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GIAとIBMが提携し、ダイヤモンド業界に革命を起こす

米国宝石学会(GIA)は、1930 年代に最初の高品質の宝石鑑定用ルーペを導入しました。片手で持てるほど小さいこのルーペは石を10倍に拡大し、宝石商や宝石鑑定士がカラーやクラリティーを検査するのに使用されます。ルーペは宝石学に革命をもたらし、今日でも広く使用されています。

GIAを突き動かすのは発見と革新の精神です。ですから、同社がダイヤモンドのグレーディング・プロセスを最適化する理想的な方法として人工知能(AI)のアイデアを取り入れたことは驚くことではありません。GIAの最高執行責任者であるPritesh Patel氏は次のように説明しています。「私たちは長年にわたり、この業界にさまざまな機器を導入してきました。そして、カット、カラット重量、カラーの問題はずいぶん前に解決していました。クラリティーは最後の最後であり、AIがそれを克服する鍵でした。」

優れたキャパシティー

 

年間400万個のダイヤモンドをGIAが分析

AIの広範な活用

 

AIベースのソリューションを使用して分析されると予想される石の割合は、全ダイヤモンドのうちの70%~80%

私たちは長年にわたり、この業界にさまざまな機器を導入してきました。そして、カット、カラット重量、カラーの問題はずいぶん前に解決していました。クラリティーは最後の最後であり、AI がそれを克服する鍵でした。 Pritesh Patel 最高執行責任者 ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ

それを念頭に置いて、Patel氏はあるビジョンを持ってIBM Research®にアプローチしました。適切なスキルとテクノロジーがあれば、クラウド上のAIの力を利用してダイヤモンドの透明度を格付けすることが可能だと考えたのです。

IBM Researchはこれに同意し、両組織は戦略的パートナーシップを構築し始めました。それは、GIAはダイヤモンドの専門家が検査した数千万個のダイヤモンドのデータとともに専門的な画像を提供し、IBMはAI機能とコンピューティング能力を提供するというものです。そのパートナーシップの結果として生まれたのが、GIAのクラウドベースのAIによるダイヤモンド・グレーティングへのアプローチです。

プロセスの再考

ダイヤモンドのクラリティーを評価するのは複雑なプロセスです。宝石鑑定士は、ルーペ、顕微鏡、画像などを使って、ダイヤモンドにインクルージョン(内包物)があるかどうかを丹念に調べます。インクルージョンとは、石の表面から内部に入り込んだ極小の斑点や亀裂のことです。

フローレス・ダイヤモンド、つまりインクルージョンがまったくないダイヤモンドは、非常に希少です。GIAによってグレーディングされた世界中のダイヤモンドのうち、このカテゴリーに入るのは全体の0.5パーセント未満です。大半のダイヤモンドには1つまたは複数のインクルージョンがあり、それらが組み合わさって、それぞれの石をユニークなものにしています。

IBM Researchは、AIがダイヤモンドのグレーディング・プロセスを自動化できることを示す概念実証(POC)を開発して成功を収めた後、IBM Global Cloud Acceleration Team(GCAT)が介入し、プロジェクトを次の段階へと導きました。GCATチームはGIAのEngineering DevOpsチームと連携し、POCから開発、テスト、本番、災害復旧の各クラスターを備えた本番環境へとソリューションを導きました。

現在、このソリューションはテスト段階に入り、本格的な運用に向けて進んでいます。GIAのラボは、各ダイヤモンドの特殊な画像をIBM Cloud®上のIBM Cloudant®データベースにアップロードします。システムのミドルウェア層は、 IBM Cloud Kubernetes Serviceクラスターで構成されています。Patel氏は、「IBM Kubernetes Servicesを使うことに決めたのは、非常に大量のデータを処理するための柔軟性とコンピューティング能力を提供してくれるからです」と述べています。

GIAのクラスターは3つのNVIDIA K80 GPUで構成され、それぞれのGPUはサーバーレス・アーキテクチャーに1つの共有仮想ノードと1つのベアメタル・ノードがあります。NVIDIA GPUは高解像度の画像を迅速に処理できるため、GIAのニーズに非常に適しており、プロセス全体をスピードアップすることができます。また、AIアルゴリズムの検証に要する時間も短縮できます。

新しいソリューションは、2つのカスタム・アルゴリズム・モデルを使用して各ダイヤモンドを分析します。オートプロットAIモデルがダイヤモンドのインクルージョンを視覚的に表現し、グレーディング・モデルがダイヤモンドの総合的なグレードを評価します。この情報はiPadのアプリケーションでGIAの宝石鑑定士に送られ、そこで自動プロットを評価し、必要であれば変更を加えることができます。そして、その変更をシステムにフィードバックしてグレードを再評価し、AIモデルを再学習させて精度を向上させることができます。

プロセスの保護

消費者を保護するというGIAの使命が、革新的なアイデアを生み出す原動力となっています。しかし、GIAはこのプロジェクトに別の目標を持っていました。それは、ダイヤモンド・グレーディングの完全性を保護するために、最高レベルのデータ・セキュリティーを実現することです。ダイヤモンドは高価な商品であり、グレーディング・プロセスを保護することは最重要課題でした。IBM Cloud App IDは、ダイヤモンド画像のアップロードと処理が、多要素認証、シングル・サインオン、ユーザー定義のパスワード・ポリシーなどの高度なセキュリティー機能で確実に行われるようにするのに役立ちます。

「当社の施設からクラウドへのデータ転送は非常に安全です」とPatel氏は言います。「クラウドで作業を行うアルゴリズムは、コカコーラの調合法と同様に保護される必要があります。私たちのアーキテクチャーに組み込まれているものはすべて、エンド・ツー・エンドのプロセス全体のセキュリティーと完全性を保証するように設計されています。」

画像はIBM Cloud Object Storageを使用して保存されます。これは、拡張性とアクセシビリティーに関するGIAの要件をすべて満たす、費用対効果の高いストレージ・ソリューションです。IBM Cloud Object Storageは、組み込みの暗号化と、ポリシー対応でロック可能なWORM(Write Once Read Many)ストレージも提供します。

この取り組みを通じて、 IBM Strategic Embedded Partnerships(ESA)チームは、両社間の相互に有益な戦略的パートナーシップの構築に尽力してきました。ESAチームは、ビジネスの観点から継続性とサポートを提供するだけではなく、このようなパートナーシップの基盤となる法的・事業的構造の確立にも貢献しました。

輝かしい未来

GIAは年間数百万個のダイヤモンドをグレーディングしています。Patel氏によると、この新しいソリューションでは、提出されたより小さいサイズのダイヤモンドに主に焦点を当て、これらの評価の70~80%を処理します。これにより、人間のグレーダーは、グレードの決定に人間の評価が欠かせないより複雑なケースに集中できるようになると期待しています。

しかし、そこまで到達するには時間がかかります。現在、GIAは11のラボのうち2つでこのソリューションを使用しており、チームがアルゴリズムを改良しながら、AIと人間による評価を並行して行っています。最終的には、GCATチームからの継続的なサポートのおかげで、GIAはすべてのラボで新しいソリューションを利用できるようにする予定です。

このソリューションはまだ初期段階にありますが、Patel氏は、近い将来にいくつかの大きなメリットがあると見ています。1つ目は効率性です。「各ダイヤモンドが通過する多くのステップを自動化することで、お客様の納期を大幅に短縮します。」

また、このソリューションは精度と再現性の両方を強化します。人間のダイヤモンド・グレーダーは、厳しい指導の訓練コースを受講しているとは言え、作業する体の感覚には限度というものがあります。2 人のグレーダーが同じダイヤモンドを見た場合、その評価がごくわずかな点で異なる可能性があります。AIを使えば、そのようなわずかな違いは事実上なくなり、ダイヤモンドが市場に流通するときに正確に評価されるようになります。

GIAは、新しいソリューションの完全性と正確性にその評判を賭けています。1930年代にダイヤモンドのグレーティング・プロセスに宝石鑑定用ルーペを導入して業界に変革をもたらしたのと同じように、このプロジェクトはプロセスにまったく新しいレベルの精度を導入することになります。

「IBMは、AIとクラウド・コンピューティングの専門知識を持っており、このプロジェクト全体をまとめることができます」とPatel氏は述べます。「だからこそGIAは、この特殊な分野でIBMと協力することを選んだのです。私たちはそれぞれの分野でリーダーであり、GIAにとって非常に重要な戦略的イニシアチブを最高の結果に導くためには、IBMとの協力が不可欠でした。」

詳細はこちら (ibm.com外部へのリンク) GIAのCMOであるMark Buntz氏が、IBMとの最先端のコラボレーションが消費者、グレーター、そして業界にどのような利益をもたらすかについて、GIAのCOOであるPritesh Patel氏にインタビューしています。

すべての画像とビデオ © GIA

Gemological Institute of America logo
米国宝石学会について

1931年に設立された米国宝石学会(ibm.com外部へのリンク)は、貴重な宝石と真珠の研究と評価を専門とする非営利の研究所です。世界トップクラスの分析と鑑定を提供するだけでなく、宝石学者を目指す人々を教育し、宝石学研究の世界的リーダーとみなされています。GIAはカリフォルニア州カールスバッドに本校を構えており、2,500人の宝石鑑定士を擁しています。

次のステップ

この記事で紹介されているIBMソリューションの詳細については、IBMの担当者またはIBM ビジネス・パートナーにお問い合わせください。

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2021年3月、米国で作成。

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記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。

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