはスプレッドシートに収まらない情報であり、簡単に定量化できないデータであり、メタデータ、つまり情報を取り巻く情報です。例えば、CEO(最高経営責任者)が最近の決算説明会で特定のトピックについてどのように話したかを、過去に同じトピックについてどのように話したか、さらにはその後ソーシャル・メディアでどのように話したか、などと比較して考えると、多くのことを学ぶことができます。私たちは、つながりを見つけてインサイトを引き出すために、従来のデータと代替データの両方を統合することを検討しています。それは、通常のファンダメンタルズ分析で示されるようなものではありません。」

彼女はさらにこう続けます。「この情報はすべて公開されおり、一般に利用可能となっています。時間と人材が無限であれば、一日中Twitterに張り付いて三角測量することもできるでしょう。しかし、その膨大な量は人間の理解を超えています。」そして、専門家でさえも、入手可能なデータを表面的に調べるだけでは、明らかに問題があります。それと同時に、信じられないほどのチャンスも存在するわけです。

膨大な売上高

 

HSBCはAiPEX関連において20億米ドルを超える収益を実現しました

卓越した実績

 

AiPEXは過去10年間でS&P 500を123%上回りました

信頼は非常に重要であり、IBMブランドは大きな信頼を得ています。そのため、IBMと協働することで信頼感が得られ、市場での成功を促進することができるようになります。 Holly Robertson氏 定量的投資ソリューション販売担当副社長 HSBC Global Markets
ビッグデータへの投資

このような情報の爆発的増加に伴い、個人投資や株式市場全体に対する関心も急速に高まっています。Robertson氏は、「過去2年間、私たちは皆これを目の当たりにしてきました。以前は、経験豊富な投資家や機関投資家と取引していましたが、現在は個人投資家がこれまでに見たことのないレベルで関心を高めています。どの企業が好調なのか、そしてその好調な理由は何なのかについてインサイトを求める人が増えています」と語ります。

HSBC内の定量的投資ソリューション(QIS)組織の場合、これらの新しい投資家(多くの場合、テクノロジーに精通した個人投資家)にそのようなインサイトを与えることが焦点でした。

Robertson氏は、「私たちが誇りに思っているのは、一見複雑に思えるものでも、それを分析できることであり、結果として、個人投資家がそれを理解し、願わくばそこから利益を得ることができるようにしたいのです。そこで、機関投資家が既にAIを活用してお客様に多大な利益をもたらしているように、私たちはその利益を個人にももたらしたいと考えました」と付け加えます。

特に、同銀行はAIの力を活用し、増え続ける自然言語テキストと非構造化データをスキャンすることで、より高い成長が見込まれる企業を特定したいと考えました。そして、これらの企業の株式から、リスク管理された超過収益指数を構築することで、HSBCはテクノロジーに精通したこの幅広い消費者にデータ主導の投資オプションを提供する画期的な金融商品を開拓できたのです。

AI専門家との連携

Robertson氏は、「既に公開されている関連データを調べてみると、圧倒されるほどの量でした。この構造化データと非構造化データをすべて取り出し、それを使用して成長を予測するというこのアイデアを推進するには、AIとその使い方を知っている人材が必要でした」と振り返ります。

そして、シリコンバレー周辺での一連の議論を経て、HSBCはIBMビジネス・パートナーであるEquBot社と協力して新しいインデックスを構築することに関心を持つようになりました。

EquBot社の最高経営責任者(CEO)であるChida Khatua氏は、次のように付け加えます。「実際、HSBCのQIS組織の責任者から私たちに直接連絡がありました。その責任者は、AIと機械学習を活用してデータをより良い投資判断に変えるという、私たちが行っている仕事に関心があり、それに期待していると言いました。そこで、EquBot社のAI投資プラットフォームを支える、IBM Watsonをはじめとするテクノロジーを理解してもらえるよう、HSBCと何度か話し合いました。」

Robertson氏は、「AIを使用するものを構築しようとする場合、IBMは出発点として非常に適しているように思えました。また、EquBotチームは多くの専門知識と経験をもたらしました。エンジニアリングの面でも、分散や資産管理の面でも、彼らは自分たちが話している内容を真に理解していました。最初から素晴らしいコラボレーションだと感じました」と語ります。

HSBCの新しいAI Powered US Equity Index(AiPEX)は、EquBot社のAI投資プラットフォームを銘柄選択ツールとして使用し、人間には容易に認識できない関係を特定し定量化することで、成長の可能性のある企業を選択します。IBM Watson DiscoveryIBM Watson Natural Language Understandingにより、分析とテキスト情報が強化され、プラットフォームで使用されるインサイトが得られます。一方、IBM Watson Studioは、これらの結果を管理する独自のAIモデルを監視し、バイアスやデータ・ドリフトを回避します。

EquBot社の最高執行責任者(COO)兼共同創設者であるArt Amador氏は次のように説明します。「私たちの取り組みにおいては、投資家のためにクラス最高のテクノロジーを使用しなければなりません。当社のAI投資プラットフォームと連動させるためにさまざまなオプションを検討しましたが、Watson DiscoveryとWatson Studioが最も効果的でした。結果として、彼らは最良の決断を下すことができました。IBMにはきわめて優れた実績があります。その実績は、私たちが定期的に話をする投資家やお客様もよくご存じです。」

関連するAIモデルを準備するために、EquBot社はIBMのテクノロジーを使用して、構造化フォーマットと非構造化フォーマットの両方を含む、約20年間の履歴データとテキストを集約し取り込みました。Amador氏は、「適切にバックテストを行い、さまざまなパラメータのファイン・チューニングを行うのに3カ月以上かかりました。それは、HSBC QISチームと共同で行いました」と振り返ります。

また、彼は次のように続けます。「どのくらいの頻度でリバランスを行えばいいのか、流動性に問題のある企業をどのようにして選別すればいいのか、インデックスにどの程度の割合の企業を組み入れるべきか、といった質問に答えるため、HSBCチームは、私たちのプラットフォームで何度も繰り返し作業することができます。投資家が望むと思われるものが見つかるまで、さまざまなモデルを試すことができるのです。」

AiPEXの詳細

AiPEXを構成する銘柄を選択するために、EquBot社のAI投資プラットフォームは、ルールベースの投資アプローチに従って、ラッセル1000指数に上場している企業を監視し、計算に基づいて最も高い成長が見込まれる企業約250社を特定します。

「それで、シミュレートされたAIリサーチ・アナリスト・チームとでも呼ぶべき集団が一体となって提供するインサイトに基づいて銘柄を選択しています。これらのシミュレーションは完全に連携して機能するため、1つのAIモジュールがある企業について何かを学習すると、すべてのAIモジュールもそれを理解するようになります。そして、その共有された知識を利用することで、最も成長しそうな企業のポートフォリオが選択されます。」

この「シミュレートされたAIリサーチ・アナリスト・チーム」は、評価対象である1,000社ごとに、財務スコア、ニュースおよび感情スコア、経営スコアという3つのスコアを割り当て、その結果として算出される成長の可能性を評価します。

Robertson氏は、「財務スコアでは、売上原価、株価収益率、収益費用、1株当たり利益などが調べられます。そして、2つ目のスコアであるニュースおよび感情ランキングは、Watsonがニュース記事やソーシャル・メディアを読み込み、特定の企業に関する人々の発言を確認することで決定されます。最後に、経営スコアでは、これらの企業の経営陣と経営幹部の行動と実績に加え、市場における彼らの認識度が調べられます」と説明します。

市場は常に変化しているため、このプラットフォームは毎月、これらのスコアを再計算し、AiPEXポートフォリオのリバランスを行います。また、計算の関連性を維持するために、EquBotチームは、最新の市場情報が入手可能になった時点で、仮想AIアナリストにその情報を提供し続けます。

「私たちは従来の構造化データを提供していますが、それは公開されている情報のほんの一部に過ぎません。私たちが利用する情報の約90%は構造化されていません。そこで、Watson Discoveryを使用すると、12以上の異なる言語で毎日約100万件のニュース記事を閲覧できるようになります」とAmador氏は付け加えます。

推測はやめ、予測を開始する

EquBot社のAIプラットフォームが、人間が気づいていないトレンドを捉えていることは、かなり明らかなように思われます。Robertson氏は次のように語ります。「パンデミックにより市場が後退し始めた2020年3月以前でさえ、AiPEXポートフォリオは、一般テーマとして既に製薬とバイオテクノロジーに配分していました。そして、ワクチンを開発した企業の1つに特に焦点を当てました。」

彼女はさらに続けます。「その企業のFDA臨床試験文書を分析し、そこからインサイトを得ることができたのです。その詳細はまだ米国のニュースにもなっていませんでした。そして、この企業が市場で主導権を握っていることに気づきました。」

同様に、このソリューションは、2022年の第2四半期に起こったエネルギー不足とそれに伴う市場の混乱を予測していたように思われます。「AiPEXが2021年12月にエネルギー株を大幅なオーバーウエートにしたのは、ロシアに対する制裁が発動されるかなり前に不安定な状態が訪れるという警告を情報モデルで確認していたからです。そのため、原油価格が40%上昇した際、S&P 500など、マーケット・ウエートキャップが課された従来の指数におけるエネルギー・セクターの指数が比較的小さかったにもかかわらず、エネルギーの比重が高かったAiPEXは利益を得たのです。」

自信の持てる投資

AiPEXはたちまち成功を収め、最初の数カ月で製品の売上が2億5,000万米ドルを超え、それ以来、総売上高は20億米ドルを超えています。そして、AIが選択したインデックスは従来の時価総額加重型指数を常に上回っており、過去10年間で年率5%の収益を上げています。

Robertson氏は、「信頼は非常に重要であり、IBMブランドは大きな信頼を得ています。そのため、IBMと協働することで信頼感が得られ、市場での成功を促進することができるようになります。また、IBMとEquBot社との間で透明性の高い意思疎通が行われていることにより、私たちはAIをわかりやすく説明し、複雑なものをシンプルにすることができるのです。私たちは、各銘柄が選ばれる理由を、投資家が理解して納得できる形で、明確に示すことができます。なぜなら、投資に関しては、投資プロセスに納得していただくことが重要だからです」と語ります。

そして、プロジェクトを通じてEquBot社が果たす役割について、Robertson氏は次のように付け加えます。「AiPEXに供給するアルゴリズムをこれほど効率的に設計し、そのストーリーを人々が期待するような形で提示できたのは、EquBot社以外には考えられません。彼らの専門知識に、彼らのストーリーテリングとAiPEXを成功させるための取り組みを組み合わせたことが、私たちが正しい選択をしたと確信する理由です。」

成長の可能性

Amador氏は、「機械学習の投資戦略への適用は、まだきわめて初期段階にあると言えます。世界中で100兆米ドルの資産が管理されており、おそらくAIを活用した機械学習タイプの投資は1兆米ドルにも満たないでしょう。しかし、ある時点で、ほとんどの投資戦略は、直接間接を問わず、AIと機械学習によって管理されるようになるだろうと私たちは確信しています」と指摘します。

市場が解き放たれる可能性をさらに探りながら、Robertson氏は次のように付け加えます。「次に何が登場するか、本当に期待しています。Watsonが選択している銘柄に関しては、サイバーセキュリティーや未来の輸送手段といった、多くのテーマがあることを私たちは目の当たりにしてきました。大いに話題となっているテーマがあります。私たちは、これらのテーマを取り上げ、AIを使用してこれらのテーマと一致する可能性のあるポートフォリオ(株式バスケット)をまとめる方法を検討し始めています。」

Robertson氏は、「EquBot社とIBMが共同で取り組んでいることについて話すことはできますが、実際にこれをお客様に理解していただき、AIに期待を持っていただくのは、私たちがお客様のためのAIを実現できたときです。そこで、私たちはIBMエクスペリエンス・センターにて、お客様向けイベントを主催しています。これまでにニューヨークとサンフランシスコで1回ずつ開催しました。これらのセンターでは、IBMとWatsonがお客様の業界やその他の業界で行っていることをご覧いただけます。お客様は、AIがいかにパワフルであるかを余すことなく理解することができます」と説明します。

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HSBC USA社について

HSBC USA社(ibm.com外部へのリンク)は、HSBC Bank USA, N.A.など、さまざまな子会社を有するメリーランド州の持株会社です。これらの子会社を通じて、HUSI社は個人、富裕層のお客様、中小企業、大企業、公共機関、官公庁・自治体などに、従来の銀行商品やサービスを幅広く提供しています。HUSI社はHSBC North America Holdings社の完全子会社です。

EquBot社のロゴ
EquBot社について

カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くIBMビジネス・パートナーEquBot社(ibm.com外部へのリンク)は、AIと機械学習を活用したグローバルな金融テクノロジー・ソリューションを開発、販売しています。現在、同社のAI投資プラットフォームは、Platform as a Service(PaaS)モデルで提供されており、世界中で20億米ドルを超える投資を行っています。

次のステップ

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2022年10月米国で作成。

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